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うんちょを流すのに必要な水量は?

水が出なくなった。
ワシが勤めてる介護施設での話だ。朝5時から11時までの間だけれど、断水は朝のゴールデンタイムを直撃した。それはおばあちゃんの「便が流れないの」ひと言からはじまる。

うそん!と思いトイレに同行した。便器には便がプカプカ漂う。思いきり「大」の方へレバーを倒すけれど、反応がない。うんちょが悠々と漂うだけだった。
へ?僕は少し慌ててトイレの水道の蛇口をひねるがまたもや反応がない。
これね、水の出ない蛇口をひねってみたら分かるが、本当に手応えがないのだ。僕は少しパニックになりそうだった。1Fから3Fの蛇口をすべてひねってみた。全部同様無反応だった。テンションの高い母親の下ネタに対して反抗期の少年が取る態度とまったく同じ。ただ無視されているのだ。

とりあえず、横浜市の水道局に電話する。24時間体制の窓口は、そっけなく「そちらのビルの問題では?」って感じだった。すぐに管理者に連絡を取り業者さんを呼んでもらった。

業者さんを待つ間、認知症のおばあちゃんたちは一緒に待ってはくれない。なので、朝食を用意して、朝食を終えたらトイレへ。とハードな時間を過ごす。そのあいだ僕は何度も手を洗おうと蛇口をひねる。頭ではわかっている。でも、習慣なのだ。右足を前に踏み出したら次は左足を前に出すのだ。そんな当たり前を何度も繰り返し、当たり前ではない状況に悲しくなる。
おばあちゃん達をトイレに連れて行ったところで、賞味期限切れの水のペットボトルが届く。やっと便が流せる。便器のタンクを開けて水を流し込む。2リットルのペットボトル1本で試す。大の方にレバーを押す……水は勢いなくサラッと流れるだけだった。そう簡単に、山は動かないのだ。それから結局、2リットルのペットボトルを3本で、やっとキレイに流れた!ここ大事なので声をまさに大にして言おう!

うんちょは、6リットルの水でやっと流れる!
(水の量はうんちょの頑固さにもよる)

世界でもトップクラスの先進国日本は、水のトラブルぐらいなら数時間で復旧させる通信網と技術力がある。さっきまでのことがウソのように、すぐに普段に戻る。

でもね、当たり前であればあるほど、それがなかった時、人は不安におちいり、そしてそれが大切なんだとはじめて気がつく。3年も付き合った恋人なら「今ごろ気づいても遅いよ。さよなら」笑顔もなく言って二度と戻ってこないだろう。泣いたって戻ってこない。だから、もう当たり前を当たり前と思うのはやめた方がいい。当たり前が当たり前ではなくなる時を想定してココロの準備をしておくべきだ。とりあえず泣かなくて済むようにだけはしておいた方が良いだろう。

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