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ナカさんの読書記録 「ぴりりと可楽!」吉森大祐

去年2020年11月、聖徳大学オープン・アカデミーの雷門小助六師匠の講義を受けた時にご紹介いただいた本です。テーマが「職業としての噺家のはじまり」だったので三笑亭可楽(山生亭花楽)の話が出たんですね。受講後すぐに図書館で予約しましたが人気の本らしく、なかなか順番が回ってきませんでした。年を越してしまいましたがようやく読むことが出来ました。

あらすじは櫛職人だった又五郎、趣味として天狗連で落語の腕を磨いていました。ある時上方からやってきた噺家が江戸で興行を打ち、それに刺激を受けて「江戸で初の職業落語家になるぞ!」と志して各地で修行して江戸に戻り成功を収める、といった感じですかね、簡単に言うと。
史実の初代三笑亭可楽(山生亭花楽)の詳細はWikipediaでどうぞ。

史実を基に青春小説・エンタメ時代小説風に描いた作品という感じでしょうか。著者の吉森大祐さんは時代物を得意とした小説家のようです。

気になった部分をピックアップ。
水戸徳川家の家老、山野辺彦左衛門の前で落語を披露することになった可楽。緊縮政策に批判的な山野辺は遊興娯楽を取り締まる江戸幕府をこう言います。「町人どもに楽しき暮らしをさせておかねば幕政は衰える。そのためには、娯楽を認めるべきなのだ。歌舞伎や相撲などの娯楽、出版、演劇。ひとびとが集まる中に、新しき仕事も生まれようなというものだ。」シチュエーションこそ違うけど、今コロナで自由に芸能が楽しめない世の中!このセリフはグッと来てしまいました!政府は芸能をもっと大事にするべきだ~と叫びたいです!可楽は水戸徳川家の前で「三題噺」を披露し、その芸を認めてもらうことが出来、名も山生亭花楽から「三笑亭可楽」に改め、念願の江戸に戻って職業噺家として活躍することになります。

江戸に戻った可楽。「江戸は変わったーー。(略)二年前はまだ、緊縮と静粛を実施した白河公の影響下にあった公儀幕閣の力が強く、町人はじめ息をひそめていた。しかし今は、もういい加減にこの息苦しい統制をやめてほしいという気持ちが町中に充満しているように見える、みな、自儘な暮らしを謳歌したくてたまらないのだ。」時代の流れと可楽、上手くタイミングが合いましたね。可楽の弟子の小鉄は書割を動かしたり道具を使った怪談噺を考案します。これはのちの圓朝の芝居噺の元祖のようなものでしょうか。2年前に下谷神社で初めて寄席を開いたけれど大失敗に終わった可楽。悔しさをバネに修業で一回りも二回りも成長して江戸に戻り、人気噺家になります。

可楽が修行の旅で出会った越ケ谷宿の場末の芸人の中に「全身桃色の服を着て、ひゃっはっはと奇声を発しながら殴り合う夫婦」って・・・林家ぺーさんパー子さんを思い出してしまった(笑)江戸時代にもそんな芸人さんホントにいたのかな!そして可楽が松戸にうつりライバルとして芸を競った謎かけ芸の春の淡雪の「整いましてございます」おおっ!ねずっちと同じセリフだ(笑)江戸から令和へ、200年たった今でも謎かけは人気の芸です。

テンポよく物語が進み、キャラクターも個性たっぷりに描かれてドラマ化したら面白そうだなぁと思いました。残念なのは若干落語については浅めかなと思ったところ。どちらかと言えば時代小説寄りかな、と思いました。おそらく史実と細かく突き合せればフィクションな部分もあるかと思います。それはそれで別として、エンタメ小説として楽しく読みました。表紙イラストもかなりイケメンですね可楽師匠。ドラマ化というよりはアニメ化ですね。


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