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【読書メモ】達人のサイエンス

けんすうさんが勧めていて思わず購入した一冊。いま何かに打ち込んでいて、でもなんとなく伸び悩んでいる…という人に答えをくれる一冊。

1.上達に欠かせない「プラトー」

何かを学ぶ者は、「上達」と「プラトー」を繰り返しながら成長していく。「プラトー」とは、学習が伸び悩んでいる時期で、学習局打線が水平になっている状態のこと。プラトーは避けられないし、大切なものだという。

マスタリーに到達するための最善の策とは何だろうか? 一言で言えば、勤勉に練習すること、そして最初のうちはできるだけ練習のための練習をするということだ。そしてプラトーにいる時もそれを不満に思うことなく、スパートが起きた時と同様に、プラトーにいることに感謝して、その状態をエンジョイするのを学ぶことだ。

2.マスタリーに到達できない人の特徴

①ダブラー
新しい物好きで移り気。最初の急上達後に襲ってくるプラトーに出くわすと熱が冷める。

②オブセッシブ
せっかちな現実主義。プラトーに耐える余裕がなく、さらにすさまじい努力をする。一度降下が始まると大いに傷つく。

③ハッカー
のらりくらりで情熱に欠ける。何事もほどほどでプラトーも気にならないが成長もしない。

自分がどのタイプか(=弱点を)認識しつつ行動することが大切だそうです。私は…基本はハッカーでたまにダブラーってところか…

3.プラトーの捉え方

プラトーの価値を認めるためにはどうすればいいか。とにかくその状態にいることを受け止め、受け入れること。上達や目標達成をいったんわきに置き、打ち込むことをやめないこと、打ち込むことそのものに価値を置こうと努力すること。

人から認められたいという願望はきりがなく、名声を求めるのは喉が渇いている時に海水を飲むようなものだ。たとえ世間に評価されなくても自分の仕事を愛しながら満足して仕事を続けられれば、それが自分の一番の糧なのだ。

なんかアドラー心理学の世界のよう。マスタリーの道は過去でも未来でもなく現在にのみ存在し、プラトー=今を愛することを勧めています。

4.練習好きであれ+初心忘れるべからず

「遺伝的にプログラムされていない技能をマスターできる」のが人間の特徴。そしてマスターのために必要なのは「練習と実践」

達人といわれる人は、自己の技量を伸ばすことだけが目的で何かの技能に専念するのではない。ほんとうは、彼らはまず何よりも練習が好きなのであって、その結果、上達は後からついて来るのだ。そして上達すればするほど基本の動きを繰り返すのが楽しくなる、というサイクルができ上がる。

初めて取り組むことには失敗がつきものだし、単調な反復を強いられることもある。これまでの経験ややり方が通用しない場面に出くわすこともある。そのときに「自己を明け渡す」ことができるかどうかがマスタリーへの分かれ目らしい。ここでいう「自己」はエゴに近いか。

おそらく達人の旅で最も望まれることは、マスタリーの道のすべての段階で初心を忘れない心掛けなのである(中略)。達人もまた自己を明け渡すのは、熟練者など本当は存在しないからなのだ。存在するのは、学びの途上の人間だけだ。

5.ホメオタシスと向き合う

ホメオタシス(恒常性)は、心身や組織の様々な場面で機能している。悪変だけでなく、望ましい変化に対してもそれを防ごうと(現状維持しようと)働きかけてくるらしい。

マスタリーへの道は、肉体的・精神的な変化をもたらすものであり、それゆえにホメオタシスと直面することになる。そのための5つのガイドラインが提示されている。

①ホメオタシスの活動に気づく …さまざまな抵抗を自然なものと捉える
②自分との関係の調整 …抵抗を予測・分析し、準備・対応する
③支援体制を作り上げる …変化を分かち合える仲間を作る
④規則的に練習する …練習を習慣化すれば、それがホメオタシスになる
⑤生涯、学び続ける …自分の変わり方を学ぶこと・学び続けること

6.やる気が生まれないときは

人間は使わなければ錆びついてしまう機械のようなものだ。もちろん使うといっても限界があり、休息とリラックスは健康に欠かせないのだが、人間は一般にエネルギーを使うことによってエネルギーを得ているのだ。

誰しもエネルギーは持っているが、何らかの理由でリミッターを設置しているらしい。エネルギーは保存できないが、使えば使うほど増えていく。それを少しでも引き出すための方法は以下の通り。

①肉体の健康を維持する 
②マイナス要素を知った上での積極思考
 否定はエネルギーを阻害し事実を認識することはエネルギーを解放する。
 マイナス部分もいったんは認めながら、積極的に前を向くこと。
③努めてありのままを話す
 うそや秘密は組織に毒になる。ありのままが生産性を上げる。
④素直であれ、ただし自己の暗い部分に振り回されるな
 怒りなどはエネルギーの塊。
 無理に抑え込まず、積極的な目的に利用すればマスタリーの燃料に。
⑤するべきことの優先順位を決める
 ひとつ実行すれば、次の行動に移れる。メリハリは活力を生む。
⑥公言し、そして実行
⑦マスタリーの道を歩み続ける

7.13の落とし穴

①生活上の葛藤 …マスタリーの原理で生活できる可能性はあるか?
②オブセッシブの目的志向 …頂上「ばかり」を見上げていてはダメ
③よくない指導 …教師選びには気を付けること
④競争のない状態 …競争は生活上のスパイス。負けた時も潔く
⑤過度の競争 …勝利至上主義は練習や試合内容を軽んずることに
⑥怠惰 …勇気があれば乗り越えられる
⑦けが …身体からのメッセージを無視したり拒絶したりしてはいけない
⑧薬物
⑨賞やメダル
⑩虚栄心
 …失敗を恐れると集中できなくなる
⑪くそまじめ …視野を広く、明るいビジョンをもつ
⑫一貫性がない
⑬完全主義 
…完璧さではなく、プロセス・旅そのものに価値を置くこと

感想まとめ

当方、弓道という武道の経験があるため、合気道を学んだ著者の論理や事例も割とスッと頭に入ってきました。「学び方」の本でもあり、「人生の喜びとは」についても考えさせられるな、と。

ただ一方で、仕事なり勝負事なりの世界に身を置いていれば、どうしても結果が求められる=「結果よりプロセス」と割りきれない面があるのも事実。「いいこと書いてあるけど、なかなか現実には、ねぇ…」という感想も浮かびます(著者もアメリカの主流の考え方とは対立すると主張しています)。

なので、俗世の論理からなかなか抜けられない向きには、とりあえずプラトーの存在を肯定的に受け止めることから始めるのがよいのかな、と思いました。

ちなみに、大好きな大河ドラマ「いだてん」の主要キャラでもある嘉納治五郎先生の言葉が最後に引用されていました。永遠に新しいことを追求し続ける、永遠の白帯を目指せ、と。

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