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【体験談】選挙の開票立会人【有効票と無効票の実例解説】

第26回参議院議員通常選挙の開票日である2022年7月10日に、開票立会人の仕事をしてきました。

その経験を踏まえて、開票当日における開票立会人の仕事と、有効票と無効票の具体例、感じたことなどを紹介していきます。

なお、私が体験した自治体の開票区での話なので、自治体や開票区によっては異なる部分があるかもしれません。

その点はご了承ください。

1. 開票立会人の仕事


開票立会人の主な仕事は、有効票と無効票が正しく仕訳して集計されていることを確認し、有効票や無効票の判断に対する疑義を申し立てることです。

あくまで確認をして疑義を申し立てるまでが仕事で、疑義に対して何らかの決定を下すのは選挙管理委員会の仕事です。

どうしても意見が分かれる場合には、開票管理者が最後の意思決定をする仕組みになっています。

選挙は選挙区の候補者への投票と、比例代表への投票がありますが、私が立会をしたのは後者の比例代表でした。

開票開始までの流れは以下のとおりです。

  • 20:30集合:関係者挨拶

  • 20:45頃:施錠確認(各投票所から集められた投票箱に正しく施錠されているかを確認する)

  • 21:05:開票開始宣言により開票開始

開票を開始したら、すべての投票箱を開錠して机の上に投票用紙を集めます。

立会人はすべての投票箱が空になっていることを確認します。

その後22:00くらいまでは開票作業者による仕訳と集計がメインなので、立会人がすることは特にありません。

22:00くらいから、集計された投票用紙の束(500枚セット)が立会人のもとに送られてきます。

立会人は、その束を確認して正しく仕訳されているかを確認します。

23:00になると開票作業者の80%が帰宅して、残ったメンバーで集計作業を続けました。

最初のうちは政党名の書かれた用紙の束や、人気候補の名前が書かれた用紙の束をチェックするのがメインですが、24:00を過ぎた頃から少数得票の個人名が書かれた用紙の確認が大半になります。

さらにごく少数の微妙な記載のある用紙をチェックし、無効票のチェックへと続きます。

有効票は用紙を確認するだけでよいですが、無効票の束には1束ずつ立会人の押印が必要です。

最後に按分票(複数の政党や候補への割り振りが必要となる票)をチェックして、26:30(午前2:30)頃にすべてのチェックが完了して終了となります。

ちなみに按分票で最も多かったのは「民主党」でした。

民主党は立憲民主党と国民民主党の略称なので、按分する必要があるのです。

両党の得票数に応じて按分されるのですが、この「民主党」という記載が全体の5%近くありました。

按分票は有効得票が確定したあとに計算されるので、立憲民主党と国民民主党の票数確定が最も遅くなってしまいます。

なお、開票立会人の報酬は8,900円でした。

この金額は自治体によって定められているので、自治体によっては異なる場合もあることでしょう。

2. 有効票になるものと無効票になるもの


投票用紙に書かれた文字は可能な限り有効票として処理することが原則になっていることが、今回の立会で初めてわかりました。

たとえば、誤字・脱字レベルであれば基本的に有効票にします。

仮に山田花子という候補がいたとすると、以下のような扱いになります。

  • 「山田」⇒他に山田という候補がいなければ山田花子の得票になる

  • 「花子」⇒他に花子という候補がいなければ山田花子の得票になる

  • 「山口花子」⇒他に間違える可能性のある候補がいなければ山田花子の得票になる

ネット上では、ガーシーに投票しようとして「ガーツー」と読めるものが多数見られましたが、この程度であれば問題なくガーシーへの得票になります。

他には、以下のような有効票がありました。

  • 公明堂 ⇒公明党の得票

  • MHK ⇒NHK党の得票

  • N ⇒NHK党の得票

  • 自 ⇒自民党の得票

また、届け名には記載がない戸籍名でもOKでした。

たとえば、山田花子の戸籍名が五十嵐花子の場合、「五十嵐」は他の候補に該当する可能性がなければ、山田花子の得票となります。

もちろん、政党名と個人名が書かれたものも、その個人の得票となります。

一方で、以下のものはすべて無効票です。

  • 白紙

  • ×や/などの記号

  • 自民党以外

  • 自民党頑張れ

  • 浅草キッドの水道橋博士

後半の3つは他事記載と呼ばれるものです。

文字が足りない場合は解釈して有効になるケースがあるのに対して、余分な言葉があると無効になってしまうのは面白いですね。

3. 開票立会人の仕事をして感じたこと

最後に開票立会人の仕事をやってみて感じたことを3つ書きます。

開票での不正は起こり得ない

開票立会人をやってみて最も強く感じたのは「開票での不正は起こり得ない」ことです。

私の担当した開票区は合計で約10万票(選挙区とあわせると合計で20万票)を集計しましたが、開票作業は約300人でやり、その作業を数人が巡回しながら確認しています。

さらに、仕訳されて集約されたものを再度チェックする人を経て、自動計数機でカウントします。

そこから、まとめられた票を抜き取りチェックをする人がいて、ようやく開票立会人(今回の場合は5人)のチェックになるのです。

これだけ何度もチェックされていれば、票数をごまかすことはほぼ不可能です。

加えて、作業に集中しないととてもこなせる作業量ではないので、意図を持って仕訳を操作しようなんて気も起きません。

開票所までの道のりでどのように管理されているかはわかりませんが、少なくとも開票所で不正が起こるとはとても考えられません。

立会人には集計結果が配布されるので、全国の立会人の集計結果をつきあわせることで、発表されている票数の正確性もダブルチェックできます。

投票用紙には正しく記載しよう


有効票のところで書いたとおり、ある程度適当に書いても可能な限り有効票として処理されます。

しかし、微妙な書き方になっている票は、何人もの人が見て解釈する必要があり、どうしても票の確定に時間がかかってしまいます。

そうした票が多くなればなるほど、選挙管理委員の人たちの帰宅時刻が遅くなるのです。(選挙管理委員は開票立会人の解散よりも後に解散です。)

選挙のために働いている人のことを配慮するなら、できるかぎり疑義の生じない書き方をしてあげるのがよいでしょう。

ネット投票になると誰が票数を保証するのか

紙での投票が大変なら「ネット投票にすればよいじゃないか」という声も多数あります。

私も基本的にネット投票には賛成ですが、開票作業の現場を見ていると、投票と開票の正確性を担保する点ではまだ課題があるように感じました。

もちろん投票の秘密を担保する部分にも課題はあるでしょう。

しかし、これらの課題を乗り越えて、より便利で効率的な投票の仕組みになって欲しいとは思います。

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