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【読了】「22世紀を見る君たちへ」

『22世紀を見る君たちへ』
講談社現代新書 平田オリザ著


「未来は誰にもわからない」
それは子どもたちも、教員も。

だけど、未来に対して考えることをやめてはいけない。
これが一番大切な姿勢なのかと、この本を読んで思いました。

この本は父から勧められて借りたものです。
読むのに時間がかかってしまいました。
父、ごめんなさい。やっと読み切りました。
私が思ったこと、綴ります。

私は今の日本の平均寿命から考えて、22世紀はぎりぎり見えないと思います。今の目の前の子どもたちは、見る人もいるのかもしれない。

今担任している子たちは、ちょうど10歳差なので、そこまで年が大きく離れているわけではないからこそ、同じ視線で未来を見据えることができているのだと感じています。

だけど、これから教育に携わるのならば、いづれ確実に22世紀を見る子ともかかわる機会がくるのでしょう。

その時に「教員」として、どのように子どもたちに接し、何を伝えていくのか。教育の真価がためされるような気がしました。

少し見えている未来で起こりうるのは「大学全入時代」
つまり、こだわりなく望めば、どこかの大学に入れるという時代。大学が学生を選ぶのではなく、学生が大学を選ぶ時代。

私が経験した大学受験とは大きく変わるものだと痛感しました。

そんな時代の中、大学は何を求めているのでしょうか。求めなくても受けてくれる生徒の数が減少してくる中、どんな生徒が大学を受験し、入学金を払い、4年間在学して欲しいのでしょうか。

これは子どもたちにも言っていることですが、大学は入学してゴールではないのです。
4年間という人生のモラトリアムの期間で自分を見つめ、社会と繋がり、未来を考え、行動し、自分のキャリアをスタートさせる自己調整・自己分析の大切な期間です。

大学の推薦基準をとったら終わりではないのです。
合格点を取ったら終わりではないのです。

私は大学の人間ではないので、内部でどんなことが話し合われ、管理され、どこからどんな圧力がかかっているのか明確ではないのですが。

大学側も今までと同じように、点数を取れた生徒に単に講義して卒業させるだけではないのは分かります。

この少子化と社会的教育ニーズに伴い、受動的に物事をこなすのではなく、自分の意思で行動し、答えのない問題に対し探究し、世界をよりよくするために、学生一人ひとりの学びのあり方を重視することが求められてきていると思います。

だとすれば。
大学が欲しい生徒は、それができる生徒。
できるポテンシャルを持つ生徒。

それを図るのが、入試。

になってくるのだと思います。

本書の中には、実際にこのような能力「地頭」を問う入試問題が多く掲載されていました。

ドラマディスカッション。なんとも興味深い。これは単に多くの知識を持っているだけでは太刀打ちできない、一夜漬けなんて意味のないものになっています。

その人の人柄は一夜にしてできない。
だからこそ日頃からの生き方が問われる。

入試というものの理想的な形だなあと個人的には思いました。
このような入試形態が主流になれば、自ずと高校での進路指導や授業も変えていかなくてはならないでしょう。

いや、もうすでに考えなければ遅いのではないでしょうか。

新学習指導要領はすでに、そのような生徒の育成について触れています。それにアップデートできない教員はいつまでたっても遅れをとるし、その遅れの餌食になってしまうのは、皮肉にもその教員ではなく、せっかくご縁があってこの学校を選び、そして目の前にいてくれてる生徒です。

教師たるもの、生徒の可能性を潰してはならない。
教師たるもの、生徒の可能性を最大限に引き伸ばさなくてはならない。

生徒の生き方を問われる問題にこれから生徒が立ち向かうのであれば、教師ならば寄り添いたい。

これからの未知な未来に生徒は足を踏み入れ、強く逞しく生き抜くことを求められるのであれば、教師ならばその一歩を踏めるように支えるべき。

それは、教師自身が世に興味を持ち、遠ざかるのではなく知ること。
生徒より物知りになれって言っているのではないのです。未来なんて誰にもわからないか。

だから、私は教育とは「一緒に未来を考える」のだと思います。

そんな教育を、これからもいつまでもしていきたい。


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