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【人生で1番の経験】比叡山international TRAIL RUN 2019

今年も比叡山の5月がやってきた。大会自体は5回目になるが、私自身は4回目の参加となる。ランナーズから1回目は3人、2回目も3人、3回目は5人、4回目は7人と参加人数が多くなってきたのは嬉しい。

去年は50マイルに出場し、9時間53分で4位で比叡山マイラーになれた。当時、比叡山マイル完走した事でクラブ外のランナーに認知され、いろいろとランナー繋がりを広げる事が出来た。板垣といえば、比叡山マイル4位ランナーである、代名詞としてトレイルランナー間の紹介等に使ってもらえた。それが更新されたのは、この四月に奥三河パワートレイルを優勝でき、紹介の代名詞は奥三河優勝ランナーに変わった。奥三河の優勝は誰も予想しておらず、私自身も勝ててビックリしていた。そういう意味では奥三河パワートレイルは気楽に走れたのだが、今回の比叡山50マイルは、奥三河の結果を経て、周囲の期待が高まっていた。もちろん、優勝できるねと言われても、いやぁどんなランナー出てるか分からないので…と謙遜する。一部の方からは、奥三河と比叡山制したら世界が変わるよとまで期待をしていただいていた。

さて、事前の参加有力ランナー情報はどうか、一番に上がるのが、同じ滋賀県の西村広和さんである。西村さんは、先の京都マラソンでも2:29を叩き出している事もあるが、それ以上にトレイルの実績が半端ない。大体出るレースは優勝され、信越五岳トレイルでは110キロ部門を11時間で優勝されていて、トレイルラン雑誌にも紹介されたり、最近ではトレイルラン講座に講師として活動もされている。今回は招待選手として参加される。
また、去年の50マイルチャンピオンの小寺晃弘さんも当然参加される。小寺さんもフルマラソン2:30を切るランナーであり、去年の50マイルではダントツ優勝されている。
若手の成長株では、竹村直太くんの存在が怖い。同じくフルマラソンでも2:30で走るランナーで、六甲キャノンボールや京都マウントチョップというトレイルラン草レースで優勝している。竹村くんが怖いのが、今年の正月に外部チームイベントの音羽山バーティカル競争(長等公園から音羽山山頂までの走破スピードを競うもの)で、ダントツのスピードで優勝しており、私自身も4分も差をつけられて全く歯が立たなかった苦い記憶がある。あと、去年の比叡山マイル5位で、先日のびわ湖毎日マラソンに出場し、2:25で完走する神戸からの参加の草野信洋さんのスピードも侮れない存在である。

と事前のランナー情報だけでも一流選手が揃っている。中でも一番怖かったのが、やはり実績ダントツの西村さんだろう。しかしながら西村さんと普段から少し接する機会があるが、調子は良くないと聞いてきた。しかし、他の知り合いから調子が悪いといいながら本番勝ってしまうのが西村さんらしい。その為、その不調情報の真偽は不明。前年優勝の小寺さんに関しては最近の調子はそこまで良くなさそうであり、奥三河では上位でゴールも難しかったようである。残りの竹村くんと草野さんに関しては万全の調整で本番に来るだろう。

さて、いよいよレース前日になり、カーボローディング込みのあっさり系の晩ご飯を食べる。奥三河・上田スカイレースと前日晩ご飯に、はま寿司を食べ優勝出来た。そのジンクスからか今回もはま寿司をお腹いっぱい食べる。必要なものを用意し、レース中携行する荷物は最小限を心がけた。そして早めに寝る。しかし、眠れない。本番のイメージが頭にこびりついて眠れない。奥三河のときも全く眠れなかった中、優勝出来たのだから、寝れなくても最悪大丈夫と割り切る。睡眠不足でレース当日の朝5時起床。さぁ、いよいよレースが始まる。

スタートは8:50。暑い、天気予報でこの日の最高気温は33度にもなるという。真夏に近い。スタートの根本中堂の標高は600mほどあるが、暑い。これは厳しいレースになる。比叡山の第一回大会もめちゃくちゃ暑かったようで、完走率がとても悪かった。今回もそれくらいになってしまうんではないか。水分を多く持っていきたいが、重くなるのは嫌なので、1リットル携行する。50マイルは全体で100人くらいだろうか。関門制限がとても厳しく参加資格のサブスリーランナーでも涙を飲む選手がほとんどである。マークしている選手の他、周りを見渡すと見つけたくない顔を見つけてしまった。愛知から参加の鈴木雄介さんである。去年のマイル2位で、伊豆トレイルジャーニーでも負けている。2回とも同じ位置を走って後半に大差をつけられて負けているので、鈴木さんにはトラウマを感じている。さぁ、どんな展開になるだろうか。

