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トリップホップという楽園

20歳前後の数年間、すべてを投入していた活動があった。時間もエネルギーもお金も、それこそすべてをそこに注いでいた。
そんな当時の仲間たちが、今朝方、ふいに夢に出てきた。

未だにみんなその頃のまんまで(それ以来会ってメンバーに関しては、アップデートされていないのも当たり前か)、屈託なく笑っている。

が中には、容姿は変わっていても「確実にアイツだな」と判る顔もあり(夢って大体がご都合主義だし)、今では結婚して4子を授かった女性も、あの頃のどこかはかなげな笑顔をこちらに向けている。

“青春の渦中にいる者にとっては、それが青春だったと解らない”

なんて格言があるようだけれど、振り返ると、確かにあれが青春だったのだなと思う。

あの熱量は何だったんだろうな。
懐かしく、もう自分には失ってしまったものだな、とハッキリと自覚しながら、それでいて、そういった時期が自分にもあったこと、それを共有した仲間がいたこと、そして、そこを土台として、その後の人間関係が育まれていることに、誇りを感じている。

そんな時代があってよかった。


夢の中では、みんなが元気だった。日常の憂いなんかいっさい無いようで、心持ちもすがすがしくて、抜け切っている。悩みなんかなさそうな顔して、笑い合ってる。

目が覚めて、胸いっぱいに解放感が拡がっていて、とてもあたたかな感情に包まれている。そこから、だんだんと現実に返ってくる。
枕元のメガネをさがして、
「そういえば夢の中ではメガネは要らないんだな。裸眼でなんでもくっきり見えるんだ。」
メガネは現在の日常を見るための装置なんだな、などと苦笑しながら、その日のスケジュールを確認する。

顔を洗い、台所へ行き、朝食の準備。

夢の余韻は少しずつ遠ざかる。思考がクリアになると同時にリセット。

いい夢だったな。
夢に逃げ込みたい時もある。けど今日は違う。

あぁ、夢に出てきたメンバーは、いま何をしているのだろう?久しぶりにリアルに連絡を取ってみようかな。

当時があるから、今がある。いつでも還っていける。
トリップホップという楽園。


<了>


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