通過

以前、車の走行距離の、ゾロ目を楽しみにしているという記事を書いた。

2桁、3桁は見過ごしてしまった。4桁から家内と、出来れば記念に一緒に見ていこうと言うことで始めたのだ。

ところがなんと、1111㎞を見過ごしてしまい、ようやく2222㎞を確認できて、それを記事にした。次は、3333㎞だった。これは、家内と2人で意識していたのだ。夕飯の一番最初の話題を、意識的に、今日のODNの話題とするくらい、毎日共有していた。

そのゾロ目は、1111㎞ごとに訪れる。家内は、毎日通勤に車を使う。そしてその距離は往復で約40㎞である。土日にどこかへ所要で出かけることも視野に入れ、なるべく土曜日、日曜日など2人の共通の休みの日に、そのゾロ目が来るようにと予め計算して予測をし、また2人で構えるという手法をとっていたのだ。

先週の木曜日の夜、急に長男から、出張でこちらに来るという連絡があった。夜になってから空港に迎えに行く所要が出来た。ここから少しずつ計算が狂ってくる。だが、調整は、土日に出来そうだ。あと2222㎞まで700㎞ある。と、高をくくっていた。

すると長女が、日曜日に休みが入ったので土曜日に迎えに来てほしいと連絡が入り、急遽、長男と長女の意向で、日曜日に県をまたぐ遠出の予定が組まれる。そして、思い起こせば日曜日の夜、13年ぶりにJ1のリーグ戦を見に行く予定もあった。

そこらあたりから、恐らく日曜日の夜あたりにゾロ目が来るとは予測しつつ、正確に計算することが困難になってきた。

そして、土曜日の夜に、日曜日の朝、計算して、いつ頃になるかを予測しようと家内と、長男、長女までを巻き込んで話し合った。そして、スタジアムからの帰りだと、全員で断定した。

日曜日の朝、長女と長男は、予測通り寝坊をした。特に、長女は深夜業の翌日だったので、無理からぬことではあった。バタバタしている間に、朝、ゾロ目到来のタイミングを改めて計算することを忘れてしまっていた。

本当は、もう、その時点で、私の負けは、決まっていたのだ。

日曜日は、かなりの遠出となった。県をまたぎ、高速で目的地に周り、慣れない長女が運転を買って出て反対方向のインターチェンジまで遠回りしたりして1日ドライブを楽しんだ。そして、リーグ戦。格上のチームとの対戦だったので敗戦濃厚だったが、なんと、逆転勝利を収めた。

興奮冷めやらぬ状態で、車の中で呑気に語り、笑い、深夜、帰宅して、荷物をまとめて車から降り、鍵を閉めた瞬間だった。家内が叫んだ。

あっ!忘れてたよ!

最初、何のことか、分からなかったが、家内と目を合わせて悟った。

えっ?ゾロ目?

私の目の奧に、家内への理不尽な批判の気持ちが無かったとは言わない。それは、認める。でも、決して口には出さず、目と目を合わせて数秒、見つめ合った。

すると、家内が口を開いた。

はいっ!タセキング-!

家内は、長男と長女に、私の今までの人生での他責癖を目いっぱい並べ立て始めた。覚えているだけ、いくつも。でも、みんな、古いものばかり。最近のものは、トイレの電気を消しておらず、認めなかったというものしか無い。

それに、私は、決して口を開いて公然と家内に、ゾロ目を見られなかった責任を押しつけたわけではない。未然に口をつぐんだじゃあないか。

それでも家内と長男、長女は、私の心の奥底をのぞき込み、笑いながら合唱した。

はいっ!タ・セ・キ・ン・グ-!

それは、幸せすぎる静かな日曜日の夜の出来事だった。

※タセキングとは、我が家独自の造語である。何でも他責にして責任回避する人のことを指す。

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