8:50マイルの部スタート。猛者ランナーの集まりであるから、周囲の注目度も高い。華やかにスタートし、長い旅路が始まった。予想していたのは、竹村くんと草野さん、あるいは小寺さんが先行していくだろうと。根本中堂から一旦比叡山山頂の大比叡まで登り、そこから京都側に下りていく。予想通り草野さん、竹村くんと先頭争いを繰り広げていた。下りでは二人の姿が見えたが、比叡アルプスの登りにさしかかると2人から遅れること2分くらいであろうか。その途中で、鈴木さんをパスする。その際少し話しかける。奥三河おめでとうございますと言っていただいたが、本日は後半抜きますよと宣戦布告される。この言葉が1日頭から離れないことになる。比叡アルプスの登りは小気味よく走って登る。第1エイドロテルド比叡に到着。事前の試走したタイムより3分ほど速い。暑いのに飛ばしている事に気づく。一旦落ち着こうと思い、エイドを通過。特に補給しなかったため、草野さんをパスして2位に上がる。

ここから比叡山高校グランドまで下りていく。竹村くんの姿は見えない。割と離されているようだ。草野さんとその後ろに西村さんが走ってくる。来た!西村さんだ。調子悪そうな様子は全くない。背中にピタリと付けられ、今何番手か、前をいく竹村くんには追い付きそうかと話かけられる。ここは2位集団で、竹村くんにはいずれ追い付きたいと話す。じゃあ、付いていくわと言われる。いやいや、後ろからプレッシャーをかけるより先に行ってくれと思った。しかもその表現はスピード的には余裕だけど、先を考えて一緒に竹村くんを追おうという事であり、やはり国内トップクラスランナーの西村さんだなと思った。比叡山高校まで下り、ここから再び根本中堂まで登る。ここまではまだ暑さは大丈夫だったが、このグランド横からの登りで、暑さをもろに感じる事になる。途中までは走れていたが、角度が急になると走れなくなった。角度が急だから、ペースダウンしたよりも、暑さが体を支配しだしたからペースダウンした感じである。後ろからの西村さんも苦しんでいたように見える。少し距離は離れた。ロープウェイ乗り場手前でランナーズの前田さんが応援してくれていた。事前に走ってるところ見たいから、登り箇所で観戦するわと言ってくれていたのだが、バテバテの状態で前田さんと会う事になってしまった。

登りも終えて、スタート地点の根本中堂に戻る。この時、草野さんに抜かれて3位に落ちた。第2エイドの延暦寺会館では、お蕎麦が提供されるのだが、暑過ぎて食欲がまるで無かった。草野さんから板垣くん蕎麦食べる?と聞いていただいたが、そんな余裕は全くなかった。50マイル行けるかな?と聞かれたので、これは無理じゃないかと正直思った。掛水をバシャバシャとさせてもらい、とりあえずすぐ出発。先頭の竹村くんはエイドで入れ違いだったため、3分くらいの差であろうか。ちょうど私と草野さんが通過する頃に西村さんが来た。西村さんは同じく3分ほど後を走っている感じ。

ここから50キロの後半コース。50マイルの私達はこの後半コースを二周しないといけない。草野さんは平地が速く、離される。青龍寺の長い下りで追い付いて、再び京都側に下り切って、横高山を登っていく。この横高山が比叡山最大のポイントと言われている。ここまで25キロ走ってきて、3回目の激登り。今回は暑さもキツく、他のランナーも相当苦しむだろう。草野さんに先行して走って登り始める。草野さんは全歩きを決めていると言っていた。少しでも離せて竹村くんに追い付けるよう出来るだけ頑張る。しかし途中から走るのがキツくなり、辞めた。自重した意味もある。歩きに変えたら、草野さんの歩きの方が速く、再び抜かれてしまった。この横高山の登り区間は、実はスマートフォンアプリで、レース前全走破者の区間ランキングで1位草野さん、2位板垣、3位竹村くんという順番だった。何か面白い。レースでも同じ位置を走っている。そのまませりあい地蔵給水所に到着。僕らが着くと竹村くんがいた。差は少し縮まっていそうだ。軽くハイタッチをして、竹村くんはすぐ出発した。水分補給を済ませて、草野さん、板垣の順で出発。後ろのランナーは来る気配がない。三つ巴の争いの状態。

