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受け身からの卒業

昔々、あるところにハラスとウケミがいた。

ハラスは厳しい上司で、ウケミはいつも叱られていた。

ハラスは言う。

「なんでも人任せにするな。仕事なんだから、責任をもってやりなさい」

ウケミは「はい」と返事はするものの叱られたくない一心でおびえるばかり。

ハラスは、いつまでも仕事ができるようにならないウケミにほとほと困っていた。

ハラスに説教されていたある日、ウケミはハッと気づいた。

……ハラスに叱られたくないとばかり思っていた。でも、ハラスの気持ちを考えたことはなかった。ハラスは、どんな気持ちで、わたしに教えているのだろう。

ハラスの言葉を耳を研ぎ澄ませて聞いた。

繰り返されるのは、責任という言葉。

ウケミは、甘えていたことに気づいた。

叱られたくない。

自分にはできない。

そんなこと、仕事には、関係ない。

ハラスが教えたいのは、責任をもって仕事をすること。

ハラスはいじめたいわけじゃない、ちゃんと仕事をして欲しいだけなんだ。

ウケミは変わった。

サナギから蝶になるように。

人が変わったように見違えた。

自分から率先して仕事にとりかかった。

苦手なことも、初めてのことも、挑戦した。

ハラスの気持ちに応えるように。

失敗することもある。

ハラスは叱る。

「どうして、わからないなら、聞かないんだ」

でも、その叱り方は以前とは違う。

ウケミは、挑戦していたから。

その勇気をハラスは、ちゃんとわかっていた。

ウケミは、わからないことはハラスに聞いた。

ハラスは、なんでも面倒見よく教えた。

ハラスとウケミの様子を見て、まわりは驚いた。

……ハラスメントされてると思っていたのに、仕事熱心な2人なんだ。

ウケミは、メキメキ実力をつけた。

もう受け身な人間ではなかった。

ハラスは、初めてウケミを褒めた。

「少しは、仕事ができるようになった
な」

ウケミは、泣きそうになった。

鬼のように厳しいハラスから褒められた。

2人は、かけがえのないパートナーとして、会社の重要な戦力になった。

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