nanam|なな

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障害児ママ歴10余年。note更新不定期。メッセージはこちらへお願いします→ https://note.com/nana_nananam/message

最近の記事

斜線の通知表

先生が伏目がちに手渡してきた通知表には、縦にずらりと並んだ斜線が記されていた。金縛りにでもあったのだろうわたしはそこから目が離せなくなって、けれどもこんな通知表もあるんだなあと、どこか他人の成績を見せられているようでもあった。 来月から息子は小学生になるという3月の日に、期待よりもこれから飛び込む学校生活に浮足立っていた。「大丈夫、なんとかなるよ」そう誰かに言ってほしい心とは裏腹に、恐らくこの子は支援から漏れやすい子でしょうから小さな変化も見逃さないようにねお母さん、と釘を

    • 桃鉄で癇癪、罪深き桃鉄

      夫が新しい桃鉄を買ってきた。 それは息子が1ヶ月も前から「やりたいやりたい!」と懇願していたあの桃鉄だった。発売日当日に、「そりゃあ買うでしょ」と当然のように買ってきてくれた夫、天才。 夫からソフトを受け取ると、すぐさま無駄のない動きを見せる息子。脇目も振らずにハサミを手にし、手慣れた様子でパッケージに貼り付いているフィルムをペロリと剥がした。夫から手渡され、中身を確認するまでのタイム、私調べでジャスト10秒。その無駄のない動きに、桃鉄への情熱を感じずにはいられない。これ

      • 「支援級はバカなの?」と聞いてきた君へ

        わたしの息子には発達障害があって、そのため小学校は通常級ではなく特別支援学級を選んだ。支援級は通常級と違って授業の進み方もゆっくりで、一クラスの人数も少ないので先生の目が届きやすい。それは発達に凹凸のある息子にとって、過ごしやすい環境だった。世間では通常級に通う子の方が圧倒的に多いわけで、だから周りの目が気にならなかったと言えば嘘になる。けれど、我が子が自分に合う環境に身を置けたことにはやっぱり素直に喜んでいた。 それは小学校3年生のときのこと。わたしは付き添い下校のため息

        • 挨拶をありがとうへ告白「興味関心」

          あれはプラスチックゴミの収集日で、これから始まる猛暑を予感させるような初夏の日だった。朝からとにかく蒸し暑くて、人に会えば「暑いですね」と、それを挨拶代わりにして交わしていたのが今年の夏の始まり。今更ここで振り返るまでもなく、この夏はとにかく酷暑でした。 それはまだ朝のごみ捨ての時間だと言うのに、既に太陽は燦々と照りつけていた日。わたしは45リットルの透明ゴミ袋いっぱいに詰め込んだプラごみを片手に、ゴミ捨て場へ向かった。おはようございますと声をかけたのは、顔見知りの近所の方

        斜線の通知表

          就学相談と決めつけ厄介

          発達障害は外からは見えづらい障害だというそれは、そういう子をこれまで育ててきた親にとってはとても鮮明に見えたりする。幼いときほど特性が表に出ると言われるけれど、努めて理解しようとしなければ「周りを困らせる子」という嬉しくないレッテルを貼られてしまうことがある。それは就学相談の場面でも起こる。青い空が澄み渡る、初秋9月のあの日のこと。 小学校に入学する前の年、わたしは息子を連れて就学相談を受けていた。相談員の女性が二人いて、わたしと息子はそれぞれ別室に通された。一人は息子の付

          就学相談と決めつけ厄介

          サポートをありがとう

          昨日のこと、生まれて初めてサポートしていただきました。 突然のことに驚き、そしてそこへ添えられていた嬉しい言葉に舞い上がりました。感謝の気持ちでいっぱいです。 2022年12月から始めたnoteですが、執筆でお金をいただく経験は初めてです。収益はもちろんですが、それ以上にわたしの執筆にサポートしたいと言ってくださったことに感無量です。お礼の返信はすでに送らせて頂きましたが、嬉しさ大爆発の思いをこちらでもお伝えさせてください。 自分の書いた記事がどんなふうに伝わるのか、い

          サポートをありがとう

          8月の酔っぱらい

          「酔っぱらいって、こういうこと?」 ふわふわした頭に届いた息子の声。 今年の夏は過去最高の暑さと言われたが、八月下旬の夜道は日中のベトつく煩わしさから解放されて少しだけ秋の訪れを予感させた。昼間は相変わらずウンザリする暑さだったが、夜の晩夏は夢見心地で歩くことができた。それは酔いが回って陽気になっていただけではなかった。わたしの手を引く息子の右手が、思っていたよりも大きくなっていたことに感激する自分がいた。 夏の終わりに、家族でお酒でも飲みに行こうかという話になった。夕方

          8月の酔っぱらい

          「カス」と言われた女

          その日、SNS(X)で親しく拝見していた方の投稿に暴言が書き込まれた。いつもなら黙ってやり過ごしていただろう。だけどわたしはどうしても許せなくなった。そして自らそこへ飛び込んだ。同じ障害児のママという、それだけの理由ではそんな無謀なことはしなかった。SNSが陰湿な面を持っているということを、わたしは身にしみて知っている。 子供は親の予想を超えた動きをすることがある。そして障害のある子はその見越したところを更に越えてくることがある。これが、なかなかよくある。常に見張っていても

