フットボールには勝敗がつきものである。
レギュレーションによっては引き分けがありえても、基本的に勝敗がつくのがフットボールである。
この1週間、勝者と敗者から生まれた2つの言葉に心が揺らされたので、少し紹介したい。
1つ目は大分トリニータの片野坂監督の言葉である。
J2に降格が決まりながら挑んだ天皇杯決勝。
結果として浦和レッズに敗れ去った。
だけど、敗れた直後のチームに向けた片野坂監督の言葉が心に響く。
天皇杯はJリーグのチームにとって、同じメンバー・スタッフで戦う最後の試合である。この大会が終われば、チームは解散し、移籍や引退等、新たなチームに生まれ変わる。
そういう特別な意味を持つ天皇杯。しかも、決勝。
悔しさしかないはずなのに、現実をしっかりと認識した上で、悔しさも含めた全てを受け止め、次を見据える。
監督としての覚悟とリーダーシップを感じさせてくれる言葉である。
2つ目はクリアソン新宿の井筒キャプテンの言葉である。
先日、JFL(J1から数えると4つ下のカテゴリー)と地域リーグとの入替戦が行われた。
地域リーグを勝ち残ったのがクリアソン新宿なのだが、去年までは入替戦は存在していなかった。地域リーグを勝ち抜けば自動で昇格できていたはずなのに、コロナ禍での運営の関係もあり、自動昇格ではなく入替戦を戦うことになった。
しかも、アウェーで引き分けだとJFLに上がれないというレギュレーション。
チーム内に色々な感情が渦巻いていたことは想像に難くない。
そんな中、井筒キャプテンが試合前のミーティングで次の言葉をメンバーにかけた。
一発勝負で浮足立つだろうメンバーに向けて、「ベストを尽くす」ことは技術であり、自分たちはずっとその技術を磨いてきた。だから、今日もベストを尽くせるはずだ。
この言葉がチームを落ち着かせ、エンジンをかけたのは間違いない。
そして、ベストを尽くし、見事にJFLの昇格を果たしたのである。
フットボールでは90分の後に、勝者と敗者が存在する。
ただ、言葉の力によって勝者にも敗者にも単なる試合以上の意味や価値をもたらすことができる。
これが、フットボールの魅力の一つなのだと思う。
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