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私の叫びを聞いてくれ


学校に行く途中、私の横に突然大きな黒い車が止まった。

あぁ、ここから2人くらい男がスッと出てきて拉致されるんだなぁと思った。きっとどこかに監禁されて、私の人生めちゃくちゃにされるんだろうなぁと悟った。

窓を開けて「すみません」と声をかけてきた。

30後半から40前半位の男のように見えた。
わたしは恐怖でドキドキして、大きな車の後部座席を見る。

よかった、運転手1人のようだ。

道を尋ねられた。
「このまま真っ直ぐいけばドンキ・ホーテに着きますか?」

なんて拍子抜けな質問なんだ、と思った。私は死を覚悟したのに。

落胆と安堵が一緒にきた。

「ここからドンキまでは少し遠いです。」と答えた。

すると、その人はなぜか不思議そうに「社会人1年目ですか?」と尋ねた。

「いいえ大学4年です。すぐそこの森が大学です。」と答えた。

「なんかあなたすごく雰囲気がいいね」と言われ、私は今道を尋ねられているのではなくナンパされているのでは?と思った。

「どちらからお越しですか?」と聞くと東京の会社に勤めているが川崎からだと答えた。

最近ずっと東京に行きたいと思っていたので、少し羨ましかった。
この人は東京に帰れるのか、と思った。

なぜかその人は、就職はどうするのかと聞いてきた。なんだこいつは?と思った。

色んなことしてるけど説明がめんどうだし、知らない人に話すことはないので(地方に来るタイプの営業マンなんだなと判断し、また伊勢に来る可能性を考え)自分がマジックのお店を始めようとしていることを伝えた。そして次に伊勢に来るときはぜひ人を連れて私のお店に遊びに来て欲しいと言った。するとその人はすごく驚いていて私に興味を持った。連絡先を聞いてきたので私は名刺を渡した。が、その人はLINEを求めた。まぁ、メールよりもラクか、しかも最悪はブロックすればいいやと思い、LINEを教えた。そして別れた。去り際に車のナンバープレートを見ると、川崎だった。どうやら嘘はついていないようだ。
すぐに、伊勢で1番近いドンキのURLを送っておいた。

夕方、仕事が終わったのだろう「あなたのおかげで無事着きました」と連絡があった。文末に「ぜひよかったらご飯でも!もちろん誘った側の俺がおごるので。」と書いてあった。

あーこれは危ないなぁと思った。

地方に来た営業マンが田舎の子娘を捕まえて1発ヤろうとしているなと思った。とりあえず私は駅周辺のお店を3軒紹介した。お肉1軒、お魚2軒。最後に「あなたがどちらにお泊まりか存じ上げないのですが、出会ったのが伊勢だったので伊勢市駅周辺のお店をご紹介させていただきました。お近くでなければすみません。」と伝えた。まぁ今夜はどこかに行くだろう。

それでもやはり「一緒にご飯に行きたい」と言われた。「どこか美味しいお店はあるか?」と。

私はその人に「どのくらい三重にいるのか」と尋ねた。すると「週末までだ」と答えた。

すこし安心した、週末まで予定が入っている。

さて、私はここから気楽で、週末までその人が1人で楽しめるように、お店を紹介すれば良いだけになった。そこでまずはアレルギーの有無を尋ねた。するとその人は「甲殻アレルギーだ」と言った。海老や蟹は食べられないそうだ。聞いておいてよかった。伊勢は海産物が多いので、そういうのは注意しておかなければいけない。
その人は私がアレルギーを聞いたことにすごく驚いていた。次に、お財布事情がわからなかったので私は彼の職業を尋ねた。どうやら建設会社の営業マンのようだ。が、その情報は何の意味もなさなかった。私に東京の建設会社の収入のデータがない。

というか、この人は今どこに泊まっているのだ?という疑問が浮かんできた。どこの地域のお店を紹介すれば良いのだ?伊勢?松阪?それとも鳥羽?志摩?四日市?
まぁ、私を飯に誘うくらいなので、おそらく私と出会ったところから車で40分以内の範囲だろうなとは思った。
きっと営業で来ただけで、伊勢のこと知らないしおいしいものを食べたいんだろうなぁと。

それともう1つ。この人は独身なのだろうか?という疑問も浮かんできた。もしこの人に奥さんや子どもがいて、こんなことをしていると知れば悲しむだろうなぁと思った。
ふと、この間読んだ本の地方の愛人の話を思い出した。


