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誰にとっての便利デザインか考える

こんにちは、ゆいです。みなさま花粉は大丈夫でしょうか。水分不足になりやすいので水分とりつつ、鼻に優しいティシューを使って乗り切りましょうね。

今回は「こうした方が便利だろう」というアイディアについて普段私が考えていることを書きます。以前の記事、独学でUIデザインはじめた方へ。デザインガイドラインについて語ろう!で書いた、

鑑賞者・使用者の立場ではなく、作る側の立場では技術と知識が必要になります。これは、ユーザーを限定できない以上、受け取り手の知識の差をコントロールできないため、様々なリテラシーの人に対応する必要があるからです。

こちらの具体的な話です。UIデザインを行う様々なタイミングで、そのとき思いついた「便利そう」を優先した結果、起こりうる事象を挙げてみました。


よくある事象①表現に使う「色」を考える

まずは色の話です。
表層デザインを考えるときに、色だけで状態変化を表現していませんか?色が違っていれば内容が違うことはわかりやすい、はもしかしたらそうではないかもしれません。

具体例
緑色がスイッチON状態、赤色がスイッチOFF状態、と色で直感的にわかるデザインにした

考えられる懸念
色覚多様性の方には緑と赤が見分けにくい方もいます。最悪の場合、事故に繋がります。

色覚多様性ってなに?という方は、以下の記事が参考になります。

この具体例の場合、色以外で判別できる方法があればそれを適用できます。例えば、色面と線で区別したり、ONとOFFを別に配置したりする表現です。トグルスイッチを使ってもよいですね。

また使用する色のコントラスト比を細かくチェックすることも大事です。Figma / Sketchではプラグインがたくさん出ています。読んでほしい・判断してほしいパーツはこまめにチェックしましょう。

よくある議論で「コントラスト比率は確保できてないけど、見た目はこっちの方が良いと思うんですが…」というものがあります。私も新卒時代はそう思っていました。
状態を示すためにデザインしている中、判断できない人がいる事実があっても「良い見た目」なのか? 自分たちのサービスが、使う人を選ぶことをわざわざ明確に示すのか? を軸に考えると判断しやすい気がします。
より詳しく知りたい方はアクセシビリティで調べてみてください。

よくある事象②適切な選択肢を考える

続いては、選択肢を見てみましょう。
どれか1つを選んでほしい単一選択(複数選択肢のうち1つだけ選択できる)の場合と複数選択(複数選択肢のうち複数選択できる)の場合があります。
今回は単一選択の具体例です。

具体例
ユーザーの性別を知りたくて「男」「女」の選択肢を作った。

考えられる懸念①
何を判断するために性別を訪ねているのかわからず、選択を躊躇する。

そもそもサービス側は何のために性別を取得する必要があるか、を立ち返って確認してみる必要があるなと思いました。UIはときに政治思想を内包してしまう難しさがありますよね。
個人的な考えとしては、現在の日本では身体性別によって所得や社会的地位が大きく異なっていることを踏まえ性別を知りたい場合は国勢調査のように2択で良いかと思います。今どき男女で区切るのはどうなの?というご意見も聞こえてきそうですが、生物学的な性を聞く性別とは別の言葉で「ジェンダー」という単語もあります。ユーザーに確認したい点はどちらなのか、明確にしておく必要がありそうです。
残念ながらまだまだ社会的な男女格差が解決されていないため、国税調査など統計で必要な時は、性別を確認することが必要だと考えています。

一方では、ユーザーに「マイノリティに対する理解の意思がないサービスだ」と判断されたり、身体的性と性自認が一致しないユーザーにとっては「このサービスは自分向けじゃない」と疎外感を与える可能性もあります。
このあたりはサービスの内容によるので、日頃このような考えを話す機会あまりないかもしれませんが、チームの方と話すためにも自分がどう考えているのか、自分にとっては誰がマイノリティなのか、整理する必要があるかもしれませんね。

よくある事象③便利な初期値を考える

登録フォームなどのユーザー入力項目で、平均身長、平均年収、年齢…をユーザーに尋ねる設問はよく見ます。なるべく負担をかけずにサクッと選んでほしいですよね。ユーザーの「便利そう」のために、具体例のような工夫をしてみようかな、と思い立ちました。

