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評価によく使われるEV/EBITDAマルチプル、何故よく使われる?【M&A日記】

EV/EBITDAマルチプル。
マルチプルというのは単に倍率のこと。
EVをEBITDAで割って何倍になるか?という計算式、評価方法だ。
この倍率が高いほど、事業価値が高い、高く買収した、ということになる。

ここからは計算式の説明なので、とてもややこしい。
ややこしいのが嫌いな人は無視して、後半まで飛ばしてほしい。

【計算】
EVというのはEnterprise Valueの略で、直訳すれば企業価値。
EBITDAはEarnings(利益) Before Interests(利子),Taxes(税金), Depreciation and Amortization(減価償却費と償却費)の略。
基本的には減価償却前営業利益という訳で問題ない。

なので、企業価値を減価償却前営業利益で割って、何倍になるか?という計算式。

では、EVがどうやって計算されるかというと、株価+純有利子負債-現預金(現預金同等物)。

例えばM&Aで会社の株100%を10億円で譲渡したとすると、これが株価。
譲渡した会社の純有利子負債(一般的には借入とリース)が5億円、現預金が3億円だったとすると、EVは10億円+5億円-3億円=12億円。

対象会社のEBITDAが2億円だとすると、EV12億円÷EBITDA2億円で、マルチプル=倍率は6倍ということになる。
ちなみにこの6倍というのは中小企業のM&Aで言えばとても高く、実現はなかなか難しい。

ファンドは基本的にほぼこの評価方法を用いる。
昨今は事業会社などでも、この評価方法を用いられることが多くなってきた。
概ね2~5倍程度で買収したいというのが相場観。

【後半:この計算方法の意味は?】
この計算方法が用いられている理由は、比較が容易だから。

上述したように、中小企業のM&Aは概ね2~5倍の倍率(マルチプル)で買収されているので、それが中小企業M&Aにおける相場だ。
もちろん業種や企業によって変動はあるものの、実態として、殆どのM&Aはこの相場内に収まっていると思う。

なので、この計算方式を用いれば、いくらまでなら5倍以内、すなわち相場内に収まるかがすぐにわかる。

このような計算方法を「マーケットアプローチ」という。
みんなと同じような価格で買おうということなので、みんな=市場=マーケット価格から評価(アプローチ)する。

ということなので、よくよく考えればこれって会社の評価とは違わないか?ということになる。
他と比較して、みんなこれぐらいだから、うちもこれぐらいか、という計算でしかない。
じゃあどこに自社ならではの評価が現れるかというと、2~5倍という幅の中でどっちに振れるかだ。

2倍で評価されるなら、みんなと比較しても低いほう。
希少性が少なく、高く買うメリットがないと買収側に見られているということ。
5倍で評価されるなら、他多くの企業と比べて魅力が大きいと捉えられている。
一定の希少性があり、それを手に入れるためには多少高く買うのも致し方なし、というような買い手の捉え方。
そして、もし5倍を超えた場合は、極めて魅力的で希少性が高く、全体の僅か0.1%ぐらいしか得られないような評価を得られた、という感じだ。

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