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ワイン酵母の選択と天然酵母【ほぼ週ノーザン】

今シーズン使うワイン酵母。
どんなワイン酵母を選んだのか書いてみたいと思います。
乾燥酵母の説明と選んだ理由。天然酵母についてもどんな時に使うのか説明しようと思います。

乾燥酵母はブルゴーニュの畑などで採取したものを単離培養したもので、人工酵母ではありません。ご安心を。
自然界に存在する酵母の中から、アルコール発酵を進める能力のあるものを選抜し、培養して増やしたものです。人工的に作り出されたものではなく、自然界に存在する酵母の中から、アルコール発酵を進める能力のあるものを選抜し、培養して増やしたものです。

前回書いた発酵資材の記事もご参考に。

ワイン酵母は様々なメーカーから多くの種類が販売されています。
LAFFORT、LALVIN といったメーカーが有名です。
ノーザンではLAFFORTの酵母をメインに使っています。酵母によって特性があり、作りたいワインにあったものを選択します。


1.LAFFORT  VL2

推奨品種: 甲州、シャルドネ、リースリング、ヴィオニエ、セミヨン、レイトハーベストなど
味覚ボリュームと白品種特性を高める樽醗酵用ワイン
ブドウ品種とテロワールの特徴を(シャルドネ・ヴィオニエ・セミヨン)表現しながら、味覚に厚みを出し複雑な味に仕上げる。
繊細、クリーンなワインに向く樽醗酵にも使用される。
エステルの生産性が少ない
醗酵特性その他
アルコール耐性:15.5% 多糖類の生産性が高い
至適醗酵温度:14-20℃ シュール・リーに適する
低窒素要求率
H2S、揮発酸の生産が低い
添加量:200-300ppm

メーカー資料より

シャルドネ用にこちらの酵母を選択しました。昨年はVL1という酵母を使っていたのですが、低温に弱く発酵を最後までさせるのに苦労したので、今年はVL2での挑戦となります。2011−2014年までのヴィラデストワイナリーでの委託醸造時に使っていた酵母です。
天然酵母を使ったこともあるのですが、どうにも日本酒のような味わいになってしまい、VL1かVL2の選択となりました。
どの酵母も共通ですが低窒素要求率がポイントとなります。
果汁の窒素源(酵母の栄養)が不足しているとH2S(硫化水素)が発生し温泉の匂いがして健全な発酵が進みません。

2.LAFFORT  XPURE

赤、白、ロゼワインに対応。グリーンキャラクター(植物/野菜の香り)を抑え、果実香をしっかり表現できる
・ グリーンキャラクターを抑え、果実の風味を表現する
・ SO2結合化合物の生成が低い
・ H2S/SO2生成が非常に低い
・ ブラックフルーツの香り
・ スムースなマウスフィールをワインに与える
・ MLFとの相性が良い
醗酵特性
アルコール耐性:16%
至適醗酵温度:15-30℃
低窒素要求率
添加量:150-300ppm

メーカー資料より

こちらの酵母は赤ワイン用に選択しました。特にカベルネフランはピーマンに例えられる青い香りが発生しやすいので、その場合この酵母が力を発揮し、青い香りをマスキングする効果があります。酵母のクセがなく素直に品種特性を表現してくれます。
赤ワインの場合は天然酵母で醸造する場合もあるので、天然酵母での醸造の条件に合わない場合はこの酵母を使います。

3.LAFFORT  SPARK

推奨品種:瓶内二次醗酵用酵母、タンク内二次醗酵用酵母、スパークリングワインのベースワイン、フルーツワイン、白ワイン全般
・スティル白ワインの醗酵:スパークリングワインの瓶内二次醗酵:醗酵のリスタートのために
* 良好な醗酵速度、醗酵温度範囲(10-32℃)
* 標準的な揮発酸、気泡性は中程度、H2Sの生産性が低い
* 高いSO2、アルコールに耐性が高い
* フルクトース(果糖)を醗酵する優れた能力
醗酵特性その他
アルコール耐性:<17% シュール・リーに適する
至適醗酵温度:10-32℃ スパークリングワインのための二次醗酵、醗酵のリスタート用に適する。
低窒素要求率 赤のスティルワイン醗酵にも向く
H2S、揮発酸の生産が低い
添加量:200-300ppm

メーカー資料より

微発泡ワインの瓶内二次発酵時に使う酵母です。また発酵がスタックして再スタートせざるおえない場合はこの酵母を使います。発酵力が強くて低温でも発酵力があります。

4.天然酵母(野生酵母)

現在ノーザンでは赤ワインで条件が揃った時のみ天然酵母での醸造を行います。

  • pHの値が3.4-3.6の間にあること

  • ブドウに補糖しなくても良いくらい十分な糖度があること

  • 病果や裂果がほぼないこと。選果がよくできていること

このような条件が揃った時のみ天然酵母での醸造となります。
天然酵母はブドウの果皮に自然についているもので醸造します。

天然酵母についてはそれだけで一つ記事が書けるのでまた別に書きたいと思います。

ノーザン
若林



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