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「滋味あふれる」日曜のランチ

10月最後の日曜日。
今朝は叩きつけるような雨の音で目が覚めた。

久しぶりに心ゆくまで寝たなあ、と時計を見たら、11時半を過ぎていた。もうお昼だ。

「あー肩がいたいー」「腰もいたい」「寝過ぎかなあ」「マッサージ行こうかな」
バリバリした身体をひきずりながらベッドを抜け出し、このところの激務による不調をぶつぶつ訴えていると、新聞を読んでいた夫が「おはよう」より先にこう呟いた。
「野菜のお店に行く?」

野菜のお店とは、近所の商店街にあるごはん屋さんのことである。
農家から届く旬の野菜を扱い、いつもシンプルな味付けで、野菜本来の味を引き出すことに長けている。「滋味あふれる味」と夫が評する、お気に入りの店だ。

「行く行く!予約する!」
電話を入れると、12時からの席が空いていた。小さな店だからすぐにいっぱいになるのだが、今日は台風で客足が鈍っていたのだろう。わたしたちは大急ぎで着替え、家を出た。ひどい雨のなかを出かけるなんて、いつもなら敬遠するところだが、二人とも身体が新鮮な瑞々しい野菜を欲していた。

日曜しか営業しないランチのメニューは「野菜いっぱいのプレート」ひとつだけ。十種類以上はあると思われる様々な旬の野菜が、大皿に少しずつ盛られていて、見た目もとても美しい。しばらく見入ってしまうほどだ。
今日はゆでた落花生に、煮詰めた柿や梨、薄くスライスしたりんごも入っていた。玄米のご飯と青菜の入った味噌汁と一緒に頂く。

ビタミンやミネラルだけでなく、大地に降り注ぐ太陽や緑の風、土のエネルギーがからだじゅうに満ち満ちていくのを感じる。

デザートに「焼きリンゴのクランブル」も頼み、食後の珈琲も楽しんで、おなかも心も大満足で店を出た。

滋味あふれる野菜たちが、ほんとうに滋養になって、からだを巡り始めたのだろう。
さっきより強くなった雨に負けまいと、力強く踏み出すわたしがいた。

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