          「カス」と言われた女

          言葉に代わるもの

          その喫茶店には病院の帰りに足を踏み入れた。ネットの口コミで周到に調べただけあって、一目惚れだった。わたし好みの喫茶店だ。カフェというより『喫茶店』と呼びたくなる、どこか懐かしい空間。開放的な高い天井に大きな窓が並び、隣のテーブルとの距離も充分に保たれた座席。趣のある年季の入った木のテーブルの温かみに心が踊った。 それは、その日が3度目の訪店だったときのこと。 角の窓際のテーブルに空きを見つけ、そこに腰をおろした。遅いランチを食べながら窓の外に視線をやると、自転車の後ろに子

          言葉に代わるもの

          七日間の蝉

          汗が首にまとわりつく暑さに、放心しながらも聞こえてくるセミの声。太い幹の木の前で足を止めた息子が、スッと手を伸ばした。 「捕まえた」 そこには息子の親指と人差し指、中指で掴まれたセミがいた。逃げる隙もなかっただろうセミが、息子の指の中に大人しく収まっていた。 セミを見ると『八日目の蝉』の映画のタイトルを思い出す。諸説あるようだけど、地上に出てきて七日で死んでいくセミの命。 「セミは短い命だから、逃してあげよう」 わたしの言葉と同時に息子から開放されたセミは、何処かへ

          七日間の蝉

          「学校に障害児対応の勉強会はありますか?」 学校への思い、わたしの思い

          こんにちはnanamです 少し前になりますが、自身のTwitterで教員の方に向け、教えて欲しいとツイートしました。 そういえばもうツイートって言わないのかしら、TwitterはXて呼ぶ? うむむ、ここではTwitterで統一させてください。慣れていなくて。まだツイッターと呼んでいたいし。 本題へ。 この呼びかけに、何名かの方からリプ欄やDMで回答をいただきました。あのときは本当にありがとうございました。心から感謝します。 さて、そもそも何故そんなことを聞いたのかと言え

          「学校に障害児対応の勉強会はありますか?」 学校への思い、わたしの思い

          学校に行かない

          いつもなら、見送るわたしを振り返り「行きたくないな」とワンチャン狙いで言ったりするのに、丸くなった背中は何も言わずに玄関のドアを開けた。小股で三歩進んだその先で、固まり動かなくなっていて、後ろ姿がかすれて見えた。今にも消えてなくなりそうで、胸の内の赤信号が点滅した。行かせてはならないと警告してくるようだった。 「学校、行かなくていい」 わたしの声の方を辿った息子は、今にも泣き出しそうな顔で、うつむいた口元は小さくありがとう、と呟いた。 教室の騒々しさと、注目を欲しがるヤ

          学校に行かない

          原点回帰『ペアトレ』のはなし

          こんにちはnanamです。 今日はペアトレの話をしようと思います。 発達障害で多動で感覚過敏で興味関心が極狭だった息子の幼児期に、ペアトレ(ペアレントトレーニング)を勧められ、学んでいた時期がありました。 療育園ではわたしの自己肯定感を1000%上げてもらいましたが、ペアトレに通ったら光の速さで相殺されていきました。だけどゼロに戻ったわけじゃなかった。むしろ息子との関わり方に伸びしろがあるのだと気づかせてもらいました。 発達障害の息子との生活は、正直に言って難しい。自分

          原点回帰『ペアトレ』のはなし

          療育園の人

          息子が4歳になる少し前のとき。わたしは息子と、障害児施設である療育園に母子通園することになった。 息子の発語は片手で数える程度で、時々わたしの腕を押すようにして空中にブンと放る。これがあの有名なクレーン現象なのかなと、なんだかワクワクして様子を伺うのだけれど、何かが違う。腕を引っ張ると聞いていたのに息子は引っ張ってはくれない。宙に浮いたわたしの腕の先には何もなく、この腕の行方は始末が悪い。何をして欲しいのか想像の範囲を超えないけれど、一か八か棚からお菓子を引っ張り出し、それ

          療育園の人

          「無断投稿に反論する」その正義はだれのため

          例えば誰かが誹謗中傷されたとして、それが自分の知らない他人だったとしても、その人を庇いたいと思うことがある。 わたしの息子に発達障害があるからか、同じ障害を持つ人やその親が侮辱されているのをみると、憤懣やるかたない思いがする。そういった状況は身の回りだけでなく、これまでSNSを通して何度も目にする機会があった。人は同じ立場や同じ環境におかれた人に対し、無意識に自分を投影する心理があるのだそうで、わたしにも身に覚えがある。 今日び、モバイル社会研究所の調査・研究によればスマ

          「無断投稿に反論する」その正義はだれのため

          息子小1、母親になれた日

          それまでは何をしてもどうやっても寝つかなかった息子が、それはもうスヤスヤと眠るようになったのは小学校に入学してからのこと。 「ママ、一緒に寝よう?」 リビングのドアを開けたところで目をこすり、蚊の鳴くような声でママ、と囁く。シンクにたまった食器を洗っていたわたしは、その手を止めた。 「すぐ行くからね」 この皿までいっちゃおうと、また手を動かしたら戻って来て体を半分だけこちらに見せて、ママ、と呼んだ。寝落ち覚悟でキッチンを後にし、息子と一緒にベッドに入る。本日二度目の寝

          息子小1、母親になれた日