私の旅路 No.2

旅人が始めに訪れた部屋は、見慣れない人獣たちが昼夜構わず騒ぎ、蓄音機が踊り回る場所だった。

その為、音は複数重なり合いまるでオーケストラの演奏かのごとく、バケツから溢れかえる嵐のようだった。旅人は、嵐の中で生活している内に精神が少しずつ磨り減り、とても人ではない気分になりかけていた。

それでも、楽しく謳歌する人獣たちを見て、心底恐怖に感じながらも尊敬した。こんな空間でよく生活できるなと感心したからだ。

数日過ごして分かったことがあった。

この部屋には静かな時などなかった。私は思った。「きっと、音には魂が吹き込まれている。だから、生き物の周りを追いかけているのだ」と。

もしそうなら、私はごめんだ。静かな瞬間がないなど、そんな怖いものは要らないからだ。音が飛び交うこの街にいるのが、難しいと考えるようになった。

そして、日に日に旅人は人獣たちが怖く、大きく思えてきた。こんな空間にいつまでも居る必要なんてないんだ。

「さあ、次の部屋に出発しよう。次は静かな部屋だと良いな。」と嵐の中でそっと呟いた

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