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【文脈】(コンテクスト)という【捉え方】(第5回)

いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。

私、先日より【文脈】という【概念】で、【創作】とそれを取り巻く【環境】について【考察】を巡らせております。

前回は『【広報】を含めた立ち回り』という観点から【文脈】を【考察】してみました。もちろん【広報】に限らず、自【作品】へ盛り込む【提案】のヒントを得るなど、【文脈】を意識する利点は多くあります。

もちろんこの『【文脈】という【概念】』、役に立つのはこれだけではありません。
 世界に多々存在する【潮流】、つまりは『多重並列で進行する事態』を【考察】する上で利点があろう――と、今回はそういう考え方をご紹介します。よろしくお付き合いのほどを。

さてこの【文脈】という【捉え方】、何も立ち回りだけにしか使えないわけではありません。【現実(リアル)】世界に存在するなら、創作の【作品】にも【原理原則】として取り込める道理。

何かと申せば、【文脈】は『文化的【潮流】』に限らず、『【作品】内に存在する【潮流】(人や物事を含め多重並列のもの)』という切り口でも存在し得る――というわけです。【作品】内で描く場合も【文脈】は『文化的【潮流】』と同様に多重並列で、『物事が複数の【文脈】に同時に所属・接触し得る』ことになりますし、同時に『【文脈】は互いに接触・合流・分岐していく』ということになります。

ここで【文脈】が多重並列で存在する――という【実例】を。

まず、【文脈】は【コンテクスト】(Context)と英訳されますが、ここから【ハイ・コンテクスト】(High-Context)と【ロゥ・コンテクスト】(Low-Context)という【概念】が派生しています。参考記事を元にして私なりの理解を書き出しますと、以下の通りになります。

・【ハイ・コンテクスト】(High-Context):理解の前提となる背景情報(暗黙の了解、知識、カルチュア)が多く、【行間】を読むような(あるいは行間を読める前提の)コミュニケーションの状態・方法

・【ロゥ・コンテクスト】(Low-Context):理解の前提となる背景情報が少なくても通じるコミュニケーションの状態・方法

さて。
 こう並べてみると、『【ハイ・コンテクスト】と【ロゥ・コンテクスト】は相容れない概念』という【誤解】を抱かれがちではあります。
 「え、違うの!?」と意外に感じる方もいらっしゃるかとは予想しますが、よく思い出してみて下さい。小説によく触れる方々には馴染みの深いであろう【概念】が存在するのです。

『【行間】の【概念】』――これが、『【ハイ・コンテクスト】と【ロゥ・コンテクスト】が併存する証拠』として、私がご提示するものです。

文章表現において、『字面を額面通りに受け取る状態』、これが【ロゥ・コンテクスト】です。
 逆に、『字面だけでなく、そこに示された事実関係が暗に示す情報(つまり【行間】)までも含めて受け取る状態』、これが【ハイ・コンテクスト】ということができますね。
 以前に『【リアリティ】の舞台裏』にて語らせていただいたことになぞらえさせていただくなら、一見して誰でもすぐ読み取れる『【表層】の情報』や、それを通じたコミュニケーションが【ロゥ・コンテクスト】、逆に広く【文脈】や【行間】までをも読み込んで初めて【理解】できる『【深層】の情報』や、これを通じたコミュニケーションが【ハイ・コンテクスト】ということになります。
 そして上記の【ロゥ・コンテクスト】と【ハイ・コンテクスト】は、同一の文章で両立させ得るのです。この時、『【ロゥ・コンテクスト】という【文脈】と、【ハイ・コンテクスト】という【文脈】は、多重並列で同時に存在している』ことになります。

【実例】を、以下にお出ししましょう。『【リアリティ】の舞台裏』にてお出しした『ハッキングの手口を表す【描写】』です。

◎【実例・お題】:ハッキングの手口を、【リアリティ】を持たせて【描写】する

A「Z社のデータ・ベースな、抜かれたってよ」
B「だろうな」
A「驚かないのか?」
B「あそこは変な身内びいきがあるからな」
A「間抜けを突っ込まれた?」
B「どんな腕っこきでも、裏で足を引かれちゃな。どうせソースを余計なところに上げられたりしたんだろうよ」
C「そのことだけど……」
B「あー、頼むからその青い顔を向けるのはよしてくれ」
A「手口の情報でも?」
C「もっと悪いわ。こっちにアタックが来てるのよ」
B「勘弁してくれ。Z社が被害を把握してないとかそういう……」
C「気の毒だけど。アクセス元を手繰ったらZ社の関連会社が」
B「なあおい、逃げていいか?」
C「お願いだから、こっちの首まで絞めないで」

 この【実例】では、『【表層】の情報だけを捉えた場合は【何が起きているか】を意味する【ロゥ・コンテクストの表現】です。ですが個々の【事実】には【水面下でどう繋がっているか(この場合はハッキングを巡る周辺事情)】を込めてあり、そのような【深層】の情報まで読み取る時には【ハイ・コンテクストの表現】としても機能するわけです。

さて、今回は一旦ここまで。

『【行間】の【概念】』が、世界に多々存在する【文脈】のありようを写し取るのに向いている――ということは、これで伝わることと推察します。
 同時に『【文脈】という【捉え方】』は、世界にある『多重並列で進行する事態』を把握するにも向いている――とは、大いに予想できるところです。

次回は、『【文脈】の【概念】』を、『【物語】やその【作品世界】を描くために応用する考え方』についてお話ししてみましょう。

よろしければまたお付き合い下さいませ。

それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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