横高山・水井山と短い距離ながら急登を超えて、仰木峠へと向かう。仰木峠へと向かう途中で草野さんをパスした。足が攣りそうな雰囲気でスピードが出せなくなっていそうだった。去年も草野さんは足の攣りに相当苦しんだようだ。今年は暑さもあり、そのリスクはさらに高くなる。仰木峠を越え、前にいよいよ竹村くんの背中が見えた。登りで少しペースが落ちている感じだった。一言だけとりあえず先行くよと交わして、ここは遠慮なく先を進ませてもらう。レースの33キロ地点でトップに立てた。ここからは、パラグライダーの発着所を経て滝寺に下りていく。

滝寺の第3エイドではバシャバシャと水をかけ食べれるだけ補給する。ここのソーダゼリーと味噌汁が美味しかった。食欲も問題なくなっている。暑さだけとの戦いである。エイドを出発すると地獄のコンクリート林道が待っている。ここはトレイルではないため、ずっと走らないといけない区間。直射日光がガンガン当たるのが、キツい。ただこの日参加している1,000人以上のランナーの先頭で走れる快感はたまらない。林道も順調に終える事ができ、仰木エイドを経て、棚田箇所まで下りていく。この時、足が攣りそうな気配がかなりやってきた。下り切った箇所に山からの水が溜まりになっている場所があり、暑さからドボンと浸かってみる。気持ちいい。生き返る。しかし、すぐ上がって走らないと。上がろうとした時に両足・お尻が同時に攣り、悶絶。上がろうとする度に攣るのでこの水場から這い上がれなかった。なんとか這い上がり、走り出す。危なかった。水場でDNF、救助待ちとか恥ずかしすぎる。棚田の太鼓会館付近を折り返し、横川へ向かっていく。ここで知り合いから応援を受ける。暑くてめっちゃキツいですー。するとほかにマイル出ているランナーは横高山から進めなくなったとか、リタイアがかなり出ていると聞いて、改めて過酷な暑さなんだと思った。40キロで約中間点。今日は消耗戦で、速さではなくいかに潰れないかが大事であると自分に言い聞かせる。

かき氷が美味しかった横川エイドを経て、根本中堂へ帰ってきた。マイルスタートの10分後スタートの50キロのトップランナーより速く帰ってこれた。根本中堂では拍手で迎えてもらう。ここでマイルのランナーが何人かいたので、DNFだったのだろうと察して二周目の30キロへ向かう。二周目は横高山の下からの登りがカットされるため、また気温も下がるであろうため、少し余裕があるのではないかと考えていた。去年の二周目は、50キロの後方ランナーを抜かせていけて、割と楽しかったイメージがあったからだ。二周目を走っていて最初はまだ余裕があったが、すぐに余裕を無くす。少しの登りでも息が切れてしまう状態。暑さも残っている。これは残り30キロ弱ツライなと思った。ただ、二周目の楽しみ・目標は、50キロに出ている市役所ランナーズメンバーを抜く事である。また知り合いの50キロ完走を目指すランナー(庁外ランニングクラブビワッシー所属)もどこで抜けるかが楽しみだった。

二周目のせりあい地蔵給水所に到着。人がごった返している。一周目はもちろん、がら空きだったのだが。そこでマイルの先頭来ましたーと声を掛けてもらう。50キロランナーからはビックリした表情をしてもらう。ここで板垣さん!と声をかけられたのが、市役所ランナーズの野崎氏だった(野崎氏はランナーズの副部長に就任が決まっている)。早くもここで出会うとは。野崎氏はそそくさと横高山を登り始めてしまった。ここで補給をし、野崎氏を追い掛ける。追い付く。追い抜く。完走大丈夫か?と聞くと危ないですねと。確かに頑張らないといけない位置である。二周目の仰木の山を息も絶え絶え抜けていき、2回目の滝寺の給水所へ。ここでボランティアをされている知り合いから、頑張れ!と冷たい水を飲ませてもらってかなりリフレッシュできた。また初対面の応援スタッフさんから
奥三河に続き、優勝ですね!と声をかけていただく。初対面の人にも認知されている事が嬉しかった。元気をいただき二周目の地獄のコンクリート林道へ。先ほどの優勝ですねと言葉を受け、そろそろ優勝への意識をしだす。後ろとの差はどれくらいなんだろうか。ここまで来る気配は全くない。誰が2番手なのだろうか。竹村くんがトップスピードからはダウンしていたから、西村さんが来るのか、それともそれ以外?ここで鈴木さんの後半抜きますよという一言が思い浮かぶ。過去2回も後半千切られている。トラウマが復活し、林道は鈴木さんの隠れた存在に追いかけられているようだった。この二周目の林道はさすがに全部走りきる事が出来ず、急なとこは歩いてしまった。キツい。

