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上場企業が気にする「のれん」の償却とは【M&A日記】

買収企業が上場企業の場合、価格を決める上で「のれん」が大事になってくる。

のれん=株式の取得価額-対象企業の純資産

例えば純資産3億円の会社を5億円で買収すると、3億円は株式として、差額の2億円がのれんとして、それぞれ固定資産に計上されることになる。

国内の会計基準では、のれんは減価償却の対象となる。
「20年以内のその効力がおよぶ期間にわたって行う」ことが定められていて、一般的には見込まれる投資回収期間で償却していく。

私が最も得意とするサービス業のM&Aにおいては、のれんの償却はおおむね5~10年程度で設定されている会社が多い。

さて、何故のれんが価格に影響するのか。

上場企業が会社株式を取得して子会社化した場合、子会社は連結決算の対象となる。
即ち、子会社の業績を親会社が取り込むということだ。
なので、数字だけの話で言えば、高収益な子会社は親会社に貢献することになり、採算の取れていない子会社は親会社の足を引っ張るということになる。

例えば年間の利益が3000万円の会社を買収する。
そのときののれんは3億円だとする。
5年で償却するとすれば、年間の償却額は6000万円。
子会社は親会社に3000万円利益貢献するが、親会社には償却6000万円が生じるため、その利益は全て相殺され、更に3000万円赤字が増える。
本件M&Aによって、買収した会社は償却までの5年間に渡って毎年3000万円ずつ業績を落とすことになる。

のれんの償却を投資回収期間で設定するなら、5年で3億円ののれんを回収できないといけないのに、実質は回収に10年かかる投資をしてしまっていることになる。
これを「のれん負け」と言ったりする。

のれん負けを回避するように買収側としては価格を決めることが多い。
なので、本事例であればのれんは1.5億円までしかつけられないということだ。

ということなので、買収企業ののれんの償却期間を把握できると、いくらぐらいまでなら買収できるかというイメージをつけることができる。

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