緩和ケア移行期のコミュニケーションスタイル~抗がん治療中止時期にどのようなコミュニケーションがよい?~
がん治療を行うなかで、いずれ治療効果が得られない時期がきます。このような時期には、がん治療中止と緩和ケア移行の話をします。
この話は患者さんや家族にとって「治療中止=新たな死の宣告」のような悲しい話でもあります。もちろん、がん以外の病気でも、治療を中止しなければならないときがあります。人はみな同じような話を聞くことになります。
さて、患者さんや家族にとって、好ましいコミュニケーションはあるのでしょうか?
好まれるスタイルTOP10
抗がん治療中止や緩和ケア移行時のコミュニケーションスタイルについて、Umezawaらが報告しています。(Cancer 2015; 121: 4240-9)
これらは、90%以上の患者さんが望むと回答した内容になります。つまり、ほとんどの患者さんが望むコミュニケーションなのです。
すべての患者さんにすべての項目が必須と言っているわけではありません。読者の皆さん(医療従事者であればなおさらですが)が自身を振り返り、
「これとこれができていない」
「逆のことをしてしまった」
など、気づきがあれば改善するための指標にしてください。
望まれないスタイルは2つ
80%以上の患者さんが望まないことがあります。それは、
医療従事者の皆さん、患者さんよりも先に家族に説明していませんか?
医療従事者によっては、
家族に話す前に患者に説明して落ち込んだら大変
家族から「なんでそんな話をしたんだ」と問い詰められるかもしれない
家族から、「本人には言わないで」と言われたから…
など、さまざまな理由で、患者に説明するよりも先に家族に伝える、患者に話せないなどの状況に陥っていることがあります。
この2つの項目から、患者さんは「知りたい」と思っていることが読み取れます。痛い検査、つらい検査、きつい治療を受けたのは患者さん自身であり、その結果を「知りたい」と思うのは当然です。
中には「知らなくてもいい」、「聞かなくていい」という患者さんがいます。たいてい、自分の状況を「分かっている、気づいている」のです。悪いことだろうから「知らなくていい」、「聞かなくていい」と答えるのです。
話をする前には、患者さんに「知りたい?」と尋ねることは大切です。
どのように聞いていくか、以前まとめましたので、参考にしてください。
多くの患者が予後の説明を望んでいる
米国臨床腫瘍学会、欧州臨床腫瘍学会は、進行がん患者との終末期の話し合い(end-of-life discussion)をもつことを推奨しています。
予後(≒ 余命)の話をすることで、
患者は病状をより正確に理解し、現実的な予後の認識を得ることができる
患者と家族が十分な情報に基づいた決定を下せるようになる
と考えられています。
臨床現場でも、余命を伝える方が、残された時間を患者さんらしく過ごしているように感じます。
最後に
余命の話、治療中断の話、ホスピスへの移行の話など、患者さんや家族にとって悲しい話になるのは理解しています。実は、医療従事者もつらい気持ちになっています。ただ避けられない話なのです。
だからこそ、患者さんや家族を支える気持ちで
・症状の苦痛緩和に努める
・切れ目のないケアを考えていること
・見捨てないことを保証すること
を伝えながら、つながりの保証や安心感を少しでも提供できればと思い、話に臨んでいます。
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