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ポール・ギャリコのはなし

ここのところ不思議とご縁が重なったのでその記録。あと小学生の頃の読書体験についての話も。

そもそもの出会い

小学校の高学年の頃だったと思う。

図書室の右奥にあったカラフルな背表紙に惹かれてハリスおばさんシリーズを読み始めた。

すごくイキイキとした描写でハリスおばさんの動きと言葉がテンポよくわたしの頭の中に浮かんだ。そのまま夢中になってシリーズを制覇した。

特に印象的だったのは『ハリスおばさん国会へ行く』。うろ覚えなので正確ではないのだけど「あなたもわたしも楽しくなくっちゃ!」といったニュアンスのフレーズがいまでも心に残っている。

宝塚で再会

昨年、宝塚で朝美絢主演『ほんものの魔法使』が上演された。

上演が決まったタイミングで復刊が発表され、原作を読んでみようと購入した。

このタイミングで公開された「Web東京創元社マガジン」さんの記事があまりに素敵だった。
応援してます!!の気持ちで本を買えるようになったのは社会人になってよかったことのひとつだなと思っている。

配信で視聴したのだけど、もし小学生、中学生だったら芸術鑑賞教室で観に行きたかった。勇気をもらえる、前向きになれる素敵な作品だった。

アダムの見た目は青年なのに、達観していてどことなく年齢不詳にも見えたのはリップの色がいつもよりベージュだったからかな?フィナーレが真っ赤なルージュだったのでギャップにやられた思い出。録画早く見よう。

(そしてしばらく積んでいた)『ほんものの魔法使』を読んで、あとがきで『ハリスおばさんパリへ行く』が触れられていて物凄く驚いた。

著者紹介にものってなかったので、あとがきまで全く気づかなかった。最近、ネタバレを踏むのが怖くて覚悟が決まるまではいろいろと情報を調べすぎないようにしていたのもあると思う。

十何年ぶりに「ハリスおばさん」のことを思い出した。小学校の図書室の右奥にある本棚の光景がフラッシュバックした。


矢川澄子さんが岩波少年文庫と繋がる

2021年の年末、京都の恵文社に行ったときに、『岩波少年文庫のあゆみー1950-2020ー』という本に目が止まった。小学校高学年の頃、岩波少年文庫には本当にお世話になっていたので、これは読まなきゃ!と思いレジに向かった。


岩波少年文庫は小学校の図書室の貸出カウンターの右隣の少し背の高い本棚に置いてあった。

一時期なぜか怖い話ばかり読んでいて、その流れで(伝承繋がりだったのかも)各国の昔話・神話だったりを読むようになった。その結果、近くに置いてあったタイムマシンとかジキルとハイドとかプーさんの原作(頭から階段降りるやつ)、モンテ・クリスト伯とかいわゆる名作と呼ばれる作品に浸っていた。

冒険者たちを読んだのもたぶんこの時期。ちょうど読売新聞で川の光というねずみたちが冒険する小説を連載していて毎日すごく楽しみに読んでいたので、そのタイミングで出会えたのは不思議な巡り合わせだなと思う。

その他小学校高学年の頃読んでいた本を思い返すと、ハリー・ポッターとかナルニア国物語とかはてしない物語といったファンタジー系の海外児童文学か、青い鳥文庫のパスワードシリーズか、星新一のショートショートあたりだったと思う。かなりいまの自分の好みの源流になっていて面白い。あと、いま見ている映画だったり読んでいる小説のなかで、引用されたりすると(ああ、元ネタあれか!)と分かったりして教養?というか下地?になっている。

小学生の頃は、「この本棚にある本面白い」、そんな単純な理由で岩波少年文庫の本を手に取っていた。

大人になって『岩波少年文庫のあゆみー1950-2020ー』を読んで、たくさんの大人がいろいろな思いで、たくさん準備してくれたんだという歴史を知ると、そりゃ面白い本しかないことに納得した。本当にありがとうございます。

巻末についている目録が圧巻で、「読んだことがない!面白そう!」と思ったり、「昔読んだけどいま読むとどう感じるのだろう?」と気になる本が沢山あって眺めているだけでも楽しい。

で、その目録に何度も登場する翻訳者の方のお名前に既視感を覚えた。最近どこかで訳書を読んだはず、と思ったら矢川澄子さんだった。またご縁を感じた。

Camelとポール・ギャリコ

職場に音楽好きの方がいて、よくいろいろと雑談をしていた。必ず「押し付けたくないから!!感想言わなくていいから!!」と言いつついろいろとおすすめの映画だったり、音楽だったりを教えてくれた。(もう異動してしまったので寂しい)

1番好きなバンドはCamelと聞いて、「何から聴いてみたらいいですか?」と質問したら、「自分はスノーグースで衝撃を受けて好きになった」と教えてくれた。その時点でわたしはまだピンときていなかった。でも、続いて「ポール・ギャリコって知ってる?」と聞かれてびっくりした。わたしが宝塚が好きなことを知っている方だったので、「今年、別の作品ですけど舞台化されたんですよ!」と答えると相手も驚いていた。

ここでも不思議なご縁が嬉しくて、その日の帰り道に大きな本屋さんに寄ってスノーグースを買って、読みながら帰った。電車で泣いた。一緒に収録されている『小さな奇蹟』も『ルミドーラ』もどちらも素敵だった。動物への眼差しが優しい3篇。そして翻訳は矢川澄子さんだった。

帰ってきてからCamelスノーグースのアルバムを流しながら読んでまた染みた。

映画は映像のなかにビジュアルとストーリーと音楽が入っていて、どのタイミングでどのように魅せるかは作り手に委ねられていてそれをどのように受け取るかだと思っている。でも、このスノーグースは受け手が自分のペースで小説を読みながらそれを題材にした音楽を聴くという行為だった。余白が多い体験でとても新鮮だった。

サブスクで聴くのもお手軽で良かったのだけど、レコードで聴いてみたい。ずっと憧れているレコードプレーヤーを買ったときには絶対に購入したいレコードになった。

いまでも少し凹んでいるとき、でも歌詞がある曲ではないな…という気持ちのときに、スノーグースを再生すると、心がすこしあったかくなる。


ハリスおばさん映画化

Twitterのタイムラインに映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』のニュースが流れてきた。最近ポール・ギャリコとご縁があるな〜と思っていたタイミングでハリスおばさん映画化する展開に本当にびっくりした。

フラットに映画を観たいので、原作は読み返さずに観に行く。そして観終えたあとに読み返そうと思う。いまから11月が待ち遠しい。



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