仰木エイドを経て、下りを調子良く走っているとここで、ランナーズの鈴鹿氏を発見。苦戦していそうな感じだった。ただ50マイルの先頭ランナーとして鈴鹿氏を抜ける事が嬉しかった。そして一周目這い上がれなかった水場へ到着したが、もちろんスルー。棚田折り返し地点でスタッフの方に後続の情報分かりますか?と質問する。2位はまだ先ほどの仰木エイドに着いていないからダントツですよと聞く。これはありがたい情報。安堵する。ここで、また知り合いから応援受け、イチゴをパクパク食べる。ありがとうございます!と出発する。知り合いはもう優勝を確信してくれているみたいだった。

横川への登りを全歩きで登り、最終横川エイドへ到着。ここを超えるとあと残り5キロ。下り3キロを順調に走り、最後2キロの登り。経過時間を見ると去年よりもゴールタイムは良くなりそうである。2キロの登りもほぼ全歩き。苦しかったが優勝を確信していたので、時折ニヤける。延暦寺会館横のコンクリート激坂を登るとそこには知った顔がズラリと待っていてくれていた。ビワッシー・シガウマラと所属するチームメイトが総出だった。ビワッシーメンバーは一緒に伴走してくれて、シガウマラメンバーとはハイタッチを交わした。市役所ランナーズメンバーもゴールに揃っていた。そして、50マイルトップランナー板垣渚と名前を何回も呼んでもらって栄光のゴールへ到達。長くて過酷な比叡山50マイルを制する事が出来た。鏑木さんに優勝インタビューをしてもらい、木製の完走レリーフと優勝プレートをいただいた。やり切った。とても長い一日だったが、あっという間に終わった不思議な感覚、振り返ると贅沢で幸せな時間だった。一人のランナーがこれだけ声をかけてもらえる中で良い結果を残せて本当にこの日に備えて日頃積み上げてきて良かったと思う。応援・サポートしていただいた方々には感謝しかありません。

その後2位には、竹村くんが飛び込んできた。タイム差は約27分。3位はなんと西村さんだった。西村さんは二周目のタイムが私のタイムより20分も速い。やはり、恐ろしいランナーだった。1位、2位、3位とシガウマラメンバーが占めた。4位は草野さんだった。恐れていた鈴木さんはDNF、前回チャンプの小寺さんもDNFだった。50マイルを完走できた人は16人。かなり低い完走率だ。過去2年連続で50マイル完走しているランナーも今回DNFとなってしまった。恐るべし50マイル部門。ただ完走レリーフを手に出来た喜びは相当なものである。これを持っているだけで、トレイルランナーの間では一目おかれることになる。制限時間ギリギリとなると辺りは真っ暗になるのだが、制限時間ギリギリ完走でも50マイルランナーは讃えられる。今回DNFとなったランナーが数多くおられるが、もう既にこの悔しさ晴らすべくと来年の再チャレンジを表明されている。3位の西村さんも来年は春のメインレースにして、優勝を奪いにいく宣言もされている。来年はディフェンディングチャンピオンとして比叡山50マイルに挑みたい。

50キロ部門では、鈴鹿氏がその後ゴール。見事な完走である。早い段階で抜いた野崎氏は惜しくも完走はならなかったが、最後まで諦めない姿勢が次に繋がると思う。そして、50キロ完走を目指す知り合いのビワッシーランナーも見事50キロ完走されていた。この方の普段の努力量を知っているが為に、私もとても感慨深かった。早朝3時台からジョギングしたり、昼休みに階段走をしたり、比叡山コースを何度も試走したりと。決して速くはない方ではあるが、完走という目標に真摯に取り組み、一切の妥協をしない姿勢は本当に尊敬していた。ゴール後それぞれ目標は違えど、達成できた同士で堅い握手をしてお互いを労った。お互い感動し合ってる感じで素敵なひとときであった。

以上、長々と読んでいただきありがとうございます。これを書いていて思うことは、比叡山ロスだなと。目標に向けて努力して、1つやり切ってぽっかり穴が空いた感じ。また新たな目標を設定して次のレースに挑んでいきたいと思います。

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