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起業家の最大の敵とは

起業家の最大の敵はなんと言っても自分であり、自分のバイアスではないだろうか。

起業家は不確実性に挑むが故に、常に高いプレッシャーに晒される。その中で折れずに行動するには強い信念が必要で、それがあるから応援と尊敬を集める事ができる。ただし「信念」と「思い込み」は紙一重。過度なプレッシャーにある時にバイアスが強化されて思い込みに偏りやすくなる事を理解し、自分の中に思い込みが忍び込んでいないか注意深くみる必要がる。

バイアス(バイアスにも種類があるが、ここでは認識の歪みというざっくりとした括りとする)は特に意思決定をする際に顕著となる。信念のある勇気ある英断か、バイアスの強い決断か、この分かれ目は何だろうか。それは、状況を俯瞰してみているか、その上で選択肢を出し切ってベストな選択肢を選んでいるかに尽きる。

バイアスが強い状態は近視眼的になり選択肢が狭くなっている。この状態では何度思考実験しても、何度同じ問いに挑戦してもベストな答えが選択肢の外側にある場合には失敗を繰り返すことになる。一方で選択肢を出し切ることさえできていれば、仮に一度失敗したとしても次はベストな答えを引く可能性は十分にある。

バイアスを遠ざけて選択肢を広げる力が、良い意思決定につながる

バイアスの発生要因にも、プレッシャーに弱い、嗜好性を優先してしまう、思考の深考ができない、周りの意思を慮りすぎる、など様々な種類がある気がするが、対策としては自分なりの発生要因を知る事と、選択肢を出し切る事の習慣化によって遠ざけることができるのではないかと思っている。ちなみに、私自身は自分で新規事業を手掛ける時はつい大義や社会的価値という嗜好性に重きを置きすぎてしまい、経済合理性を越えたリスクを選択(やる意義を推してしまう)したくなる傾向があるように思っている。VCという立場は起業家の大義を推す立場なのでその嗜好性を応援する気持ちに転換しつつ、一歩引いてバイアスが少ない状態で起業家と対峙できるため個人としてはVCが向いていると感じている。

先達の経営者もこれらを強く意識しているようだ。
ビジョナル南社長はインタビュー(「一次情報を調べ尽くし、背中を預けられる仲間を巻き込む。~ ビジョナル 南壮一郎」前田ヒロ Startup Podcast)で『問い続けた結果、やらなかったことがどれくらいの量あったのかが重要』と答えている。ここまで選択肢を広げた結果、やらなかった案の量を意識することで自分を律する姿が垣間見える。

サイバーエージェント藤田社長は記事(「舐められたと感じたら、感情的な措置をとる。私が貫いてきたビジネスというゲームの戦い方」新R 25)で、『「自分の視点」「相手の視点」「俯瞰した視点」この3つの視点を持っているのが麻雀が強い人。そして、仕事が出来る人の中でも、3つ目の「俯瞰した視点」を持っている人は実はとても少ないです。』と話されている。「幽体離脱したように自分をみていることがある」ともどこかでお話しされていたと記憶している。俯瞰した視点を養いながら、大きな上昇気流の中でも競合が攻めてこない勝ち筋を見定めて、そこに集中投資をされる姿がいつも印象的だ。

大義を成すために信念を持ちながら、選択肢を出し切ることを自らに課してベストな意思決定ができているのか。自分自身にも皆様にも問いたい。

私は、不確実性に挑む起業家を最大限に尊敬・尊重しながら、起業家の中に思い込みが忍び寄っていると感じた時には、ストレートにお伝えするようにしている。そうする事でバイアスを追いやる一助となり、俯瞰した視点でベストな選択肢を選べるパートナーでありたいと思う。


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