見出し画像

2016年 70冊目『伊勢神宮のこころ、式年遷宮の意味』

企業が長期間に安定的に業績を上げ続けるためには、長期政権ではなく、定期的にトップが変わる方が良いのではないかと思っています。

その観点から定期的に遷宮している伊勢神宮に興味を持ち、この本を手に取りました。

伊勢神宮は1300年の間、20年ごとに同じ方法で建替え続けています。

新しいのに古いのです。

実は、この定期的な建替えは、もともとは伊勢神宮だけの専売特許ではありませんでした。

他の神社も定期的に建替えていたそうです。

ところが、他の神社は歴史の中で、徐々に建替えをやめていったのですが、伊勢神宮は1300年間愚直に継続し続けているわけです。

そうなんだ!と思ったポイントを残しておきます。

・伊勢神宮の「伊勢」は「伊勢市」という意味ではなく、「伊勢国」のことで、三重県の大半をの地域を含む意味で、伊勢神宮という場合は、この伊勢です。

・伊勢の語源は、「磯」のようです。日本書紀には、皇大神宮(内宮)を磯宮(いそのみや)と記した例もあります。

・神宮とは、天照大神の神威が正しく発揮されるよう神嘗(年に1回)を中心に月次(つきなみ)や神御衣(かんみそ)などの諸祭を繰り返し行うためのお宮の事。

・伊勢の神宮では年間1500ほどのお祭りが行われています。毎日朝夕に行っている行事もありますので、それだけで700を超えるわけですね。

・ヤシロはヤ(家、屋)シロ(代)のことで、仮にたてられるもの、臨時的なお祭りの施設です。

・ミヤは、宮殿のごとき大木造建築物です。

・日本書紀に雄略天皇元年(457年)伊勢大神の祠(ヤシロ)、

・天武天皇三年(674年)伊勢神宮(=ミヤ)と表記があります。

・建物がヤシロ(仮の建物)からミヤ(大建築物)に変化すると、毎年の神嘗(かんなめ)の祭りですがすがしく一新することができなくなりました。

・ミヤを造営するには、相当期間の計画と準備が必要です。そこで、何年に一度建替えるのか(後年「式年」と呼ぶ)が議論され、20年に1度と決められました。

・1回目の式年遷宮は持統天皇四年(690年)に行われました。

・それから平成25年(2013年)に62回目が開催されたわけです。

・式年をめぐる間違った諸説。(理由は省きますが、以下の説はすべて間違いです) 

1.尊厳保持説(常にすがすがしく尊厳なる姿を保つために実施している)

2.世代技術継承説(伝統技術を次代に継承するため古代では、神宮以外にもたくさん建てられており、技術継承の心配は不要)

3.聖数節(20という数字が吉数だから)

4.朔旦冬至説(旧暦では19年7か月ごとにめぐってくる朔旦冬至に祝宴をしていた。それに合わせた)

5.一代一宮説(天皇一代につき一式年)

すべて、古代史の中に正確な根拠を見つけようとしていないことに誤りの原因があります。

・式年については、延長5年(927年)に完成した延喜式に書かれています。20年に1度、殿舎を造替し、遷宮を実施すること、その経費は税で賄うこと。

・神宮式年遷宮は、1新しいお宮を建てること、2御装束神宝を奉納すること、3遷御(せんぎょ)のお祭りを行うこと という3つの柱でとらえられます。

以下の24のお祭りや行事を行いながら式年遷宮を行います。

ご造営前段のお祭り:01 昭和60年5月2日~08 62年6月(2年間)

01山口祭:式年遷宮の開始をつげる祭

02木本(このもと)祭:正殿の心柱を採る祭

03御杣始(みそまはじめ)祭:式年遷宮の重要なご用材を運び入れる行事

04御樋代木奉曳式(みひしろぎほうえいしき):ご用材を作所(工作場)に運び入れる行事

05御木曳初式(おきひきぞめしき):ご用材を作所(工作場)に運び入れる行事

06御木曳行事(第一次):ご用材を作所(工作場)に運び入れる行事

07仮御樋代木伐採式(かりみひしろばっさいしき):ご神体を新宮にお遷しする祭りの際に神体を仮にお納めする道具を作る行事

08御木曳行事(第二次):ご用材を作所(工作場)に運び入れる行事

ご造営後のお祭り:09昭和60年9月17日~24 平成5年10月4日(8年間)

09御船代祭(みふなしろさい):尊い衣服を納める木型容器を作る祭

10木造始祭(こづくりはじめさい):起工式

11鎮地祭(ちんちさい):新しくお宮を建てる新御敷地で最初に行われる祭

12宇治橋渡始式(うじばしわたりはじめしき):内宮へ入る橋を造り替えてわたり始める行事

13立柱祭(りっちゅうさい):重要な柱を建てる祭

14御形祭(ごぎょうさい):東西の束柱に円い形の穴をうがつ行事

15上棟祭(じょうとうさい):上棟の丁重なもの

16檐付祭(のきつけさい):正殿の屋根に萱を葺きはじめる祭

17甍祭(いらかさい):正殿に飾り金物を取り付ける祭

18お白石持ち:お白石と呼ばれる石英質の半透明・乳白色のものを御垣内へ運び入れる行事

19御戸祭(みとさい):正殿の扉が開け閉めがしやすいことお祈りする祭

20御船代奉納式(みふねしろほうのうしき):ご神体を納める容器を正殿に納める祭

21洗清(あらいきよめ):国の機関から神宮側に受け渡しが行われ、文字通り布で洗い清める行事

22心御柱奉建(しんのみはしらほうけん):神々にお遷り頂けるように造営の祭

23杵築祭(こつきさい):新宮の完成を喜び総出で宮地をつきならす祭

24後鎮祭(ごちんさい):新宮がいつまでも盤石であることを祈る祭

写真や図版も多く分かりやすい本です。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?