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TOHOシネマズの匂い

昔の東宝がシネマコンプレックスとして、各地のイオンモールやアウトレットに抱き合わせる形で進化した。何も昔の東宝を知っているわけではないが、小さな映画館でやっていた「ドラえもん」を電車で観に行ったのは、小学校の良い思い出。

小さな駅の小さな映画館にはない匂いが、TOHOシネマズにはある。ポップコーンとキャラメルとコーヒーたちの混じったような、空間全体を覆い尽くす薫り。シネマズの空間だけでなく、そこに至る吹き抜けのエスカレーターホールにも充満し、昇っていく途中から開演前の期待感を煽ってくる設計になっている。シネマズへ接続する絨毯のふかふかの廊下にもきっと匂いは染み付いており、イオンやアウトレットはもはやそれ全体として演出がされていると言っても過言ではないと、個人的には思う。

昔の小さな映画館の匂いとは、きっと喫煙OKだった頃の観光バスのシートのような残り香が、換気のしきれていない狭小空間に澱んでいる匂いだ。狭い空間にその澱みを感じると、幼少期の僕は本当に酔って気持ち悪くなっていた。

単館系の映画館が近所にないので、映画と言えばニアリーイコールTOHOシネマズだ(TOHOシネマズも近所にはない)。
(TOHOシネマズのパチもんみたいな弱小シネコンはある)

単館系を知らない。古きよき映画も知らない。かといってNetflix Amazonプライム ディズニー+たちも取ってない。レンタルではB級ホラーばかり(そのB級ホラーがバカにできないんだけど)。

TOHOシネマズのあの匂いで僕の映画欲は大方満たされる。匂いには胸ぐらを鷲掴みにするパワーがある。TOHOシネマズこそ資本主義の権化という感じがする。言いすぎかもしれないけど。映画を消費し、食を消費し、エンターテイメントを消費する。
TOHOシネマズが醸し出す匂いが資本主義を体現している。言いすぎかもしれないけど。