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三秋縋さんの本がすごすぎてすごいので感想を書きました

タイトル通りです 以下の本の内容に関して言及してます。
『三日間の幸福』
『スターティング・オーヴァー』
『君の話』    三秋縋

1.『三日間の幸福』三秋縋

どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。 未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。

裏表紙より引用

一言でいうとこの本は「ハッピーエンド」だと思った。
自分は賢いと慢心して学生時代を過ごし、大学生になった頃にはもう取り返しのつかないくらいに堕落し怠惰な人間になったろくでなしが主人公。
ろくでなしだからこそ、作中の心理描写がまるで自分を見ているみたいで胸がざわついた。

寿命を売ったあとに「監視員」として主人公と同い年くらいの女性がメインの登場人物として出てくる。
初めは絶望的な距離感だった二人が徐々に惹かれあう、僕自身に女性経験が皆無なのでその構造だけで気分が高揚した。


2.『スターティング・オーヴァー』三秋縋

二周目の人生は、十歳のクリスマスから始まった。全てをやり直す機会を与えられた僕だったけど、いくら考えても、やり直したいことなんて、何一つなかった。僕の望みは、
「一周目の人生を、そっくりそのまま再現すること」だったんだ。
 しかし、どんなに正確を期したつもりでも、物事は徐々にずれていく。幸せ過ぎた一周目の付けを払わされるかのように、僕は急速に落ちぶれていく。――そして十八歳の春、僕は「代役」と出会うんだ。変わり果てた二周目の僕の代わりに、一周目の僕を忠実に再現している「代役」と。

裏表紙より引用

『三日間の幸福』とは打って変わってこの本の主人公はぶん殴りたくなるほど幸福な20歳だ。
友人関係にも恵まれ、愛すべき恋人もいる。孤立無援と真逆の存在だ。

そんなリア充が二週目の人生で落ちぶれていくさまを読みすすめるのは実に気分が良い。
落ちぶれたあと、行動全てが上手く行かない主人公を見ていると、まるで一周目の主人公にいじめられたクラスメイトの視点で読んでいるみたいに胸が高鳴った。
次にどんな展開になるのか全く予想させない読み飽きない本だった。


3.『君の話』三秋縋

二十歳の夏、僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した。架空の青春時代、架空の夏、架空の幼馴染。夏凪灯火は記憶改変技術によって僕の脳に植えつけられた〈義憶〉の中だけの存在であり、実在しないはずの人物のはずだった。「君は、色んなことを忘れてるんだよ」、「でもね、それは多分、忘れる必要があったからなの」。これは恋の話だ。その恋は、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた。

裏表紙から引用

読んだあとに泣いてしまう本に、あなた出会ったことがあるだろうか。

私はこの本が初めてだった。

架空の記憶を植えつける技術が普及している、というなんとなく退廃的な世界観でこの物語は進んでいく。
もし、植えつけられた架空の記憶が架空ではなく忘れていただけの過去だったら…
ロマンティックで甘ったるい設定なのに自分の心の凝り固まったところをほぐすようにスっと頭に入る文章だった。

この本は主人公に降りかかる問題が全て解決される完璧なハッピーエンドではない。
しかし最高得点を叩き出さなくても人は幸せになれる、そんなことを感じた。
それは周りから見れば妥協に過ぎないのかもしれない。
それでも妥協でいいんじゃないか
部屋の中で自分だけの幸せを抱きしめて独り死ぬのも、広い世界で広い交友関係を持って亡くなるときは大勢の人に涙を流してもらえる最期もどちらも素敵だと思う。

僕の理想は本に囲まれた部屋で古ぼけた紙の匂いと一緒に身体を腐らせていくような最期だ。
僕と一緒に腐ってくれるいい作品だった。

書評的なことは何一つ分からないけど3作品とも本当に出会えて良かったです。



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