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筋トレで競技パフォーマンス向上?

皆さんこんにちは。
nabehiroです。
今回は競技パフォーマンス向上に関する考察をしていきます。

 今の時代、X(旧Twitter)やInstagramやYouTubeなどのSNSでも様々なトレーニング動画を見ることができます。
「○○でパフォーマンス向上」
「○○で競技力向上」
などのフレーズも少なからず目にしたことがあるでしょう。

 私自身もアスレティックトレーナーとして選手やスポーツ愛好家の皆さんのためにもどのようなリハビリやトレーニングを提供することが競技パフォーマンスにつながるのかを考えることが多いため、そのような動画を見ることも多いですし、実際に動画をチーム指導へ活かしたこともあります。

 しかし、トレーニング(いわゆる筋トレ)で実際に競技パフォーマンスは向上するのかというと、「トレーニングが全てではない」ということは頭に入れておくべきだと私は思います。

 当たり前のことだと読んでくださっている方々は思っていると思います。
筋トレの仕方は筋肥大をするためや瞬発力を向上させるためなど、目的によって変化します。
 筋肥大をした結果、瞬発力が向上した結果、競技パフォーマンスが向上するということもよくあることです。例えば、細身のラグビー選手が筋トレを継続的にすることによって筋肥大し、筋力がつくことによって当たり負けしないようになる。陸上短距離選手が筋トレをすることによって瞬発力が向上し、爆発的なスタートダッシュが可能になるなどです。
 例のように、筋トレによって競技パフォーマンスが向上するということはよくあります。しかし、筋トレをすることだけが競技パフォーマンス向上につながるわけではありません。


 競技パフォーマンスには「技術力」も含まれます。筋トレによって「技術力」が向上するか?と考えたときに、やや疑問符が付きますね。
もちろん、「筋トレ」と「技術力」にイコールの関係はなくとも、少なからず影響している部分はあると思います。例:筋力向上によって野球のバットコントロールがより上手にできるようになった。サッカーやラグビーでの切り返し動作がより機敏にできるようになった。などです。


 しかし、「競技パフォーマンス向上」させるための一番の近道は

「その競技を練習すること」

だと私は考えます。

 ヒトは誰しも完璧ではありません。できることがあればできないことももちろんあります。私自身も野球やマラソンにおいては得意分野ではありますが、その他のスポーツは未経験なものも多いためできません。
 そして、誰しもが経験したことがあるように、最初はできなくても繰り返し実践していくことによって少しずつできるようになってきます。できるようになると嬉しくなって「もっと頑張ろう」「もっと練習しよう」という内発的動機が高まります。(もちろんそうでない人もいるとは思いますが。)
 
 ヒトは「動作」を繰り返し実践し細かいエラーを修正しながら上達していくのです。もちろん、動作によってすぐに習得できるものや時間のかかるものもあります。また、すぐに習得できた動作であってもミリ単位で何度も同じ動作をするとなると至難の業です。

 毎年、夏になると全国放送で夏の甲子園が放送されているのは周知の事実でしょう。そして毎年楽しみにされている方も多いと思います。私は高校野球も好きですが、プロ野球も好きなので、過去に観戦しに行ったりテレビやYouTubeでプレーを観たりなどすることもあります。アスレティックトレーナーになる前は、高校野球を観た後にプロ野球中継を観ると、どこか高校野球に物足らなさを感じるなと思うことが多かったです。当時は高校レベルとプロレベルとでは技術力に単純に差があるためだと考えていました。もちろん、ざっくり言うとまさに技術力の違いだと思います。甲子園に出場する高校球児達は日々の厳しい練習に耐え、努力に努力を重ねた結果の甲子園出場であることは容易に想像がつきます。そのような球児たちはもちろん、技術力も相当なレベルであることは確かです。
 プロ野球選手でも同じことが言えると思いますが、この技術力の差は何か?と考えたことはあるでしょうか?
 単純に、18歳までの野球経験とそれ以降の野球経験といった野球に費やす時間が多いというのも関係していると思います。しかし、私個人の意見としては「どれだけ1つ1つの動作に意識を向け、こだわり、常に集中しているか」が技術力の差を生み出していると思います。