そんなことをぼんやり考えていると、従業員になる予定の子から電話がかかってきた。しばらく電話をしてから切ると、不在着信が1件入っていた。

あの男だった。

かけ直すか少し迷ったが、LINEで何ラリーもするくらいなら電話1回の方がいいと思って電話をかけた。

ちなみに私は電話することに何の抵抗もない。


「もしもーし!お疲れ様です!お電話取れず申し訳ございません!」

「もしもし〜、いえいえ〜。」

少しばかり、世間話をした。

すると、やはりご飯に誘われた。

結論から言うと、その人は私と食事してそのあとセックスがしたいようだ。いや、すこし違うかもしれない。ご飯を食べていちゃいちゃしたかったらしい。セックスは両方の合意が必要だと言っていた。

残念ながら私にそんな気はない。ので、「あなたの性欲処理に使われる気なんてさらさらない」と伝えた。そんなに一緒にご飯を食べたいなら、現地集合現地解散で『襲わない、触らない、近づかない、食べ物に薬混ぜない、おしゃべりしながらご飯を食べるのみ。』を守ってくれるならいいと伝えた。最後にセックスがしたいなら、そういうお店をご紹介しましょうか?と尋ねた。

するとすごく驚いていて「薬なんて入れないしー!そういうお店を紹介できるのかよ!」と笑われた。

「岡村ちゃんは面白いね、今までに会ったことないタイプだよー、すごく興味が出てきたよ!」と言われた。

厄介なことになってきたな、と思った。

その人は、もうすぐ独立して不動産をやるから自分の会社に来ないかと言い出した。

なんだか色々ムカついてきて、そんな立場よわよわで就職したら、お前と揉めたときどうするんだと思った。それに、私は建築も不動産の知識もない。だから協力出来ないと伝えた。あと、そんなに気に入ったのなら、数年待ってほしいと伝えた。別に待ってもらわなくてもいいんだけど、いずれ私は東京に行くからそのときにマンションかホテルを貸してくれと伝えた。そしたら「いいよ」と言ってくれた。「そんなんならいつでも貸すよ」と。最終的に東京でなにかお店出すときには支援してくれると言ってくれた。

どこまで本気なのか知らないが、嘘でも面白かったので良かった。

会話の節々で、私が一切その人のことを信用していないのが伝わったのだろう、ご飯は諦めてくれた。

「東京来るときはいつでも連絡してね」

「ありがとうございます、またご連絡します、おやすみなさい」

という最高の社交辞令でこの攻防は終わった。

なかなか正直でオープンな人間だったなと思った。面白かった。


じゃあね、未婚36歳の営業マン。
またどこかで出会えるといいね。
さようなら。


2020.06.16 まい

p.s.

きっと私が「飲食の出来るマジックのお店を出す」と言ったから、こいつなら誘えばいけると思ったんだろうな。枕営業して色んな契約結んで出店できるようにしたんだろうなとか思われたんだろうなぁ、知らんけど。よく「パパ活してるでしょー?」「絶対身売りしてるでしょー。」「やっぱりそう言うとき寝るのー?」「えー、いろんな人と寝てそうじゃん!」「1回くらいいいじゃん、ヤらせてよ」とか言われるもんな。

「マンションの1室あげるからそこに住んでほしい」とか「1晩300万でお願いします」とか本当に色々ある。

こんなことが世の中で行われているのかと思うとうんざりする。

18歳くらいからそんなことを色々言われてきてもう慣れたけど、こんなのいつまで続くんだろうな。一生なのかなー。あげく「身の振り方考えた方がいいよ」とか言われるし、本当にムカつく。何様だてめぇ思う。まぁ、色んなことしてるそう思われても仕方ないな思いそうになることもある。(なにが仕方ないのかさっぱりわからない)

でもね、こう強気で思えるのも、1回も身売りしてないからなんだよね。どんだけ売女だなんだ言われても傷つかないのは、1回もそんなことしてないからなんだよねー。1回でもそんなことしちゃったら、多分言われるたびに傷ついちゃう。だから私は絶対にそんなことしないし、させない、させるような状況つくらない。怖い思いたくさんしたけど、全部回避してるからね。

・・・私、身なんて売ってねぇからな!!!

以上!!読んでくれてありがとう!

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