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絵画によせて/詩

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絵画や美術品を観て生まれた即興詩。
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2023年6月の記事一覧

【絵画によせて/詩】No.9

【絵画によせて/詩】No.9

前にもゴッホが描いた頭蓋骨に言葉を添えた
真正面から凝視めるそれは未来の俺に思えた
道端に落ちているようなこの頭蓋骨は名も顔も知らぬ誰かに思える
なぜ感じかたは違うのだろうか
頭骸骨に眼球はないが 相対すると目で問いかけられているように錯覚する
名も顔も知らぬ誰かが 俺の知らぬどこかで朽ち果てても
知ることはできないので 何も感じようがない
眼前の絵を未来の自分に錯覚するなら 問いかけは無視できな

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【絵画によせて/詩】No.8

【絵画によせて/詩】No.8

踊れよ 踊れよ 
メロディとリズムに乗って
楽しさと喜びが体から溢れるように
くるくる回れよ 余計なものが振り落ちてゆく

舞えよ 舞えよ
空を目指せよ 白鳥の子らよ
地を蹴る一歩に勇気を見た
それを宿す君は飛べる

屋根を抜けて外に飛び出そう
どこにだって行けばいい
いつだって帰ってくればいい

【絵画によせて/詩】No.7

【絵画によせて/詩】No.7

俺がかつて見るはずだったもの
感じるはずだった手触りと臭い
味わうはずだったご馳走

過程と労力を素通りして それさえ知らずに気づかぬまま
整然と並べられた断片をスーパーで買って 口にするが
何も感慨はなく 別に普通じゃね?

苦労をせずに手に入れたものは
脳に引っ掛からずに落ちる

かつて見るはずだったものも
いま見ているものも
慣れてしまえば 別に普通じゃね?

【絵画によせて/詩】No.6

【絵画によせて/詩】No.6

むかしむかしの テレビもネットもない暮らし
今とは違うけど 今と同じような暮らしもあっただろう
花を描いて 花を詠んで 肴に呑んで
馬鹿騒ぎして 馬鹿になって笑って
仲睦まじくなったり 喧嘩したり

むかしむかしの人もきっと
人に疲れて一人歩いている道端で
花に微笑まれて 花に微笑んで
花も人も色取り取りだね

出典:NDLイメージバンク
非水百花譜 第18輯
杉浦非水 編 春陽堂 ( 昭和8 )