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労働供給制約社会における人材戦略

人材確保が最も重要な経営課題、となる時代がもう来ています。

今までは、どうお客さんを獲得するか(広告)とか、いかに良い製品やサービスを作るか、ということが重要でした。そのような時代から、労働力の確保がボトルネックとなる時代(労働供給制約社会)に移り変わってきました。

つまり、製品もあってお客さんもいるのに、作れないので売上が上げられない、という状況です。その傾向は、今後も一層強まっていくだろうと思います。

人気のお寿司屋さんで思ったこと

地元で人気のお寿司屋さんでの話です。
平日のランチでも、予約が無いと入れないときがあります。

先日もそのお店に予約をしようとしたのですが、HPはありますが、予約受付は電話のみ。そして、ランチも予約でいっぱいなので、事前に注文を決めてほしい、とのこと。
結局、予約と事前注文、あわせて2回電話することになりました。なお、2度目の電話に応対したのは、声の感じから、おそらく板前さんだったとおもいます。
店には「人材確保が難しく、予約などが受けられない場合があります」といった趣旨の貼り紙がありました。

このときに、以下のようなことを感じました。
・どのくらいの給与(時給)なのだろうか。これだけ人気があるのだから、仮に求人に苦労しているのであれば、多少高い給与(時給)を出してもいいのではないか。(それでも集まらないのか?)
・電話で予約や受付をしていることや、板前さんが電話に出るような体制をもう少し効率的にできないものか。

労働供給制約は地方ほど深刻

この傾向は、地方ほど深刻です。東京や大都市圏であれば、進学などで若い世代(労働年齢人口)が流入するのでまだ余裕はあるのですが、鶴岡くらいの規模の地方自治体では、人手が足りない、求人を出しても人がこない、という声ばかりです。
このような状況において、かなり強く危機感をもつ必要があると思っています。特に経営者にとっては、もっとも貴重な資源が、金でもモノでも技術でもなく、「労働力」だということを、強く認識しなければなりません。

ヒトという資源を確保できないということになれば、おのずと経営における重要課題や対処方針も変わってきます。
労働供給制約社会において、どう対応していくべきなのか、考えてみたいと思います。

労働者が超有利な市場

労働供給制約社会とは、まず大前提として、労働者側がとても有利な状況です。労働市場では「買い手市場」「売り手市場」という言葉が使われますが、言ってみれば「超・売り手市場」がずっと続く、ということです。
とすれば、当然ながら、労働者はたくさんの選択肢の中から自分にとって最も魅力的な条件を提示した企業で働く、という行動になります。

さらに、転職も容易です。どの会社も人手不足なのだから、いま働いている企業に不満があればすぐ転職すればよいわけです。
つまり、企業としては、「入社してもらう」だけでなく「働き続けてもらう」ことに対する努力が、今までよりも格段に必要になってくると思います。

従来の企業は、採用には力を入れてきたのかなと思います。これは年功序列、終身雇用、というシステムが成立していたことを考えれば自然です。
一方で、働き続けてもらうこと、例えば、従業員の給与を上げる、教育やスキルアップの機会を与える、職場環境を整える、など、そういった部分は比較的軽視されてきているのではないかと考えています。

ですが、そういった会社は早々に見切りをつけられ、せっかくコストをかけて採用した人材がどんどん流出していきます。そして、優秀な人材ほど早く見切りをつけて転職していくことになります。

このような状況の中で、企業はどう対応する必要があるのでしょうか。

人材にとっての「魅力的」の条件は何か

このように、企業は採用して一安心、などではなく、常に労働市場において競合他社と人材の奪い合いをし続けていかなければならない、ということになってきています。
では、人材にとっての魅力的な条件とは何なのか。何を提供すれば従業員は長く活躍してくれるのか。
私は、大きくは2点の要素があると思っています。