具体例
ドロップダウンから1cm単位で身長を選択してほしいが、選択肢が長いためターゲットユーザーの中央値を初期値にしてみた。中央値なのでユーザーは身長を素早く選択できるはずだ。

考えられる懸念
身長にコンプレックスのある方、小人症の方、などの感情に対する考慮は漏れそうです。それらは数値的なインパクトは少ないかもしれませんが、不快感を与えるサービスとして記憶に残る可能性があります。

こちらは感情に寄り添った例なので、特殊な例だと感じるかもしれません。しかしユーザーの身長を確認するときにわざわざ誰かを不快にさせる必要はないと私は考えています。そのためこの場合は、刻み(1cm/10cm/50cmなどの単位)を再度検討することでタップ数を減らしたり、XXcm以上・以下など上下にゆらぎを入れたりする方法もあります。細かい数値を取得したい場合は入力にしてもよいかもしれません。無理してドロップダウンにする必要はありませんね。

このように少しの工夫で不快感を感じない可能性があるなら検討したいなと考えています。

余談ですが以前何気なしに登録したWeb サイト作成ツールでは、氏名のプレースホルダーが大人気美人タレントになっていました。当時私は20代前半で容姿コンプレックスが強かったため、卑屈な気分になったことを覚えています。おそらく楽しい内輪のノリで設定されたと思うのですが、こんな風に記憶に残る必要は全くないかと思います。誰かが楽しく決めた遊びも、開発段階の誰かが気づき、どこかで議論があっても良い気がしました。

おまけ:設問そのものを考える

そもそも論になってしまうのでおまけとして書きます。

設計開始時に、このサービスはユーザーから本当にその情報を取得しなければならないのかを十分に考えることが必要だと思います。多くの設問は大抵の場合、ユーザーをがっかりさせ、疲れさせます。この現象は、決断疲れと言います。

決断疲れ(判断疲れ、決定疲れ)とは、意思決定を長時間繰り返した後に個人の決定の質が低下する現象を指す。 現在では不合理な意思決定の原因の1つとして理解されている。 職務中の裁判官を例に取ると、午後には日中早いうちに比べて好意的な判決が少なくなることが明らかになっている。
引用:https:// ja.wikipedia.org/wiki/決断疲れ

ユーザーに決定を多く求めると、大抵の場合負担をかけすぎることになります。ついついユーザーから多くの情報を取得したくなりますが、相手が納得しやすい理由のある最低限の情報を取得するのがよさそうです。

今後様々な改善が加えられることで、サービスが「できること」を提供でき、ユーザーも負担を感じないような、本質的にお互いにとって円満なサービスになって欲しいなと思いながら、自分の担当の表層段階でできることを積み重ねていきたいです。

最後に

私はできるだけ多くの人に自分が関わっているサービスを使ってほしいと思いデザインを考えています。おそらく多くの開発関係者がそうなのではないでしょうか。

自分と同じ属性の人しか使わない・自分しか使わないなら、自分を基準にしてよいかもしれません。でも、実際のサービスはそうではないですよね。
想像力や自分の価値観だけを基準にしてしまうと、多くの場合意図せず無意識にそして簡単に人を傷つけたり、一部のユーザーを排除する可能性があります。
私は自分を基準にしがちなので、自戒を込めてこの文章を書いています。

もちろんすべての文化・価値観・存在に配慮することは難しいです。
iOSは言語圏によって右遷移と左遷移と変わるように、適宜切り分けることができたりと解決方法は様々です。銀の弾丸のようにこれ1つで解決、ということでないなと思っています。これらの問題は、デザイナーだけで解決することではなく、とくに「デザイン」が指す言葉が表層のみの環境ではデザイナーがサービス設計の話に踏み込むことに違和感を感じる方も多いため、その場合はデザイナーだけで解決は不可能です。
さらに上記のような議論を面倒くさいと感じる人もいます。私自信も正直自分の懸念を面倒くさいと思っていますが、「ユーザーにとっての問題」を撲滅できるのはUIデザイナーの醍醐味だと思いますので、提案方法を反省しながらこの考えは捨てないようにしています。

拙い文章を読んで頂きありがとうございます。では、今後も「誰」を大事に、良きプロダクトを作っていきましょう〜〜

ではまた〜〜!

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