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手話通訳だけでは生活できない現状がある

手話通訳の資格を取ると、晴れて手話通訳者として活動(仕事)ができる。
しくみは大きく分けて①行政や団体に常勤している②団体に派遣登録し依頼があるときに活動する、の2つになる。
都心部だと聴覚障害者関係の団体や、リレーサービスを担う民間会社など幅広く職場があると思うが、地方ではなかなかそうもいかない。

私は上記②の働き方で今までやってきた。
良いところは、実際にろう者の生活場面で手話通訳ができるということだ。
他にも現場で経験ができるということは、マニュアルがない手話通訳業務にとても欠かせない貴重な時間だ。
また自分の都合に合わせた働き方もできるので、自由度は限りなくある。

しかし自由というのは、不安定であったり責任を自分で取らなければならない。
登録している事務所は1つとは限らず、多くの依頼を受けた場合に腕を酷使すると危険な「頸肩腕症候群」のリスクも事例がある。
そして手話通訳は労働者ではなく、ほとんどが1年度契約を結ぶ雇用形態。労災は認められず、あるのはボランティア保険のみ。
今フリーランスの問題も出ているが、手話通訳も同じく、とてもあいまいな立ち位置で重要な役目を担っているのだ。

移動はほとんど車で、自宅から現場に向かう。
運よく事故なくやってきたが、もし何か起こっても保障がないのは不安だ。
大きな工場での通訳では、機械がドンドンと激しく稼働していたり、火花が散って危険な時もあった。
また選挙関係の街頭演説では、右翼集団の抗議などがあり、警官がバリケードを張っている。
「もし何か飛んできても、防げないな。。。」とあきらめ半分、それがYouTube配信やましては動画を撮影している人もいるので、すごく緊張が走る。

そして通訳依頼には派遣する側の基準や内容で、当然差が出てくる。
通訳を依頼する側は「1週間前までに」という決まりのもと、時に緊急で2~3日前に依頼してくる人もいる。
そうです、だいたいの場合1週間以上先の仕事はほぼない。

派遣する側は「通訳者が足りなくて困っている。依頼者に断りを入れるときもある」というのをよく聞く。
少なくとも私に依頼が来ているかというと、そうでもない。依頼が来ない理由をあれこれ考えるのだが、検討がつかない。

一度勇気を出して確認したことがある。
「私の派遣回数って、少ないのでは?」と。
疑う私に「いや、皆さんその程度ですよ」、「依頼の公表数でみても少ないと思うけど。。。」と食い下がったら
「そんなことないです!〇〇さんが一番ですから、一番、一番」とあしらうように言われたのだ。

いくら守秘義務や個人情報のことがあっても、納得がいくような説明責任をする義務があると思う。
それでいて「通訳者は高齢化している、若手合格者を増やそう!」とか運動しているのを聞くと、本当に矛盾しているなと感じてしまう。

私の場合、1か月にどのくらい通訳依頼があるかというと、平均して10回以下だ。週に2回あれば良いほう。週5日は休みってことなのだ。
これでは通訳だけでは生活できないし、主婦が多いこと、他に仕事を持っていること、いろいろが改善されないまま今に至っているのだ。


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