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E-13で得たモノとは

渋谷のユーロスペースで行われていた『トーキョー ノーザンライツ フェスティバル2018』、最終日の最終回。

今年のデンマーク映画は2本。
「プラハ」と「チーム・ハリケーン」。
マッツ・ミケルセン主演の大人の夫婦ドラマ「プラハ」も観たかったけれど、時間が合わず。ようやく最後の「チーム・ハリケーン」には間に合った。十代の、心に不安を抱えた少女たちの日常を描いた作品らしい。

夜9時からの上映前に「今夜は抽選で1名の方に、ブレゼントがあります」と劇場の人からアナウンスがあった。デンマーク映画にちなんだボダム(デンマークのガラス製品メーカー)の品だという。

抽選といっても向こうで決めた番号だ。
「E-13番の方!」

皆が一斉にこちらを見る。
思い当たる番号で、はっとした。前の座席が目に入る。D-13。つまり、E-13はわたしである。

え?わたし?えーっ??

今日やっぱり観に行こうと思い立ち、ネットで購入した席だった。場内は夜の最終回なのに結構混んでいて、ほぼ満席である。百人くらいはいるだろうか。

「あ、ありがとうございます、どうも」
品物を受けとるとすぐに暗くなり、映画の本編が予告もなく始まった。

心の動揺というか、ドキドキしたままで、冒頭の数分はちょっと気持ちがついていかなかった。

まさか、当たるなんて!!

こういう賞品は、無欲な人に当たるという。
帰宅後、よくよく今回の映画祭のチラシを見たら、小さくプレゼントの告知が載っていた。そうか、こんな企画があったんだ、全然知らなかったから当たったんだな。いや知らないことも無欲というのだろうか? なんだかすっきりしないまま、頂いた品の箱を開けた。

ボダムは大好きなブランドである。
友人にグラスをプレゼントしたこともあるし、自分でもいくつか持っている。頂いたフレンチプレスのコーヒーメーカーも、じつはシンプルなものをひとつ持っているけれど、このグリーンの色もデザインも素敵だ。大歓迎。有難く使わせて頂こう。

話が前後したが、映画「チーム・ハリケーン」にも意表をつかれた。「え?ドキュメント?」と思わせるような、自撮りのブレた動画がふんだんに使用されていて、ポップでサイケな原色の世界(奇抜なアートや写真、日本のアニメのピカチューも)がインサートされ、彼女たちの「不安と不満だらけの日常」を彩りつないでいく。

デンマークは福祉国家で、ジェンダーや十代の性にも寛大で、そうした社会は日本よりも進んでいると思っていたが、それは大人側の話だと感じた。映画のなかの飾らない少女たちは、行き場のない爆発寸前の心を持て余し、苛立ちながら、互いに救いを求めている。

偶然、今日は映画の前に、原宿の竹下通りを歩いた。
初めて行く場所を探しながら、迷い込んだ「若者の街」は、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。甘いクレープの匂いも、耳にするアイドルの話題も、店先のガーリーなファッションも。

時代や国は違えど、流れているものはちっとも変わらない。
ティーンエイジャーの爆発寸前なエネルギーは、失ってしまった者からすれば、躊躇せず思い切り発散してほしいと願う「力」だ。

危ういからこそ美しく、負から何かを得る「力」である。

わたしは「何か」を得たのだろうか。
あの十代の力で。

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