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春の島旅振り返り…5

書いてる間に夏が来るんじゃないかという不安にかられつつ、その4の続き。

今回の豊島の宿は家浦港から徒歩五分ほど、横尾館に近いたかまつ屋さんでした。前回豊島に来た時に近くを歩いて、ああ、泊まれるとこあるんだ、と思ったのが来訪のきっかけだったので、今回の豊島行きを決めて最初におさえたのがここの宿でした。

入ると日本語はおろか英語も怪しいという中国からのひとり旅の女の子がチェックインしてるとこだったので、ポットの使い方の説明やらを手伝って、それから自分もチェックイン。

日が暮れてくるとぐっと気温が下がって、ストーブが要ります。シャワーは特に予約せずに空いてる時に使ってくださいというスタイル。相部屋OKで予約しましたが一応襖で仕切って個室でした。カギとかないですが島旅なので普通です。

素泊まりだったので、オフシーズンの島の飲食店の情報を調べると、開いてる店も大半が5時前後には閉めてしまう、これ晩ご飯難民になるやつ…?というのがすごく不安で(なんせ豊島は直島と違ってコンビニもない)、事前に「食べられるとこあります…?」と聞いておいたのですが、「大丈夫です!」と言われて案内されたお食事処がこの店でした。

金栄丸食堂、と書いてきよまるしょくどう。

一応事前のリサーチでも名前は出て来たのですが、不定休みたいな感じだったので、空いてるかどうか不安でした。店の名前のイメージで、地元の食堂か…フライ定食とかかな…と思ってたら、これがびっくりするほどされおつな古民家改装の店内、若い女性の店主さんがやっている、カフェ飯風かつ地元の食材もタップリのヘルシーで美味しい晩ご飯にお酒も飲めちゃう素敵食堂だったのです。

美味しすぎて前菜しか写真撮れてないの残念すぎる…orz お酒もいろいろ種類があって、岡山の酒を飲みました。

同じテーブルのひとり旅の人たちや、地元の方とおしゃべりしながらゆっくり晩ご飯を楽しんで、お酒も飲んで、深夜に就寝。ひとり旅だけど、わりと毎晩飲んでます。っていうか考えてみたら最後まで毎晩飲んでたか。おやおや。

この日の晩ご飯は和食でしたが、朝ごはんも同じ店でモーニングです。同宿のひとり旅組はそれぞれ、高松へ向かう人、直島へ向かう人など、ばらけて旅立ってゆき、私はもう一つのお目当ての「ささやきの森」を目指しました。

バスで清水前というところで降り、壇山登山口から山を登っていきます。こっち側から登る人は少ないみたい。

島内案内地図みたいなのには徒歩20〜30分みたいなこと書いてあるけど、もうちょいある気がする…しかもわりとちゃんと山です。ハイヒールとかで上がる場所ではない。

最初はこんな広い道で車も入れるけど…

徐々に山道っぽく。

お寺を通り過ぎると…

徐々に本格的な山道に入っていきます。いい季節だったので気持ちいハイキングでしたが、夏場に来る人は飲み物とか虫除け、帽子などちゃんと装備してこないと大変なことになると思う。まあ45分ぐらいはみといたほうが。

ここがささやきの森の入り口です。番小屋みたいなものがあったけど係の人とかはいませんでした。ハイシーズンには誰かいるのかなぁ。何が驚いたって電動とはいえ自転車でこの入り口まで上がってきてる人がいたことでした。入場時には私一人だったんだけど、帰る頃には自転車が四、五台とまっててびっくりした。

この先を落ち葉を踏み分けながら歩いて行くと、チリチリチリ…と南部鉄の風鈴の音が。想像してたよりこじんまりとしたエリアの展示でしたが、とても不思議な広がりのある作品でした。概要はこちらから。

