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美容サロンの倒産→利用者トラブルは何故起きるのか?【M&A日記】

脱毛や美容サロンの倒産ニュースを今年はよく目にした。
つい先日は「銀座カラー」を運営する会社が破産手続きを始めたというニュースがあったし、脱毛サロンの倒産は今年、過去最多になったらしい。

そして、決まって出てくるのが利用者トラブル。
利用者に回数券などで前払いさせているケースが少なくなく、倒産によって利用者は支払ったにも関わらずサービスを受けられなくなるという問題だ。

何故このような問題が発生するのか。
個々の会社の事情を私は知らないので、過去に私が会社売却の相談を受けた美容関係の会社を一例として推察してみる。

随分前になるが、エステ店を複数店舗展開する会社から譲渡の相談を受けた。
当時私は受託せず、しばらくしてからその会社のHPはなくなっていた。
実はその会社は黒字だった。
しかし、キャッシュフローは完全に火の車だった。

数字等は全く覚えていないので仮で説明する。
例えば1年分のエステ代=10万円を一括で払ってもらうとする。
その会社は、その時点で10万円を売上計上してしまう。
単価が高くなるので、PL上はとても儲かっている会社に見える。

その儲かったお金が適切に使われれば良いが、儲かった儲かったと思って社長の給与を増やしたりし始めると、問題が生じる。

例えば決算月が12月だったとして、7月に1年分=10万円の売上を計上してしまうとする。
このお客さんには来年の6月までサービス提供をしないといけないが、10万円は全額今年の決算で計上するので、翌年の6か月分は売上0でサービス提供しないといけなくなる。
そうすると、来年の人件費等の経費をどうやって払っていくか。
先に支払ってもらった10万円から取り崩せばよいが、もしそのお金が既に社長の給与などに使われてしまっていたら?
決算を跨いでいるので、税金も発生しているはず。

お金が必要なので、お客さんを更に増やし続けていく必要がある。
しかし、当然そんなうまくいくわけもなく、どこかでキャッシュフローに問題が生じる。
そして、それに拍車をかけるのが、もっと多くの前払いをしてもらおうという対応をしてしまうこと。

現金が100万円足りないとして、2年分の前払いをしてもらって20万円×5人でお金を集めようとやる。
今度は2年後の売上まで先取りしてしまうので、更に首がしまることになる。

結果会社が倒産すると、前払いした利用者たちは支払った分のサービスを受けられずじまいとなる。

このように前払いを受けている事業で、発生主義ではなく、現金主義で売上計上してしまうと、まず確実に会社はおかしくなる。
一方で、発生主義でやっていれば問題ないかと言えば、それもそうでもない。
現金主義でやってしまうと、PL上ではすごく儲かっているように見えてしまうということで、問題を助長させるが、発生主義であったとしても、結局はその前払いで受けたお金の使い方を間違えれば同じことになる。

前払い金で例えば新規出店して、それが失敗すればたちまち同じ状態に陥るのだ。
なので、前払い金はあくまで預かっているお金として、発生主義で計上される前では手を付けられない状態にしておくということが必要だと思われる。


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