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マイクロノベルちょいす 050「夢だったのかも」

No.1212
目を覚ますと知らない駅にいた。そうか、電車の中で眠っちゃったんだ。ぼくは生まれて初めて海に来た。「この電車に乗れば帰れるよ」ありがとう。優しい駅員さんがくれたオレンジジュースは、少し潮の香りがした。これは、海が消えた国で聞いた話。


No.1232
昔々あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんはマグカップの中を見て、お婆さんは川へ洗濯に行きました。なにが入っていたかって? 桃から生まれた桃太郎だよ。常識だろ? マグカップの方? それはお爺さんじゃないとわからない。


No.1244
「どこにもいないの。さっきまでここにいたの。一緒にお話しして遊んでたの。信じてくれる?」信じるよ。でも、さっきじゃないんだよ。もう夢の国はお片付けは終わって、ヒツジさんだけが残ったんだ。そのヒツジさんも小さくなっておもちゃ箱の中へ。またね。


No.1251
道の途中で立ち止まる。『通行注意』背の高い草が生い茂って薄暗い。でも見通しがいいから注意する必要はないはずだけど。「止まってくれてありがとうよ」声がする方を見ると、小さな龍が地を這って草むらに分け入るところだった。冬が始まる頃の話。


No.1254
お腹が空いたらスープを飲んでね。お母さんはそう言って出かけた。ぼく、これ好きじゃないんだ。スープをマグに注ごうとして、びっくりした。中で一匹の魚が泳いでいたから。「飲み込みなさい」レンジでチンした。次の日の漢字テストで初めて満点が取れた。



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