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障害とファッションデザインと私

NHK広報局/品川明由実ディレクターのnoteを読んで、私のしぼみかけた「障害とファッションデザイン」への思いが再びモコモコっと立ち上がる思いがした。

NHKディレクターがバラエティー番組「バリバラ」を担当してこれまで関わりのなかった障害を持つ女性たちと、共通の話題である「ファッションについて」話した事で自分の思い込みや新しい価値観に気づき、前より生きやすくなったという内容。

その中で、捻曲性骨異形成症という骨の病気で電動車いすユーザーのあずみんの話に興味がわいた。
身長96cmと小柄、かわいらしい雰囲気のあずみん。彼女が言った衝撃的事実。

うち、テレビに出てるとき、実はスカートはいてないよ

スカートを履いているように見えて、実は膝掛けのようにスカートをひざに乗せてウエストの両サイドを安全ピンで留めているんだという。
あずみんは着替えに介助が必要。楽屋では大変なので、この方法に辿り着いたということらしい。
スカートめっちゃほしいねん!
とnoteに書かれていた。
私服でもスカートは持っていないらしい。だからスカートが欲しい。

これまで2年間のバリバラ出演の間、誰にも気づかれずこのスタイルで通しているらしいが、私はそれを知って頭をポコーーーーンと叩かれた気がした。

私にも同じような経験があったからだ。

私は6歳のころ脊髄の手術をした。
どれだけの期間入院していたか覚えがないが、しばらく寝たきりの期間があった。
その間どなたかがお見舞いとして、その頃流行っていたスカートとスパッツのセット(80年代ファッションど真ん中)をくれて、
「退院して歩けるようになったらそれを履くんだ」
と私は楽しみにし、心の支えにしていた。
しかしいつの間にか母が誰かにあげてしまったのだ。
「どうせ着れないから」
ということだった。

腹が立った。

病気や環境のために着たい服が着られないなんて不公平だ。
私はその恨みを今でもずっと持ちながら服を作っている。(頂き物のスパッツは黒×グレーのボーダーだったことまで覚えている。怨念)


私が高校でデザインを学び専門学校でファッションデザインを学ぶころ、「ファッションにもユニバーサルデザインを」というコンセプトの本と出会った。
自分自身の経験(根深い恨みとも言う。)から、介護用の衣類ではなくて、障害があってもなくてもファッションを楽しめる服が作りたい。
そんな思いに駆り立てられて、学校の先生に紹介してもらった支援施設に居候させていただいた過去がある。
その時の事は前に書いたので、よかったらそちらを読んでいただければ。

その後はデザイナーとして企業で働き、9年ほどして独立してまた自分でものづくりを始めることになった。

自分で服を作るなら、やっぱりユニバーサルデザイン的な服が作りたいと思っていたけど、人の体は十人十色、いや、千人千色。
全員が1つの服を着て楽しめるファッションって、すごく難解。無理がある。
私にはできなかった。

そんな中でもダウン症のあっちくんご依頼のパンツが作れたのは嬉しかったこと。

プニュプニュのあっちくんのお腹にもキツくないウエスト寸法と、手に力が入りにくくても調整ができるウエスト紐と、あっちくんが選んだ柄の布と、ハンパ丈。
全てご要望にお応えして作った。

このパンツのパターンは細部に変更を加えつつ今も通常の商品として作って販売している。

本人が着たい服が着られること。
他のファッションとも組み合わせができること。
楽しく明るい気持ちで生きられること。
そういう服を私は作りたい。

あっちくんとあっちくんのお母さんが私にこのパンツを作らせてくれたことで、本当に私の作りたい服の真がわかった。

それでいうと、バリバラあずみんのご希望である

スカートめっちゃほしいねん!

について、私はそっぽを向けないのだ。

あずみんが履きたいようなスカートを作る事はそんなに難しいことではないはずだ。
ウエストに安全ピンで留めるより安全に着られるスカート。
それは健常者として生活する私にとってもファッションアイテムになる服として成立する。
働く車椅子ユーザーも20年前より増えているはずだし、もっと気軽におしゃれしたいって気持ちは健康的だ。
それが叶わないのはとっても不健康。不公平。いやだな。

自分の子供や、介護中の親にきれいな服を着せてやりたいのに、体などの事情でそうできない介護者の声を聞いたこともある。
体や環境の事情があっても着やすいスカートを作ったら、喜んでもらえる人がいるんじゃないだろうか。

お風呂に入って考えて、いても立ってもいられず、夜10時を過ぎてるというのに友人に連絡した。
友人は障害をもつ子供を育てている。

私「〇〇ちゃんってスカート履いてる?」
友「いや、履いてないよ。」
私「なんで?」
友「そもそも自分がスカートを履くタイプじゃないから、娘にも履かせてない。」
私「そっか。私もあんまりスカート履かないからなぁ。」
わははわはは。
私も友人も昔からボーイッシュスタイル。基本スカートを履かないタイプだった。

参考にならない話かと思いきや、そういうスカートがあれば冬場の防寒対策にもなるし嬉しいと思う人はいるかも。とか、卒業式の時の和装にも応用できたらいいよね、とか、そんな話ができたのでよかった。

私も友人も、日常で好きな時にスカートを履けるから、スカートを履かないという選択ができるのだ。
歩行に障害がある人に「ハイヒールを履いてみたい」と言われたことがある。
目が不自由な人に「服の色がわかってコーディネートの参考になるような印を服に付けて欲しい」と言われたこともある。
履きたいのに履けない、したいのに体の事情でできない、わかりたいのにわからない。だから余計にそれをしたい。
そう思うのは自然で健康的なこと。

そんな悩みを私が全部解決できるわけじゃないから、まずは私にできそうなスカートから。

プロトサンプルを作って友人の娘に着てもらうことにした。
彼女がスカートを履きたいと思っているのかどうかはわからないけど、手伝ってね。よろしくね。

いつかバリバラあずみんにも着てもらえるようなスカートが作りたいな。


ここしばらくはいつものギャラリーに出品するための作品作りがメインになっていて、こういうものづくりからは少し遠い感覚になっていたけど、久しぶりにこれだ!と思うアイデアが閃いた。

NHK品川明由実ディレクター、いいヒントをありがとうございました。
6月24日(木)Eテレよる8時~バリバラ見ますね。


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↓この2日後、バリバラ放送を見てからの私。



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