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脊椎の屈曲は椎間板損傷をもたらすか?(エクササイズによって椎間板損傷が起こるのは、疲労が適応によるリモデリングの速さを上回った場合であり、その際の圧縮負荷が約2,000Nである)

腰椎の屈曲のバイオメカニクス

脊椎のバイオメカニクスとその椎間板の病理への影響を説明するために、動物や人のin vivo(生体内)試験やin vitro(生体外・ガラス器内)試験、さらにコンピューターを利用したシミュレーションモデルなど様々な研究が行われてきました。

特にin vitro研究では、反復的な腰椎の屈曲が、椎間板ヘルニアの形成(繊維輪膜の境界の外へ椎間板の一部が突出する)と脱出(繊維輪を突き抜けて髄核が膨れる)の主要なメカニズムとみなされています。

その理由は、髄核が内側から繊維輪の最も弱い部分である後部外側へ向かって脱出するにつれて、病態が悪化することを示すエビデンスがあるためです。

脊椎椎間板への力学的負荷

遺伝的要因が椎間板の変性に非常に大きな影響を及ぼすため、脊椎の回復能力を超えない範囲で軟部組織を強化する適応をもたらすために十分な量、強度、頻度を正確に知ることは困難であり、組織への力学的負荷には健康な椎間板の維持を容易にする「安全な範囲」が存在するとの理論があります。

力学的負荷が脊椎の圧迫に関係することのエビデンスは、この理論を支持しています。

脊椎のバイオメカニクス

脊椎のバイオメカニクスに関するin vitro研究のうち、クランチに応用可能な研究の大部分は、豚の頚椎をモデルに用いられており、これらのモデルでは、ダイナミックな屈曲と伸展のモーメントを組み合わせて連続的な圧縮負荷を加えられる特殊な装置に、脊椎可動セグメント(椎骨-椎間板-椎骨)を取り付け、全屈曲回数が4,400回から86,400回までの範囲のどこかで、圧縮負荷がおよそ1,500Nに等しくなります。

Axler&Mcgillによると、基本的なクランチのバリエーションは、圧縮負荷が約2,000Nであることが明らかになっています。

エクササイズセッションを1回行なった後の脊椎組織は、次のトレーニングセッション後の脊椎組織は、次のトレーニングセッションまでの回復が可能であり、それによって椎間板のストレスが軽減され、構造がリモデリングされる余地があります。

エクササイズによって椎間板損傷が起こるのは、疲労が適応によるリモデリングの速さを上回った場合ですが、それは負荷の強度、負荷の急激な増大、さらにトレーニングを行う人の年齢と健康状態に依存しています。

ダイナミックな脊椎のエクササイズを各人の椎間板-負荷能力を超えない様式で行うことを前提とすれば、エビデンスは、支持組織のプラスの適応が起こることを示唆していると思われます。

この主張の裏付けとして、Videmanらは椎間板の病変をもたらす可能性が最も低いのは適度な中程度の身体的負荷であり、最も大きな退行変性は、きわめて高強度の活動と不活動とで起こることを明らかにしました。

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