今日は中学の入学式の時の思い出を話そうと思います。

私には2歳年上の大好きで尊敬している
あやちゃんという親戚がいました。
当時あやちゃんはとてもヤンキーでした。
私はあやちゃんに憧れて小5でグレて
向いてなさすぎて小6で更生するという
一年坊主ヤンキーでした。

そんなあやちゃんのいる中学校に入学できるのがとても楽しみでした。

中学に入るにあたって私の目標は
真面目で大人しく影の薄い目立たない女の子でいることでした。
理由は、なんかその方がエモいと思ったからです。浅いです。

中学入学式当日、慣れない制服に身を包み
小学生の頃仲の良かった友達と
「これから頑張ろうね」なんて会話をしながら
いざ体育館へと向かいました。

一年生の私たちは300人弱程おり、
人数が多いため、ちょこちょこと前へ進んで中へ入りました。

中に入ると左に2年生、右に3年生の先輩達が沢山並んでいて
人生で初めての「先輩」たるものに目を輝かせていたのを覚えています。
あやちゃんは見当たりませんでした。

校長先生の長い話、在校生の挨拶や一年生代表の挨拶、一通り全てが終わり
体育館を出て教室に向かうようにと指示が出ました。

まずは一年生の私たちが体育館を出てから
先輩達が出る予定だったので
私たちはまた、ちょこちょこと少しずつ前に進み、体育館を後にしようとしていた

のですが

そのとき、体育館中に響き渡る大きな声が左側の3年生の先輩がいる方から聞こえてきました。

「伊藤夏美香出てこい！！！！どこや！！
伊藤夏美香どこや！
出てこいおら！！！！」

と。

頭が真っ白になりました。
なぜこの3年生の金髪で、ワカメちゃんくらい短いスカートを履いている多分大ヤンキーの女の先輩は私の名前を呼んでいるのだろう。

「どこじゃごるぁ！！！
しばくから出てこい
伊藤夏美香！！！！」

怒号でした。明らかに。
先生達に取り押さえられながら叫び続ける
金髪ワカメ大ヤンキー女先輩

冷や汗が滲み、震える私。

一年生のみんなは「伊藤夏美香？誰？」
とキョロキョロしはじめました。

私は
「あー、私の大人しくて真面目で影の薄い女の子になる目標はたったの小一時間で崩れ去ったんだなー。」
と泣きそうになりながら、でもなぜか冷静にそんなことを思っていました。

そうこうしていると女ヤンキーに
男ヤンキー3名が追加され
4人程のヤンキー軍団が先生に取り押さえられながら

「早よ出てこい！！！
伊藤夏美香！！
ぶち殺すぞ！！！！！」

と言ってきました。
一生懸命300人弱いる一年生の中に身を潜めましたが
とうとう見つかってしまい

「おったぞおら！
体育館出たら待っとけよ！」

どうにかなりそうでした。
私はなぜこの人達に名前がバレているのか、
そもそもなぜこの人達は私を知っているのか、
ていうか私は何をしてしまったのか。

目が回りそうなこの状況を必死に耐え抜き
なんとか体育館を出ました。

するとさっきのヤンキーワカメ女と3人ほどの男ヤンキーが猛ダッシュしてきたのです。

腹を括りました。たったの12歳でです。
私は殺される覚悟をしたのです。

そのヤンキー達は私をするりと追い抜かし
2メートル程先に一列になって並び出しました。

一年生は皆震えていました。
私とヤンキー軍団を交互に見つめ、
あーこいつ殺されるんだな。と。

すると1人の女が颯爽とやってきて
その一列ヤンキー達の前に立ち
ヤンキー達に背を向けて私を見つめてきました。

それは

あやちゃんでした。

意味がわかりませんでした。
頭が動かなくなってしまいました。

するとあやちゃんとその後ろに居る一列ヤンキー軍団が

「せーの」

と息を合わせだしました。

せーの　という可愛い合わせ技の後
私は親戚たちに殺されるんだと思った矢先、

「ドッキリでしたーー！！！！
なみか、入学おめでとー！！
いぇーーーい！！！！」

と言ってきました。

瞬きしかすることができなくなってしまった私をみて嬉しそうにあやちゃんが駆け寄ってきて

「びっくりした？なみか入学おめでとう！
友達になみかを祝いたいって言ったらこうなった！」
と満面の笑みで話してくれました。

心の中で
いやもっと他なかったんかい。
と綺麗なツッコミを入れていると

「じゃあまた後で！」とヤンキー軍団feat.あやちゃんは去って行きました。

春風がそよそよと心地よく
私の身体を包み、手の中の冷や汗や
すこしちびってしまったそれをゆっくりと乾かしていってくれました。

その後、私は真面目で大人しく影の薄い女の子
になるはずが

ヤンキー軍団の親戚　ということで
なにもしていないのに少し距離を置かれる
というわけのわからない中学生生活のスタートを切ってしまいました。

これが私の
ヤンキーのドッキリ大作戦
の洗礼を受けた中学校入学式の思い出です。

因みにこの前あやちゃんにこの話をしたら
まっったく覚えていませんでした。
そんなあやちゃんが今でも大好きです。