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あと

1月の末に、舞台を見に行った。緊急事態宣言のあいだに、何をしているのかと、お叱りを受けるかも知れない。しかし、開催側も細心の注意を払って、政府の指針に基づき、開催を決定した。そして、私も家内も、いろいろなことを考えたが、そもそも会場内で会話をしたりする機会がほぼ全くないことも考慮に入れて、私と家内と、長女、次女の4人で、行くことにした。

言い出したのは、家内である。家内は、劇団四季が好きだ。

去年から、ミュージカルの開催自体が自粛され、私たちも、私たちなりに考えて、敢えて、街中まで見に行こうとはしなかった。

それが、朝の情報番組を見て、劇団四季の新劇場で開催されるこの講演を、家内が見に行きたくなったのである。

去年、家内の同僚のY子ちゃんのご主人様のコンサートを観賞し、感動したことを記事にした。あの時、本当に感動したのだ。随分久し振りであったことも手伝い、心が揺さぶられた。

そのコンサートは、毎年一度、年始に行われるはずだった。それが、半年以上も延期して行われたのだ。そして、次回は、1月20日のはずだった。だが、それが、また、夏に延期になった。

家内の話だと、Y子ちゃんは、まだ、延期で場所が押さえられてラッキーだったと言ったという。

そんな中での、この、講演観賞だった。


この、ザ・ブリッジ。観賞できて、本当に、良かった。

劇団四季をしても、4ヶ月半も、全くお客様を呼べなかったと語られた。そして、この、ザ・ブリッジは、未来への希望の架け橋なのだ、と。

最後の曲が終わり、一度幕が下り、再び幕が上がって、本当に、最後の挨拶になったとき、すべての観客が立ち上がり、手を上げて拍手喝采になった。

自然に、頬に暖かいものが流れた。

芸術とは、人に夢を与え、支えるものだと、心から思った。


長女と家内は、感動のあまり、帰宅してから、次は、いつ、何を見に行くかと思案していた。次女は、練習再開がいつかと案じつつ、練習が始まれば、残念だが自分は行けないと少し落胆してはいたが、やはり、話に加わっていた。

ふと、長女が、長男は、まさか、劇団四季は観ないだろうと言いながら、LINEを入れて、事情を聞いてみた。

すると、ほどなく長男からLINEにコメントが入った。

リトル・マーメイド、観たいと思って講演スケジュールと予約状況を調べたが、合わずに断念した。

家内も長女も次女も、相当ビックリしたらしい。

すぐに、意外だと。そして、どうして、劇団四季を観ようと思ったのかを問いただしたところ、長男から返事が、また、ほどなく来た。

ちょっと前に、ライオンキングを観た。あの時の感動が忘れられなくて。また、観たくなった。

その返事を見て、私も含めて、我が家がわいた。

芸術は、やはり、人の心を動かすのだ、と。


観衆が立ち上がり、拍手喝采がひとしきり終わったあと、すぐに、御手洗に行き、ちょっと時間稼ぎをしてロビーに出た。

すぐに、長女と次女が、出て来て合流した。

あれ、コジくん、泣いた?あとが、残ってるよ。

心の中の、リトルkojuroが、私のかわりに、でも、彼女たちには聞こえない声で、ちょっと照れながら、言った。

いや。それは、気のせいだよ。


人の心を癒やし、鼓舞し、支え、揺さぶるのは、なにも、スポーツだけではない。芸術こそ、生きる糧となるのであろう。

目の前で息づくライブの芸術。何の制約もなく自由に観賞できる日を、心から、待ち望みたいと思う。

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