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「突っ張り棒」を再興させ、売り上げが倍増したリブランディングの成功事例

どうも!ブランドコンサルタントの中江です。

今日は「「突っ張り棒」を再興させ、売り上げが倍増したリブランディングの成功事例からブランドを再構築するポイントを学ぶ」というテーマでお話していこうと思います。

今回紹介するのは、「平安伸銅工業」という企業です。

1.平安伸銅工業について

日本で初めて「突っ張り棒」を開発し、最近もリブランディングに成功したことで、業績を伸ばしている企業になります。

画像出典:https://www.heianshindo.co.jp/howto/tsupparibou/bathroom-2/

平安伸銅工業は、1952年大阪市の十三で銅を加工する町工場としてスタートし、「祖父→父→娘」と親子3代で、時代の潮流に合わせ、リブランディングしながら繁栄してきた企業になります。

創業当初、日本は戦後復興期で、多くの人が戦争で家財を失い、誰もが安心して暮らせる住宅を大量に供給することが求められていました。

そんな中、創業者の祖父は、今やどこの住宅でも使われている、アルミの窓枠である、アルミサッシの製造技術と機械をアメリカから輸入し、日本中にアルミサッシを普及させました。

画像出典:https://hags-ec.com/column/what-is-almisasi-anyone-can-see-the-glossary-of-rinobe-glossary/

これまで窓枠は、大工さんが現場で木製のサッシを作っており、その作業が省略されたことで、アルミサッシは住宅の安定供給に大きな貢献を果たしました。

二台目のお父さんの代になると、アルミサッシの事業は成熟期を迎え、新しい事業へと軸足を移すことになります。

1970年代に、日本の住宅供給が落ち着きを見せ始めると、都市部への人口集中と手狭な住環境の改善が社会的な課題となりました。

そこで開発したのが、ネジやクギを使わずに収納空間を増やすことができる「突っ張り棒」という商品でした。

この突っ張り棒という商品は大ヒットし、ホームセンター等のチェーンストアの発展とともに、全国に普及していきました。

ですが、この繁栄も永遠には続きません。

「儲かる」と分かれば、多くの企業がその市場に参入してくるので、平安伸銅工業が開発した突っ張り棒の類似商品がたくさん市場に溢れるようになりました。

ネジやクギを使わずに収納空間を増やすことができる

という機能は、どこのメーカーの突っ張り棒も持ち合わせているので、熾烈な価格競争が起こり、平安伸銅工業の業績は最盛期の1/3まで減少しました。

市場には類似商品があふれ、既存の商品ラインナップでは簡単に差別化できない、そんな状況の中、2010年に、平安伸銅工業を継いだのが、創業者の孫娘・竹内香予子さんです。

画像出典:https://bnl.media/2018/11/Heian-Shindo-Takeuchi.html

竹内さんは、様々なリブランディングの施策を打ち、最終的には、売上を倍増させることに成功するわけですが、一体何をしたのか?。

2.リブランディングの成功のポイント

ポイントは3つあります。

2-1.ブランドコンセプトの再構築とブランドイメージの転換

まず、最初のポイントは、「ブランドコンセプトを再構築し、ブランドイメージの転換を象徴する商品を作ったこと」です。

ブランドが低迷する時の大きな特徴は、これまでのブランドコンセプトが陳腐化し、希少価値がなくなってしまうことです。

例えば、今回の場合、

ネジやクギを使わずに収納空間を増やすことができる、突っ張り棒

というコンセプトは、1970年代には、ニーズがあり、ユニーク性もありましたが、類似商品が市場に溢れるようになった現代では、ニーズはありますが、競合他社も同じ訴求をするようになるので、ユニーク性は無くなりました。

だからこそ、ブランドを再興するには、ブランドコンセプトも、時代にチューニングする必要があります。

平安伸銅工業はメインの商品・サービスは時代とともに移り変わりながらも、一貫してやってきたことは

アイデアと技術で暮らしを豊かにする

ことです。

では、突っ張り棒が普及した、現代の暮らしは、どんな社会なのかというと、物質的な豊かさが普及した結果、精神的な豊かさを重視するようになりました。

そんな精神的な豊かさが求められる時代における、「豊かな暮らしとは何か?」を考えていく中で、竹内さんが出した答えは

私らしい暮らし

でした。

画一的な便利さではなく、一人一人が自分らしく、自然体に過ごせることで豊かに過ごせる。

そんな時代に合った、従来の「便利」という概念を超え、人々の暮らしを精神的に豊かにしていくような、突っ張り棒を開発したい。

そんな想いのもとに生まれたのが「DRAW A LINE」という商品でした。

「DRAW A LINE」は、平安伸銅工業と、クリエイティブユニット「TENT」とのコラボレーションブランドです。

これまでは単に便利グッズとして扱われがちだった突っ張り棒を、暮らしを豊かにする「一本の線」として再定義し、そこからはじまる新しいライフスタイルを提案します。

この突っ張り棒は、見ていただければわかるのですが、従来の「収納便利グッズ」というイメージを大きく転換させ、どちらかというと

お洒落なインテリア

のような雰囲気があります。

もちろん、ただお洒落なだけではなく、突っ張り棒の機能を存分に搭載しています。

ベースアイテムに合わせるパーツは20種類あり、パーツを自由にカスタマイズして、デスクや照明、クロークなど自分らしい暮らしに寄り添うインテリアをつくることができます。

壁に突っ張るだけでなく、床にも据え置きができ、立体的な空間収納も実現できます。

収納の仕方は、自分次第なので、まさに「私らしい暮らし」を実現できる、間違いなく、新たな突っ張り棒でしょう。

リブランディングにおいて、まず、重要なのは、時代に合わせて、私たちは改めて、

どんなブランドなのか?