まず1点は、ブラックではないこと
ホワイトである必要はありません。(上記の日経新聞の記事のように、ホワイト企業でも人材が流出しています)
ただし、給与が異常に安いとか、残業代が出ないとか、パワハラ・セクハラとか、20~30代の若手が居なくて中高年だけになっているとか、、、まあ上げればきりはないですが、ここは昭和ですか?というような組織は問題があります。採用活動以前に、社内改革が必要です。

効率化や生産性向上に関心がない、デジタル化が進まない、などもこの要因になりえます。
利益を出して給与や賞与として従業員に還元しよう、残業時間を減らしてワークライフバランスを高めよう、といった考え方があれば、自ずと、無駄な作業はないか、もっと効率的にできることはないか、という視点が生まれるはずです。
今までの業務のやり方を変えないというのは、厳しく言えば、経営者の怠慢です。自分が新しいことを覚えたくない、変化したくないといった理由で、非生産的な業務を従業員に押し付けているということであり、さらに言えば従業員の労働環境や待遇(給与)について無頓着である、ということです。
デジタルへの対応は、いまや「できればやる」のではなく、「できなければならない」という性質のものだと思います。

もう1点は、長期的な安定要因を提供してくれそうなこと。
安定要因は、以前は「年功序列・終身雇用」によって成立してきました。しかしこれは、若い世代よりも中高年世代が少ない、せめて同程度で推移するから成立しうる仕組みで合って、労働供給制約社会においては維持できません。
そのようななかで、個々の人材が何を安定要因だと捉えるか。これからの時代、「個人の価値」になってくると思っています。
つまり、個人の価値を高める、高め続けることができる組織であれば、魅力的に映るのではないか、ということです。
個人の価値とはいろんな論点があると思いますが、いわゆるビジネスパーソンであれば、高付加価値のアウトプットを創出できるスキルやノウハウ、になってくるかと思います。
(ちなみに、芸能人であればブランディング、インフルエンサーであればフォロワー数、など、KSFは変わってくるでしょう)

このようなスキル・ノウハウを保有していれば、独立することもできるし、組織に所属して高い給与を得ることもできるでしょう。その価値は個々人に紐づいているので、転職しても市場価値は失われません。
逆の例を挙げると、従来型の日本的・官僚的組織で、特段のスキル・ノウハウを保有することなくゼネラリスト型のキャリアを歩んだ場合、その組織から出てしまうと給与は大幅に下がってしまうことが予想されます。
つまり、キャリアにならない(=スキルやノウハウが蓄積できない)仕事に時間を投入する、というリスクが高まっているということです。

JOEN経営会計事務所の求人情報

最近、こっそりと求人情報をHPに掲載しました。

詳しくはこのページを読んでいただければと思いますが、以上のような考え方に基づいて作っています。

また、以下は採用セミナーへの参加にあたって配信したstand.fmです。
あわせてお聞きいただけると、採用の考え方についてよく理解していただけるかと思います。

「仕事ができる人から転職していったり、独立したりする」ということをよく聞きます。そのような人は、「今の組織にいてももう得るものがない。それなら辞めたほうが得だ」という考え方になっているのではないかなと。

逆に言えば、独立できるだけの能力を持った方であっても、新しい学び・経験・ノウハウを提供できたり、チームを組むことによってより良いパフォーマンスを出すことができる組織には、コミットし続けてくれる(働き続けてくれる)可能性が高まるということです。

今の社会制度は「雇用する側が強くて、労働者は弱い存在だ」という前提があるかと思います。解雇規制、残業規制や割増賃金、有給休暇、、、など、従業員を「守る」ための仕組みが整っています。
そういった中で、ともすると経営者の中には、「雇ってやっている」「働かせてやっている」といった意識をもつ人もいたのではないでしょうか。

これからの会社と労働者の力関係は、完全にフラットもしくは、会社よりも労働者の方が力を持つ、という状況になっていきます。
その中で会社がやるべきこととしては、まずは働いてくれる人が何を望んでいるのかを理解し、それを提供し続けていく仕組みを社内で整えることである、と、考えています。

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