見出し画像

#11 気を付けて!災害時における地方公務員の時間外労働と健康管理

はじめに

皆さん、おはようございます。こんにちは。こんばんわ。
複業社労士地方公務員のNAKASHIMAです。今回は、「災害時における地方公務員の時間外労働と健康管理」についてわたくしの偏見ありきの記事です。


 前回は、災害時の地方公務員チカラについてわたくし偏見ありきの記事を書かせていただきました。

 災害時はとてつもない業務量が押し寄せてきますが、地方公務員のチカラ「真面目さ」「誠実さ」「実直さ」を発揮し、使命感を持って目の前の仕事を着実にこなしていく皆さま。尊敬します。誇りに思います。

しかし、そんな使命感をもった地方公務員の皆さんだからこそ、改めて意識していただきたいこと、知っていていただきたいこと。きちんとしていただきたいことをお伝えしたいと思います。

時間外労働について

 時間外労働ってしってますか?もちろん知っています。

(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について8時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法

 労働基準法第32条でいわゆる「1日8時間、週40時間」を超えて労働させてはいけないと規定されています。

(時間外及び休日の労働)
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

労働基準法

 一方で、労働基準法第36条では、労働者の過半数代表者との協定を行政官庁へ届け出れば、時間外労働をすることができるという規定があります。いわゆる36(サブロク)協定ですね。
 この規定によって、第32条で規定される時間を超えた時間外労働をすることが始めてできるようになってきています。

では、災害時の場合はどうでしょうか?36協定で定めた範囲内の労働時間をしていますか?
 いや、その前に地方公務員の皆さんって36協定をしていない自治体が多いのではないのでしょうか?

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第33条第3項 
 公務のために臨時の必要がある場合においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。

労働基準法

 上記、労働基準法第33条第3項の規定により、地方公務員は「公務のために臨時の必要がある場合」は36協定の手続きを必要とせずに、時間外労働や休日労働をさせることができると規定されています。
 
 ですので、地方公務員の多くは、36協定を締結せずとも時間外労働や休日労働をさせられていることになっています。

災害時の時間外労働について

 では、災害時の時間外労働はどんな取り扱いなんでしょうか?
 実は、平時の時間外労働の規定「労働基準法第33条第3項」を根拠にしているのです。要するに公務のために必要であれば、平時だろうが、災害時だろうが地方公務員の場合は、時間外労働を命じることができるのです。

各自治体でそれぞれ条例で規定

 上記の内容については、ほとんどの自治体で、条例によって規定をされています。地方公務員の皆さんも、一度所属する自治体の当該条例を確認したことがあるのではないでしょうか?
 以下、京都市の時間外勤務を命じる期間及び月数の上限等を参照してみます。

(時間外勤務を命じる時間及び月数の上限等)
第2条の4 任命権者は、職員(官公署の事業(労働基準法別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する職員及び同法第41条第1号に該当する職員に限る。以下この条において同じ。)に時間外勤務を命じる場合には、次の各号に掲げる職員の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める時間及び月数の範囲内で必要最小限の時間外勤務を命じるものとする。
(1) 次号に規定する職員以外の職員 次のア及びイに定める時間
ア 1箇月において時間外勤務を命じる時間について45時間
イ 1年において時間外勤務を命じる時間について360時間

京都市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例施行細則
©NAKASHIMA


(2) 業務量、業務の実施時期その他の業務の実施に関する事項の調整をあらかじめ図ったうえでもなお前号に規定する時間を超えて時間外勤務を命じる必要があると任命権者が認める職員 次のアからエまでに定める時間及び月数
ア 1箇月において時間外勤務を命じる時間について100時間未満
イ 1年において時間外勤務を命じる時間について720時間
ウ 1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間において時間外勤務を命じる時間の1箇月当たりの平均時間について80時間
エ 1年のうち1箇月において45時間を超えて時間外勤務を命じる月数について6箇月

京都市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例施行細則
©NAKASHIMA

2 任命権者が、特例業務(大規模災害への対処その他重要な業務であって速やかに処理することを要するものと任命権者が認めるものをいう。)に従事する職員(前項第2号に規定する職員に限る。)に対し、同号に規定する時間又は月数を超えて時間外勤務を命じる必要がある場合については、同項(当該超えることとなる時間又は月数に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。

京都市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例施行細則
©NAKASHIMA

3 任命権者は、前項の規定により、第1項第2号に規定する時間又は月数を超えて職員に時間外勤務を命じる場合には、当該超えた部分の時間外勤務を必要最小限のものとし、かつ、当該職員の健康確保に最大限の配慮をするとともに、当該時間外勤務を命じた日が属する当該時間又は月数の算定に係る1年の末日の翌日から起算して6箇月以内に、当該時間外勤務に係る要因の整理、分析及び検証(次項において「検証等」という。)を行わなければならない。

京都市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例施行細則
©NAKASHIMA

4 前項の規定により、検証等を行った場合は、任命権者は時間外勤務の縮減に向けた必要な措置を講じるものとする。
5 前4項に定めるもののほか、職員に時間外勤務を命じる場合における時間及び月数の上限に関し必要な事項は、任命権者が定める。

京都市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例施行細則

 いかがでしたでしょうか?労働基準法上には、時間外労働の上限時間の明記はありませんが、各自治体で制定する関連条例には明記されています。そして大規模災害時は、上限がなくなるということも。
 しかし、ここで使命感が目の前にある業務は必ず遂行する地方公務員の皆さんに知っておきたいこと。それは、あくまでも命ずることができるのは必要最小限の時間外労働であり、職員の健康に最大限配慮しなければならないことです。

 ちなみに、労働者の安全配慮義務というは、労働契約法に規定がありますが、この法律は地方公務員は適用外ではありますが、過去の裁判例などから、地方公務員についても、安全配慮義務があるというのはいうまでもありません。

©NAKASHIMA

まとめ

 非常時の対応業務に対応されている、また対応されてきた地方公務員の皆さん本当にお疲れ様です。自己犠牲の精神。絶対に最後までやり遂げる精神。絶対にあきらめない精神。誠実さ。どれをとっても誇りに思うことばかりです。
 だからこそ、非常時に自己の健康を犠牲にし、際限なくある業務を、自分の限界を超えて職務を遂行されている方がほとんどだと思います。
 そういう時こそ、自分自身の身体を一番大切にしていただきたいと思います。目の前の業務の遂行に注力するあまりに、自分の健康が損なわれてしまうのはとても悲しことです。

©NAKASHIMA

どうか、健康に大変な業務に邁進していただきたく思います。

©NAKASHIMA


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?