と再定義することです。

そして、その新たに定義したブランドコンセプトを象徴する、代表的な商品を作ることです。

リブランディングとは、すなわちブランドイメージの転換な訳ですが、ブランドイメージの転換は、商品・サービスを通じて起こります。

どれだけ概念として、ブランドコンセプトを刷新しても、それを具現化した商品を作らなければ、ブランドイメージの転換は図ることが出来ません。

これがまず一つ目のポイントになります。

2-2.情報発信のスタート

次の2つ目のポイントは、「突っ張り棒の情報発信を始めたこと」です。

代表の竹内さんは、現在、Youtubeを中心に、「突っ張り棒博士」という肩書きで、突っ張り棒の活用方法を動画コンテンツにして配信しています。

この情報発信というのはめちゃくちゃ大切なことで、自社の認知度が上がるだけでなく、何よりも、

突っ張り棒を通じて、暮らしはこんな風に変わる

ということを視聴者が想像できるので、購入に繋がりやすくなります

特に、レッドオーシャン化し、機能的価値で差別化がしにくくなっている業界では、情報発信は非常に有効な施策です。

情報発信という活動は、役立つコンテンツを提供することを通じて、見込み客との関係性が縮まるのです。

人は、機能や価格がほとんど同じなら、関係性が近い方を選びます。

全く見知らぬ人がやっている美容院と、親友がやっている美容院があって、技術力や料金が変わらないなら、親友がやっているお店を選びます。

また、この「突っ張り棒博士」のコンテンツは、メディアでも取り上げられ、竹内さんは、日テレの「スッキリ」やテレビ朝日の「グッドモーニング」などにも出演を果たしています。

これによって、さらにブランドの認知度を拡大させることに成功しています。

もちろん、誰もがマスメディアに取り上げられるわけではありません。

では、なぜ、竹内さんは、マスメディアにも取り上げてもらえるになったのかというと、コンテンツに「公益性」があったからです。

「突っ張り棒を活用することで、暮らしの中の収納の問題が解決できる」というコンテンツは、世の中に広まれば広まるほど、助かる人が大勢いるのです。

だからこそ、メディアも取り上げてくれるのです。

また、コンテンツ配信を通じて、新しく生まれ変わった、ブランドの背景や価値観を伝えていくことによって、ブランドイメージの転換を図っていくことも可能になります。

なので、リブランディングを図る際は、「公益性があるコンテンツ」をブログやSNSを通じて、配信できないかを考えてみることが大切です。

2-3.既存顧客のコアコミュニティの構築

3つ目のポイントは「既存顧客のコアコミュニティを作ったこと」です。

平安伸銅工業のYoutubeチャンネル「突っ張り棒研究所」には、竹内さんだけではなく、「突っ張り棒マスター」という人たちが出演しています。

この方達は、平安伸銅工業の活動に共感し、一緒に突っ張り棒文化を普及していく、仲間のような存在です。

以前の記事で、ブランドのアンバサダー制度について解説しましたが、まさにアンバサダー的な存在ですね。

お客さんよりも、もっと関係性が近い存在です。

この突っ張り棒マスターになるためには、突っ張り棒マスターの認定講座を受講し、正しい知識を身につけた上で、試験に合格する必要があります。

画像出典:https://www.heianshindo.co.jp/news/tsupparimastaer_211119/

晴れて、突っ張り棒マスターになった後は、SNSで活動を紹介してもらえたり、テレビや雑誌の取材に出演できたり、突っ張り棒マスター限定のLINEコミュニティ等に参加できます。

突っ張り棒マスターになる人は、もちろん正しい突っ張り棒の知識を身につけたいという方もいますが、整理収納アドバイザーを本職でやられている方が多く、自身の活動の幅や認知度を広げていくことにもなりますし、お互いにとってウィンウィンの関係ですね。

そして、平安伸銅工業は、この突っ張り棒マスターと定期的に、Zoomミーティングを行い、そこから、突っ張り棒に対する要望などのリアルな顧客の声を引き出し、既存商品の改善や、新たな商品開発のアイディアに繋げています。

画像出典:https://ameblo.jp/katasuku-2020/entry-12687842671.html

この突っ張り棒マスターは、整理収納アドバイザーとして活動している方が多く、実際に収納に困っている人たちと日々接しているので、そういう人たちの意見を直接聞くことができる機会は非常に貴重なのです。

机上の空論ではなく、実在するターゲットの人たちの感覚や価値観と常に触れることができるので、どんな施策をやっても外れない施策を打てるようになります。

平安伸銅工業には、こうしたブランドを支えてくれる、強固なファンコミュニティがあるからこそ、リブランディングは成功しました。

最後に

ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。

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