これねぇ、写真だとたぶんすごく伝えるの難しいです。透明な短冊に書かれた「愛された人」の名前は日本語、外国語あわせて様々だし筆跡もいろいろです。歩き回りながら一つ一つの名前の持ち主に思いを馳せるような見方もあると思うんですけど、おすすめはもっとぼんやりと視野を広げて風を待つことです。

風が吹くと、短冊か揺れてキラキラと光を反射しながなら、さまざまな高さの音の風鈴が一斉に鳴り始めるんですが、そうすると、無風のときには風景に溶け込んで輪郭もよく確認できなかった短冊が、光を受けて風景の中から急に浮き上がって見えてくるんです。カメレオンとか光学迷彩みたいに擬態して風景に溶け込んでいたものが、一斉に自己主張を始めるみたいに。

それはまるで「ここにいるよ」「ここにいたよ」って語りかけてくるみたいな感じなの。なんだかマジックを見てるような気持ちになりました。

この風鈴はまだ名前のない空いてる風鈴もあって、希望の番号を控えていくと、自分の愛する人の名前(生死問わず、一人だけ、著名人の名前とかはNG)を登録することができます。5000円+税。

ハイシーズンはどうなのかわかりませんが、この季節には、昨日も行った「心臓音のアーカイブ」まで行って登録する必要あり。手書きの文字が印字される形です。手続きは20〜30分ぐらいでしょうか。リアルタイムで反映されるわけではないので、ご希望の方は念のためいくつか候補の番号を控えていかれるといいと思います。他の人が押さえてるやつかもしれないので。

この森の中で、本当に愛するたった一人の人って誰かな、ということを真剣に考えるのもいい時間だと思います。私は最初は亡くなった父の名前にしようかと思ってたんですけど、それは母の仕事かなーと思ってやめて、子供の名前とかも、それはいつかその子がパートナーと互いに書き合うものかなーとか思ったりして、だいぶ長いこと考えこんじゃった。誰にしたかは内緒です。

ちょうどお彼岸の時期だったので、途中のお寺の墓地では法事の準備をしてたりして、そこまで含めて作品の中にいるみたいでした。

豊島にあるボルタンスキーの二つの作品、心臓音のアーカイブとささやきの森は対になっていて、この島の山の上にある「あなた」の声を代替する風鈴の音と、岬に近い渚にある「」の心臓の音、という二つのアーカイブが、片方はデジタルの音源として半永久的に検索され暗い屋内で再生され、もう一つは明るい屋外空間で野晒しになって徐々に錆びたり朽ちたりしていく、生と死、海へ連なる渚と天空へ連なる山…という対位法的な構成の作品が一つの島に置かれている、というのがなかなか貴重だと思うので、ご覧になる方は是非両方鑑賞して欲しいです。時間はかかりますが。

さて、山を下りがてら昼ごはんと思い、去年もいった島キッチンを目指したのですが、20組待ちみたいな大混雑だったので、サクッと諦めすぐ近くの101食堂に入りました。島キッチンは去年の秋にも入ったので。

これお肉っぽいですが、大豆タンパクの肉もどきでした。この他に豊島のいちごをたっぷり使ったタルトをデザートに食べて美味しかったー。相席で同じくひとり旅の人とおしゃべりしながら食べてました。岡山のほうから入ったとのこと。倉敷の美味しいお店のこととか教えてもらったー。今度岡山行ったら行きたい。

ヒュッテ
岡山県倉敷市児島赤崎1754-2

ちなみに私の次の次のお客さんぐらいでランチ売り切れてました。前日までは比較的ガラガラっぽかった島が一気に人口増えててびっくり。

豊島は直島みたいに店が多くはないしオフシーズンだと営業してない店もあるので、人が多い週末とかはランチ難民になる可能性があります。予約なりお弁当用意しとくなり、ある程度自衛しといたほうが無難。

次はお目当の豊島美術館に向かいます。がまたやたら長くなったので一休み。(今月で書き終わるのか…?)

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