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ブドウの樹齢とワインの品質に関係があるように思える理由|Part 1.

ワインの味や香り、品質に大きな影響を与えると思われているブドウ樹の樹齢。高樹齢になるとワインの品質も高くなるとよくいわれます。ブドウの樹の樹齢が20年くらいになってくると収穫量が激減するために1房あたりの品質が高くなるため、というのがその理由とされています。

ところが科学的な検証ではこのようなブドウの樹の高樹齢化による収量の減少は確認されていません。むしろ樹齢が高くなるとブドウの収穫量が増える可能性のほうが強く指摘されているほどです。実は今までに複数行われてきた検証からわかっている知見の範囲においては、ブドウの樹の樹齢とワインの品質の間には相関関係はない、という結論が出ているのです。

しかしラベルに「古木 (Vieilles Vignes (V.V.), Old Vines, alte Rebe など)」の表記のあるボトルを飲むと、味や香りに明確な違いがあるように感じられることは少なくありません。これはどうしてなのでしょうか。科学的知見とは異なり、やはり樹齢はワインの品質になんらかの影響を与えているのでしょうか。

樹齢とワインの品質を巡る疑問を少しでも晴らすため、2つの記事でこのテーマを解説していきます。Part 1.では検証結果に基づくこれまでわかっている知見の確認をし、Part 2.では影響を与える要素として考えうるものを挙げつつ、その影響の範囲を検討します。

この記事はNagiと一緒に学ぶオンラインコミュニティ「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」に投稿された記事の一部を再編集したものとなります。
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