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アップリンク渋谷の閉館によせて

ミニシアターの草分け・アップリンク渋谷が、本日(2021/5/20)付で閉館。筆者の20代を底支えしてくれていた映画館だ。

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2018年の年末、アップリンク吉祥寺がオープンしてからは利便性もあってすっかり吉祥寺びいきになって、渋谷からは遠のいていた。そこへ来て2020年春からのコロナ禍と、機を同じくして明るみになったパワハラ問題。気づけば会員の有効期限もとっくに切れ、渋谷を訪れるのはかれこれ3年ぶりだろうか。長年の感謝と惜別の念をこめて、最後にもう一度、訪ねた。

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20代の頃は足しげく通った映画館。はじめて足を運んだ作品が何だったのか、思い出せないけれど、かつては知人も働いていて、シネコンとは違うアングラな雰囲気、大衆向けでない客席の作り、文化の発信拠点的という香りに、居心地の良さを感じたものだ。

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ここのチラシ置き場が好きだった。トイレ待ちの列とすれ違うのがやっとの通路で、みな「スイマセン」と小声で会釈をしながら前を横切る。映画以外にも演劇や各種展示情報もあって、この棚を眺めるとアンテナに引っ掛かってくるものが必ずあって、ここで出遭って足を運んだイベントも多い。

公開中の最後のラインナップから、何を観よう?考えて決めた作品は、大島渚監督の『愛のコリーダ』。場内は満席だった。

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映画が終わると、この階段を降りて、現実へ戻る。渋谷駅までそこそこ距離があって、駅へ向かうまでの道中、街の喧騒に揉まれながら、だんだんと日常へ帰っていく。この「駅至近ではない立地」も、道程で余韻に浸る装置として機能していたんだなと再認識する。

建物の外では、皆、別れを偲ぶように写真を撮っていた。

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1995年、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が起こった年に前進の「アップリンク・ファクトリー」がオープンし、今年で26年。筆者が渋谷で遊ぶようになってからは常にアップリンクはここにあった事になる。

行きたい時にいつでも行けて、文化的感度を澄ませたい時にふらっと立ち寄ることができた場所が、アップリンク渋谷だった。そこに常に在るのが当たり前で、インフラのように存在し続けるものだと思っていた。遠のいてしまったのは自分自身だが、吉祥寺に浮気をしても、本丸は渋谷であるという認識があった。サポートし続けられなかった自らを悔いても遅い。

アップリンク渋谷もエヴァンゲリオンも、1995年にスタートし、この2021年に幕を閉じる。1995年そして2021年という年は、カルチャーの大きな分水嶺になるんだろう。

26年もの間、本当にどうもありがとうございました。


<了>









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