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アプリエルとカメちゃん

我が家には2匹の犬がいる。
小さな犬ののえると、大きな犬のアプリエル。

そんな2匹と、恋人と暮らすのが私の普段の日常だ。だけど、そこには生き物だけじゃなくて色んな愉快な仲間が一緒に暮らしているの。

アプリエルにとってのカメちゃんは、そんな大切な同居人なのだと思う。

カメちゃんが我が家に来たのは、2ヶ月ほど前に遡る。

ある日、恋人が沖縄出張から戻ってきたときにカメちゃんも一緒に我が家に迷い込んだ。

こんにちは、カメちゃん!

その時恋人は、のえるに小さなイルカのぬいぐるみを、アプリエルに大きなカメのぬいぐるみをプレゼントした。それがカメちゃんなのだけど。

「時間がなかったから」と空港で選んだというそのぬいぐるみたちは、それぞれの身体の大きさにも、性格にもよくあっていた。

アプリエルにとってカメちゃんは、初めて"特別な人"から"特別な瞬間"にもらった贈り物だ。

当時はアプリエルが家にきたばかりで、まだ、"子犬(アプリエルじゃなかったとしてもね)をお迎えするため"に揃えたおもちゃばかりだった。

でもカメちゃんは違う。アプリエルのためだけに選ばれた大切なカメちゃんだ。

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それが理由かはともかく、アプリエルはカメちゃんをいたく気に入り、痛々しい見た目になるまで愛した。

寝るときは抱いて寝たし、くわえて持ち歩いたし、一緒に遊んだりもした。

でも身体が大きくて歯が尖ったアプリエルと遊ぶうちに、カメちゃんは目が取れて頭の中の綿が飛び出てしまった。

そのルックスはまあ、なかなかに衝撃的で、少々気味が悪い。(現に、私の母はカメちゃんを見て悪夢を見た)

それでもアプリエルにとって、カメちゃんは特別で大切な存在なのである。

私は常々、アプリエルには「孤独」があると感じていた。やっぱり、たくさんの兄弟の中からひとりで我が家にきたし、我が家にきてからもまだたったの3ヶ月で、どこかよそよそしさも感じる。

慎重で繊細なアプリエルだから、自分と世界に少しだけ隔たりを持っているように見えた。

でもカメちゃんは、そんなアプリエルを元気付けてくれる。私はカメちゃんがいてくれることが心強いし、すごく嬉しく思っている。

犬を飼う、ということに孤独は付いて回る。
種も違う、言語も違う、食生活も価値観も違う生き物が、同じ場所で暮らすことに、孤独がないと言ったら嘘になるのだ。

相容れないこともあるし、上下関係もできてしまう。平等や幸せの価値に悩むこともある。

でもカメちゃんは、そんな一抹の孤独を埋めてくれる。そして私や恋人と、アプリエルを橋渡してくれる気がした。

カメちゃんは生きていないけれど、そうやって助けてくれている。

私はそのうち、カメちゃんを洗って、頭に綿をつめて、目を作ってあげようと考えている。

でももう少し先なんだろうな。
アプリエルとカメちゃんは特別だから。

私が手を加えたカメちゃんが、今のカメちゃん以上に価値を持つ頃。私とアプリエルが、カメちゃんとアプリエルよりも孤独を埋めあえる頃、私はカメちゃんを直そうと思う。

そしてますます、家族になって溶け合う私たちに目を細めたい。

今もなお、私たちは少しずつ溶け合っている。

わからないことをわかりあったり、わからないまま愛し合ったり、笑ったり怒ったり泣いたり、鳴いたりしている。

アプリエルの初めての特別な贈り物。
それがカメちゃんだ。

そしてアプリエルの心のともだち。
私たちはそんなともだちを大切に見守る。

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家族とはまた違う。カメちゃんはカメちゃんなのだ。でも大切な同居人だから、いつか、もう少し元気な見た目にしてあげたい。

nana

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