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内村鑑三著「代表的日本人」を読んで二宮金次郎のビジネスセンスとリーダーの才覚を知る

キリスト教を日本に広く普及させたことで有名な思想家・内村鑑三の著作、「代表的日本人」を読んだ。

内村鑑三は本書を通じて、日本が海外いに誇る代表的・模範的な日本人として西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の5名の生き様を詳細に記している。

5名全員、私利私欲に滅し、驕ることなくひたすら周囲の人や社会、国家のために自身を捧げた素晴らしい生涯を送った点は共通している。

が、中でも二宮尊徳(二宮金次郎)の物語は驚きの連続であった。

二宮尊徳と言えば、薪を背負いながらも勉学に励んだ貧しい少年時代のエピソードが有名だ。しかし、その後の彼の生き様のほうがもっと衝撃であり、面白い。恥ずかしながら私はこの本を読んで初めて知った。

彼は日本津々浦々の耕作放棄地を、稲が実る田畑に再生させる天才だったのだ。

彼は若い頃に自分が住んでいた藩の耕作放棄地を再生させることに成功すると、次第にその手腕は藩そして江戸幕府に知れ渡り、彼の住む藩のみならず日本全国の稲作地域の拡大に成功させた。これは江戸時代における食糧生産量の拡大に直結する功績であり、同時に飢饉の減少にも大きく貢献するものだった。

現代社会に置き換えれば、何も無い荒地から新たな富を生み出す起業家に例えるのが適切だろうか。

そんな彼は、どの荒地であれば田畑として利用が可能かを見極める選球眼を持ち合わせていただけでなく、藩から農地再生を要請され、それができると確信したならば再生請負人としてのコミットを表明し、根気を持ってやり遂げる気骨の持ち主でもあった。

彼は農村の人々にも非常にフェアに接し、よく働く農民には報酬を、表面的に働くふりだけをする農民には根気強く教育を施し、人々をまとめあげるリーダーシップも持ち合わせていた。

また、予見する力にも優れていた。とある夏の日、ナスの育ち具合や太陽の照射具合を見て、「来年は不作になり、飢饉が発生するだろう」と予測し、即座に対策を立てた。その冬はあわやヒエといった米に代わる大体食糧の生産に注力したのだ。その後、二宮尊徳が予想した通り、実際に稲作が不作になった年も、彼がいた藩は冬に生産していた代替穀物を確保していたことで飢饉を未然に防いだのだ。

この農地再生を手がけたビジネスセンスと、人々を率いる強力なリーダーシップ、そして将来の対応を事前に準備する能力を持つ二宮尊徳は、現代社会で例えればスーパー起業家なのではないか。

二宮尊徳のイメージが、苦学生から優れた起業家に一気に変わった一冊であり、ぜひ一読をおすすめしたい著作である。



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