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2020年 31冊目『昭和16年夏の敗戦』


この本のタイトルを読むと違和感を持つ方がいるかもしれません。
日本が敗戦したのは、昭和20年です。
なぜ16年がタイトルなのでしょうか。

日本が太平洋戦争に突入した昭和16年当時、どう考えても、日本にはアメリカと総力戦をやり合う力はありませんでした。

アメリカと戦争することは明らかに無茶だったはずです。
最初から負けはわかっていました。
特に私たちは、未来から過去を見ているので、そのように思います。

ところがアメリカからハル・ノートを突き付けられ、中国からの全面撤退を迫られた日本の指導者は、どうしてもそれを受け入れるわけにはいかなかったのです。

これまで軍部がやってきたこと、言ってきたことを全否定することになるからです。

政治が軍部を納得させて戦争回避に向かわせるためには、軍部のリーダーでなければ務まらないだろうということで、東條英機さんが首相に選ばれました。

しかし、東條さんでは、結局軍部を抑えることができませでした。
そして太平洋戦争に突入し、日本は敗戦したわけです。

ところが、この敗戦を戦争前にシミュレーションした人たちがいたのです。
真珠湾攻撃と原爆投下以外のすべてを当てた人たちがいるのです。

平均年齢33歳、36人のエリートたちです。
軍隊、官僚から選抜された若者たちです。

総力戦研究所に集められたエリートたちは、日本がアメリカと闘った場合に、どのような結果になるのかをシミュレーションしたのです。

しかも、軍隊や官僚からの選りすぐりのエリートです。
出身母体のデータにアクセスできるのです。

彼らには、東條英機首相に報告する機会がありました。
そして、彼らは開戦後の初期段階だけ勝てるが、それ以降は兵站を切られて負けてしまうという報告をするのです。

日本には、戦力を動かすための油がありません。
その油をインドネシアを占領し、そこから補給する事で、確保するという絵を描きます。
しかし、その補給のための船が撃沈されてしまうのです。

結果、飛行機があったとしても飛ばせない状況になると予想したのです。
よく、あの時代にそのような提言をしたもんだと驚きました。

胆力半端ないですね。

しかし、東條さんは、聞く耳が無かったという描写になっています。
日清戦争も日露戦争も戦前は負けるかもという話だったが、勝った。
戦争とはこのようなシミュレーションでは分からないものだと説明したそうです。

去年組織は合理的に失敗するという本を読みました。
まさにそうですね。

猪瀬直樹さん、筆力が半端ないです。

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