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昭和のコロッケ

『肉屋のコロッケ』には、昭和の香りがする。

サザエさんやちびまる子ちゃんに出てくるような、ちいさな街の商店街に活気があった時代。お肉屋さんで買うコロッケは、夕飯のおかずになったし、子供たちのおやつにもなった。そんな『肉屋のコロッケ』は、あの時代を生きた人なら誰もが懐かしき昭和を思い出す、お惣菜のナンバーワンではないだろうか。

わたしの母は専業主婦だったので、自宅でもコロッケをよく作っていたが、「家庭のコロッケ」と「肉屋のコロッケ」は、まったく別のモノである。
どちらがおいしいという話ではない。家庭用の油で揚げたコロッケと、ラードで大量に揚げる肉屋のコロッケは、食感も香りもまったく違う。同じカテゴリーの「コロッケ」とはいえないと思うのだ。

そんな『肉屋のコロッケ』を買いに、今日は近くの商店街にある肉屋まで、足を伸ばした。
東京は、地方よりも昔ながらの商店街が残っていると思う。名古屋の地元の商店街は寂れてしまった。子供の頃に親しんだお肉屋さんは、店を畳んで久しい。

東京ではもう地元といっていいほど長く住んでいる、この街。
引っ越してまもなく見つけた昔ながらのお肉屋さんは、わが家からはちょっと距離があるけれど、わたしはコロッケを買うなら必ずここだと決めている。
1個110円で売られているそれは、なかに入れるひき肉やじゃがいもにもこだわりを持っているらしく、ほんとうに美味しい。店の名物になるほど大人気で、今日も買っているそばから、お客さんがひっきりなしに訪れていた。

家に着いてすぐ、まだほんのりと温かいコロッケを1つ頂く。
仕事が立て込んでいて、時間もないし寒いし、本当は家から一歩も出たくなかったけれど、思い切って買いに出てよかったと心底思う。

あまり食べ過ぎないようにしよう。今夜の夜食に残しておかなければ。

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