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【旅の記憶 オーストラリア編】89通りの長い一日(prologue)

その日、私はシドニー近郊の町にある一軒家のダイニングで、
空から降ってくるものを唖然として見ていた。
それらは大きいものでは大人の拳大の大きさがあり、不透明な白い色をしていた。
目の前の中庭は芝生に覆われていたが、あっという間にそれらに覆いつくされ、緑色だった地面は白一色に変わった。
それは私が3ヵ月のオーストラリア一周一人旅をスタートさせて2日目の夕方に起きた、突然の雹の襲来だった。

さすがに地元でも滅多にない現象だったようで、翌日の新聞にはこのことが一面に写真入りで掲載された。
幸い怪我をしたという話は周りでは聞かなかったが、町にはボコボコにへこんだ車が溢れ、傷んだ花が安価で売られた。

私にとって、この雹事件はオーストラリアという大陸の自然現象の計り知れなさをしょっぱなからまざまざと見せられたような
鮮烈な印象を残す出来事となった。

とにかく自然がたくさんある場所へ行きたい。
オーストラリアを選んだのには、そんな理由も大きかったのだが、2日目でこれである。
一体どんなことが待ち受けているのだろう。
私は不安と期待がないまぜになった気持ちで、ただただ氷の塊を見下ろし、立ち尽くしていた。
外じゃなくてよかった。

つぶてのように襲来する雹

【旅の記憶】はこれからしばらく、
オーストラリアの旅のことを時系列で綴っていきたいと思います。
旅をしたのは2005年の2月から4月の89日間。
古い話で恐縮ですが、ちょっとした隙間時間に旅気分を感じていただければ幸いです。
ご自身の旅の参考にと思ってくださる方は、どうか併せて最新の情報をお調べくださいませ。
いろいろ変わって、きっともっと、概ね便利になっているはずです。

経路は、大まかにこんな感じで、大陸を時計回りで回りました。

途中、他の町に立ち寄ったり、日帰りツアーに参加したりもしています。
移動手段は、東側は主に列車、大陸横断も列車を使い、
移動しにくい西側及び内陸は、飛行機とキャンプツアー(バス移動)を使いました。

それでは、詳しくは本編にて。
更新頻度は相変わらずゆっくりとなる気配が濃厚ですが
どうぞ雄大な大陸と、ちっぽけな私の右往左往をご堪能いただければと思います。

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