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マイクロノベル集 244「耳にご用心」

No.1393
「マスター、フラれた俺にぴったりな音楽を」悪魔が経営する喫茶店にそんなサービスはないよ。サンバでいい? 「踊るな」なんだよ、励ましてやったのに。じゃあ、たくさんの人々を狂わせた『暗い日曜日』を。「ごめん、俺が悪かった」人間は素直が一番だぞ。


No.1394
静かな喫茶店で紅茶をいただいていると心が穏やかになります。やべっ、リラックスしすぎて思わず天使の羽根を伸ばしてしまった。店内のスプーンがすべて床に落下。シャララン。「あら、いい音」女性がメモしている。音楽家かな? 著作権を主張しようかな?


No.1395
脱力検査を開始します。力を抜いて。声が聞こえたらスイッチを押して下さい。「君が買ってきた冷蔵庫の中のプリン、食べちゃった」はい、正常ですね。「実はあの指輪、中古品」あっ、力を抜いて! これは脱力検査だから!! すみませんすみません、もうしません。


No.1396
きっと人間は左右対称が好きなのね。だから右耳から入ってくる音は、左耳からも聞こえるはず……そう錯覚して存在しない声を聴く。右と左。わたしの声は二つに分かれ、別々の経路であなたを侵略する。初めまして。あなたの脳で生まれた新しい音だよ。



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