日刊スポーツより(https://www.nikkansports.com/baseball/samurai/wbc2023/news/202302160000516.html)

 2023年春先に行われたWBCでは、チームの顔である大谷選手の活躍だけでなく、パドレスのダルビッシュ有選手が若手のピッチャー陣に対し、技術的な指導を積極的に行っていたことも取り上げられていました。
 WBC後のドキュメンタリー番組「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」は沢山の方が観られたと思います。その中で私が特に印象的だったのがダルビッシュ投手が佐々木朗希投手に変化球のアドバイスを送っていた言葉でした。

「ボールのどこに圧をかけなきゃいけないとか、そういうのがわかってくれば投げられるから。やりかたを脳が知らんだけだから、そこの入力さえ覚えてしまえばいつでも投げられるから」

憧れを超えた侍たち 世界一への記録

といった声掛けでした。私はこのアドバイスを聞いたときにさすがだなと感心しました。ダルビッシュ投手は野球だけでなく、栄養学やトレーニングに関しても勤勉で知識が豊富というのは有名ですが、私はこのシーンを見てダルビッシュ選手はどのような運動の学習・制御も必ず脳が関与しているという事をしっかり理解されているんだなと感じました。そして、数ミリ単位の非常に繊細な部分まで常に意識しながら野球の練習に打ち込んでいるんだなと感じることができました。

もうひとつダルビッシュ投手で過去に話題になった内容ですが、ダルビッシュ投手のリリースポイント(ボールを離す位置)はどの球種で投げてもほぼ同じであることです。

ここまで把握できる投球データ ダルビッシュを科学する<第1回> - スポーツナビ (yahoo.co.jp)

  この記事を読んでもらうと、リリースポイントの集まり具合が、変化球の制度の良し悪しに少なからず影響していることがわかります。リリースポイントが一点に集中すればするほど打者は球種を読みづらくなるため、打ちにくくなりますが、ダルビッシュ投手のようにかなり精度の高いリリースポイントであれば打者は攻略しにくいのも納得がいきます。しかし、リリースポイントにばらつきがあっても非常に精度が高いので、なかなか真似できるものではありません。これを見てもダルビッシュ投手の意識が繊細な部分にまで行き届いているのが理解できます。

 つまり、このダルビッシュ投手の言葉にもあるように、運動は脳がやり方さえ覚えればできるようになります。しかし、運動の中でも、繊細な動きを要する運動では繰り返しの練習が必要です。その繰り返しの練習でも、1回1回細部の動きや感覚にこだわり、集中した状態で繰り返し行っていけば、難易度の高い運動でも脳がやり方を覚えてくれるわけです。

 プロスポーツ選手の技術の高さをプレーで見て感動する理由はまさしく、日々の質の高い練習にあると私は感じています。


 長々とお話しましたが、結局のところお伝えしたいことは冒頭でも述べましたが、「競技パフォーマンス向上」させるための一番の近道は

「その競技を練習すること」

です。
それも、ただ単に練習するのでは意味がありません。常に集中して一つ一つの動きを意識することが大切です。力を伝えやすい下半身の動き、腕の位置、頭の位置、体幹の傾きなど、なかなかできないことも、脳がやり方を覚えるまで細部まで意識して繰り返し練習することです。
筋力トレーニングは、いわゆる身体作りなので、技術には直結しません。間接的に運動パフォーマンスを向上させることは可能です。

練習+筋力トレーニング

の継続によって相乗効果が表れるでしょう。
もちろん、栄養摂取や睡眠を前提としたリカバリーもパフォーマンス向上にはつながりますので、練習と筋力トレーニングだけやっていればいいというワケではありません。

 しかしここではあくまで、競技パフォーマンスの中でも、「技術面」に焦点を当てているので、やはりパフォーマンスアップには練習に勝るものはないでしょう。

今回の内容を頭の片隅に入れて、今後様々なスポーツを観るとまた違った見方ができるのではないかと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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