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席替え。 【#2000字のドラマ】

いつも窓の外を見ながら、耳にイヤフォンを差して退屈そうにしているショートボブで明るい髪色の小柄な少女。

僕は彼女が少し気になっていた。

「和也〜!」

教室のドアの方から、元気の良い聞き慣れた女子の声がする。

和也「香澄じゃん。どうした?」

香澄「どうした?じゃないわよ。私が貸した化学の教科書返して!」

和也「あっ、悪りぃ。すっかり忘れてた。」

香澄「ったく。普通借りた方が返しにくるもんでしょ。」

和也「ごめんて。ほいっ。ってか、最後のページにイラスト書きすぎじゃね?」

香澄「、、、見たの?」

和也「うん?」

香澄「さいってー!もう貸さない!」

香澄は少し顔を赤らめながら教室を後にした。

男子「今日も夫婦喧嘩ですか!お熱いねぇww」

一同 ー爆笑ー

和也「そんなじゃねぇって。」

ー チャイムの音 ー

先生「はい席座って〜。今日は待ちに待った席替えでーす。」

一同「イェーイ!!」

このクラスでは3ヶ月に1回席替えがあった。和也は後ろの席が好きだった。

先生「じゃあ公平に、くじ引きするか。よし。じゃあ前の席のやつ、手伝ってくれ。」

席替えの時は前の席の人たちがくじ引きを作るのが恒例だった。和也はこの作業も嫌だった為、いつも強運にも後ろの席を引き当てていた。

高校に入学してもうすぐ1年が経つ。季節は冬で、もうすぐクリスマスだ。

和也も高校に馴染めるか入学当初は不安だったが、クラスの雰囲気も良く、順調に友達も出来て、高校生活をエンジョイしていた。

先生「くじ引きできたな。どっちからいく?廊下側?窓側?」

男子「こっち!廊下側」

女子「だめ!こっち!窓側!」

先生「あら。じゃあ、じゃんけんして。」

男子・女子「じゃんけんっ!!」

廊下側の男子が勝った。

男子「よっしゃー!!」

まあ、お祭り騒ぎだ。じゃんけんの上、くじ引きで席が決まるという確率論的には何が変わっているか分からないが、なぜか引けるくじ引きが多い方が喜ぶ。

こうして席替えのくじ引きが始まった。和也の番がくる。

和也(後ろ後ろ後ろウシロうしr、、、、)

和也は36番を引き当てた。このクラスは36人しかいない。

つまり和也の席は、窓際の一番後ろ。

和也「よっしゃ!」

男子「いいなぁ〜和也。」

先生「よーし、決まったな。じゃあ移動開始。」

和也「よいっしょっと〜。ふぅ。ん?」

和也が席に着くと移動してない女子が一人居た。いつも窓を外を見ながら何かを聞いている少女。渡辺真希だ。

和也「渡辺さん?移動しないの?」

真希はイヤフォンをしていて、和也の言葉に全然反応しない。和也は真希の肩をトンっと叩く。

真希「えっ?田中くん?どうしたの?」

和也は全く渡辺と話した事がなかったので、真希の反応に驚いた。

こんなに明るい声を出す子だったのかと。

和也「あっ、いや。渡辺さん、動かないのかなって。」

真希「あ、あぁ!私、35番だったからここなんだ。せっかくの席替えで席が変わらないって、運が良いんだか、悪いんだかw」

和也「そうだったんだw じゃあこれからよろしくね。」

真希「うん。よろしく。」

こうして和也と真希のファーストコンタクトは終わった。

ー休み時間ー

和也「ねぇ、渡辺さんって、いっつも何聞いてんの?」

真希「これ?音楽だよ。湘南乃風とかELLEGARDENとか。」

和也「えっ!エルレ知ってるの?!格好良いよね!」

真希「分っかる!めっちゃ良いよね!」

和也「渡辺さんって、ロックとか聞くんだなぁ〜。意外だ。」

真希「そうかな?私、ロック大好きなんだ!バンドも組んでるし。」

和也「えぇ?!すげぇ!パートは?何してんの?」

真希「Vo.っすね。」

和也「へぇ〜歌上手いんだ!」

和也と真希は、この時の席替えがきっかけでよく話すようになった。

そして少し時は経ち、、、

真希「和也!クリスマスぼっち?」

和也「失礼な。別に今のところ予定ないけど。」

真希「、、もし良かったら、ライヴ見に来てくれない?」

和也「へぇ〜!クリスマスにやんのか!良いね。行く行く!」

真希「仲良い人呼んで良いからさ!人数決まったら教えて。」

和也「分かった。じゃあ決まったら真希にメールするわ。」

お互い名前で呼ぶようになり、すっかり距離も縮まっていた。

香澄「和也〜!」

和也「おぅ。どうした?」

香澄「クリスマス暇でしょ?去年と同じで私に付き合いなさい。」

和也「いや〜残念。今年は真希にライヴ誘われてんだよね。」

香澄「真希って、渡辺さん?、、最近良く話してるね。」

和也「席近くなってから仲良くなったな。」

香澄「ふーん、、好きなの?」

和也「ばっ、そんな訳ねぇだろ!」

香澄「ふーん、、ねぇ、私も行って良いかな?そのライヴ。」

和也「おっ、良いんじゃね。隆司とか誘って行こうぜ!」

ークリスマスライヴ当日ー

MC「メリ〜クリスマス!!今日は高校生対バン!今年ここらで注目の高校生バンドをブッキングしました〜!」

和也「満員じゃん。ん?」

MC「トップバッターは、Joker!」

早速真希たちの出番だった。

会場は一気に盛り上がる。

和也はステージの彼女を見ながら思った。

ーかっけぇー

一曲目が終わり、二曲目の途中、真希と目が合った。

真希は少しは恥ずかしそうに目を逸らした気がした。

すると和也の隣にいた香澄が、和也の左手を握ったー



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