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サクラのコスプレイヤー

四月の中旬
ソメイヨシノが散りかけた頃

車に乗っていたら
道路沿いに植樹してある
枝垂桜が満開だった
パステルピンクの色合いは
可愛らしくもあり、艶っぽくもあった

夕方だったが
駄目元で北の公園へ、ハンドルを切った

ほのかな期待を持って
そう花見猫を見つけに……

ほどなく到着
やや日が陰っていて強風だった

駐車場から見える
桜並木ソメイヨシノの
一本だけが七分咲きだった
他の木が葉桜となっているのに
呑気な桜もいるものだと
自然の不可思議に少し感心した

桜並木を見ようとすると
カップルが道隔てて平行に
同じ方向へ向かっているので
お邪魔かなと思い踵を返し遊歩道へ
風が吹いて寒かったということもある

公園入口で近隣の人たちが
犬の散歩していた
集まった四匹はどれも柴犬なのだ
「黒も良いねえ」なんて
お互いの犬の色を誉めあっていた

枝垂れ桜辺りに近づくと
花見する三人組が見えた
一人ピンクのウィッグが見えたので
随分パンクなお姉さんが
花見しているものだなと思った

近づくと枝垂れ桜の下で
AKB48のような制服を着た
お姉さんが撮影されていた

黒づくめのお兄さんは
一眼レフに折り畳みレフ板
本格的カメラマン仕様

ピンクのウィグのお姉さんは
ベンチコートとニット帽を
ちょこんと被って休憩中

そうコスプレイヤーさんが
撮影していたのだ

(コ、コスプレイヤーが撮影している!)
平静を保ちつつも心の中で叫んだ

私し的田舎で見かけて仰天三大あるあるは

ゴスロリ少女

痛車

コスプレイヤーである

保守的な田舎では
これらの趣味に没頭するのに
都会の十倍の勢いと勇気と忍耐が必要なのだ
と勝手に思っている

彼女らからなんとなく
放っておいてくださいオーラを感じたので
関心のないふりして遊歩道の端を歩く
彼女らはそれを安心したのか撮影を続けた
しかし、気になり通り際に
ちらっとだけ見せてもらった

しばらく歩きながら
AKB48のような制服は
アイドル育成ゲームのキャラクターなのかな
ピンクのウィグはあのアニメのキャラなのかな
地元の学生さんなのかなと
色々思いを巡らせた

まだ日差しもあるので
他所にある枝垂桜や花をスマホで写真に撮る
西日の風景は哀愁を感じさせる
園内は時間的に人はまばらで
たまに人とすれ違った

半周ほどして戻ったら
彼女らは寒いのに、まだ撮影をがんばっていた

納得のいく写真って、何百枚も撮って
数枚ぐらいしか撮れないものだ

花見猫はいなかったけど
コスプレイヤーが見られて良かった

サクラにまつわるお話|ナミソラフウモ|note

どうぞよろしくお願いします。