見出し画像

『シック・オブ・マイセルフ』とメンタル芸人

『シック・オブ・マイセルフ』(10月13日公開)を観て、ふと"メンタル芸人"と呼ばれる人々を思い出す。メンタル芸人とは「ひどいことを言われて、心を病んだ!」と声高にソーシャルメディアで他人を晒しあげ、貶めるとともに他人から同情を引き出し自らの承認欲求を満たす輩のことである。

なぜ侮蔑をこめて"メンタル芸人"と呼んでいるかというと、傷ついていることが(おそらく)嘘だからである。ガチでズタボロになった場合、ソーシャルメディアにかまけている暇など無いはずなのだ。だって傷つく元になった原因に近づきますか?オレは近づかないし、心療内科でも精神科でも「ネットは見ない方が良い」と指導されるはずだ。

それでも自分を傷つけたソーシャルメディアで何かしら発信する欲求に逆らえないなら、もはやガチの精神病である。だから彼らは非常にタチが悪い。承認欲求のために"か弱い"自分を装って同情を引き、誇張した被害者ムーブ、場合によっては嘘で攻撃を煽って、他人をぶっ潰すことで快楽を得ている、社会病質者だからだ。

オレは"メンタル芸人"ではないが、メンヘラ野郎ではある。そもそも自分がオカシイと気がついたのは、ここ10年くらい。やたら気分の浮き沈みが激しく、時に落ち込み、時に暴力的になり、気分がやたら良くなり社交的になったりする。おかしい、おかしいと思ったら、双極性障害(II型)だった。とはいえ、これ自覚して薬を飲んでいればコントロールできる。治療を始めて随分経つので、ようやくマシになってきたかなと思っている。まあ、精神病とはいえ身体的な病気と同じで自覚してケアしていけば、なんとか生きていけるもんである。(時々問題は起こすが……)

"メンタル芸人"に話を戻す。彼らは自分が社会病質者であることに気がついていない可哀想な人なのだと思う。『シック・オブ・マイセルフ』に登場する承認欲求の化け物である主人公も社会病質者であり、その点で"メンタル芸人"に似ているが、決定的な違いがある。それは『他人を傷つけるか』『自分を傷つけるか』の違いだ。『シック・オブ・マイセルフ』の主人公は自分を傷つけることで、同情という注目を引き出す。その発想はトー横でリスカでしもして一発当てたろか!レベルの非常に幼稚なもの。しかし、『シック・オブ・マイセルフ』はトコトンやる。やり過ぎた故に主人公は厳しい結末を迎えるが、世の"メンタル芸人"が本作を観たらどう思うだろうか?自分がイカれていることに気がつくのだろうか?

他人を利用して満たされた承認欲求は、いつかそれ自体に潰されるのだ『シック・オブ・マイセルフ』は承認欲求のために自分を食い潰したが、他人を食い潰す"メンヘラ芸人"の人々はどんな末路を辿るのか……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?